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最高のギフト。
しおりを挟むそう、チョビンさんが言った時、天空から眩い光が立ちこめ、僕の心に声が響いてきた。
「有紀よ。私はカンパニーの最高責任者であるミカエルである。そなたは、チョビンの忠告も聞かずに、勝手にカンパニーの規約に背き憑依を繰り返した。これは大変重大なことであり、恐らく、そなたに憑依されたものは、今後まっとうな生活を送れないことになってしまっただろう。よって。そなたには解雇だけにとどまらず、これから厳しい罰を受けないといけない」
僕は自分のしてしまった事を十分分かっているので、素直にミカエルCEOの裁定を待った。
「いいか、有紀よ。今後、そなたは、その憑依したものの体の中で天寿をまっとうするまで、カルマを背負って生きていくのだ。人間でいることの辛さが、そなたに対する罰だ。そなたの憑依したものは、今までの行いを見る限り、この世を去ってもまちがいなく地獄行きになる。そのことを分かったゆえで生きていく辛さを味わうのだ。ただし、それでは、あまりにも残酷だと思うので、そなたのこれまでの功績を加味して救済処置だけは残しておく。それは、すなわち、これから先の人生において、他の人のために生きていくことだ。さすれば、おのずとカルマも浄化されるであろう。では、健闘を祈る」
そうミカエルCEOは僕に告げると、上空の神々しい光はおさまり、心の声もやんだ。
「有紀、それではお前に憑依されたものの魂を回収するよ。このものは、今後、我々が再教育して天使にするつもりだ。魂を抜いた瞬間から、有紀の今までの特殊能力はすべてなくなるから、これからは、ただの人として頑張って生きていくんだぞ」
チョビンさんは、僕にそう告げると、剛の体に手をあてて、魂を抜きに入った。
僕によって憑依された体の胸のあたりから、どす黒い色をした球状の玉みたいなものが姿を現した。
その時であった。
空中から、大きな鎌を持った者が現れ、剛の魂を刈り取ってしまったのだ。
その鎌を持った者には見覚えがあった。
そう、そのものは以前、カンパニーを追放され堕天使になったセフィロスさんであった。
「悪いね、チョビン。わが社もノルマが大変でね。この魂は、我々ルシフェル協会が貰っていくよ」
そう、セフィロスさんは、チョビンさんに告げると、剛の魂を刈り取ったまま、高速で姿をくらましてしまった。
「あぁ。また始末書を書かないといけないぞ。有紀の件といい、今回の不始末でボーナス査定が下がるだろうな」
チョビンさんは、そう言うと、頭を掻いて苦笑いしていた。
「ほんとにすいませんでした」
僕は素直にチョビンさんに謝った。
「まぁ、いいってことよ。有紀にはいろいろと世話になったこともあったしね。これで、今日限り会うこともないが、しっかりカルマをなくして、あゆみちゃんを幸せにしてやれよ。それと有紀、CEOから、いいクリスマスプレゼント貰ったな。じゃ、最後にメリークリスマス!」
チョビンさんは、そうして、いつものように愛嬌のウインクをすると西の空に消えていった。
僕はチョビンさんが視界から消えるまで見送り続けた。
そして、本当に最高のクリスマスプレゼントを貰った事を神に感謝するのであった。
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