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カルマと天使のスキル
しおりを挟む僕達天使には特殊な能力があって、人間の気を見ることが出来た。
それは仕事をしているうちに先輩天使から徐々に見方を習っていくものなのであった。
そして、気は僕達にとってその人の善悪を見るのに仕事上必要なものであってして、この仕事をするには必須なスキルなのである。
気ってものは天使からの視野では体全体から色を出して映りだすものだった。
その色は非常に分かり易いものであって、善なほど明るい色で目に映り、悪だと黒に近い色彩を放つものだった。
それから、カルマって呼んでるのは人の業を表すものであって、これが多いと気はどうしても暗い色をしてしまうものだった。
そうして、僕とチョビンさんは暗い気を放ってる人も視野に入れて、あゆみを探すことにしたのだった。
そして……。気の見方を変えた途端に、すぐにあゆみを発見してしまったのだった。
彼女はファミレスで女友達と食事をしていた。
三年ぶりに見るあゆみは、少し痩せた感じはしたものの、相変わらずクリクリした大きな瞳をしていて可愛らしく、友達と話す口ぶりなどから、元気そうに見えた。
でも、その元気さは、以前のあゆみの持つイメージとは少し違う感じがするものだった。
声をうわずらせて話したり、突然、周りの目を気にせずに大声で笑い出す。
僕の知ってるあゆみには無かった振る舞いが多く、どこか違和感を持ってしまうものだった。
それと、さきほどから、テーブルの上にはあゆみが食べたであろうハンバーグやスパゲッティーが乗っていた皿が綺麗に平らげられて積まれていた。
にもかかわらず、あゆみは呼び鈴で店員を呼ぶとグラタンを注文しているのだ。
店員も言葉には出さないが首をかしげていた。痩せの大食いってのはあるけど、僕の知ってるあゆみは少食のはずだったのにと思う光景だった。
「なぁ、有紀。彼女かわいいのだけど……。ちょっと……」
チョビンさんは始めて見る彼女を褒めてくれたのだが、その後に言葉を詰まらせた。
すぐに、僕にはチョビンさんの言いたいことが分かってしまう。
「カルマですよね」
「あぁ、ちょっとキツメの色をしてるね」
そう。
チョビンさんの言うように、あゆみの気の色は黒に限りなく近い色をしていた。
一体、僕が他界してからあゆみに何があったのだと思うぐらいの悪い色をしているのだった。
それに、さっきからのあゆみのハイテンションぶりも気がかりに思える。
そんなことを思いながらあゆみの動向を見守ってるうちに、すぐに答えが見つかってしまったのだった。
それは、あゆみがグラタンを半分近く食べきった時に彼女に異変が現れたからだった。
あゆみは、一緒にいる友人に「ちょっと気分が悪い」と言って立ち上がると、トイレに駆け込んだ。
それから、彼女は便器に向かって、さっきまで食べていた物をすべてもどしたのだ。
そして、吐いた後に、何食わぬ顔をして、ポーチから注射器を取り出すと、腕の血管に針を入れたのだった。
腕には青いあざのような注射痕がたくさんみられて痛々しかった。
その行為は。カルマが以上に高い彼女の気の色を見て伺いしれるものだった。
それは、僕にとってはあまりにもショッキングで残酷なものであった。
「有紀の彼女は、残念ながら薬物中毒みたいだな。しかも、かなり依存してるみたいだ」
僕と一緒にさきほどまでのあゆみの行動を見ていたチョビンさんが僕の心を代弁するかのように言っていた。
「チョビンさん、ちょっと一人になりたいです。悪いですけど、今日は帰ってもらえませんか」
僕は悲しさのためか、自然と瞳から冷たいものがこぼれだし、チョビンさんにお願いしていた。
「有紀はこのあとどうするんだ?」
僕の事を心配してチョビンさんは聞いてきた。
「分かりません。でも、もうちょっとあゆみの事を見ていたいと思います」
「そっか、有紀の気持ちは察っするよ。俺は明日も仕事なので帰るけど、ただし、何度も言うように彼女の人生には決して干渉はしてはいけないぞ。規約に反すると、とんでもないペナルティーが待っているからな。絶対に情に流されてはいけないよ」
まるで、チョビンさんの言ったことは、今後の僕が起こす行動を予兆しているかのように聞こえてきた。
「じゃ、こんなことになってしまったけど、お決まりの言葉で、いいクリスマスを!」
別れ際にチョビンさんは僕を励ますためか冗談っぽくウインクをすると、西の空に飛び立っていった。
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