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ルーツ (SF)

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 広い広い研究室の中、巨大な円盤型をしたタイムマシーンのコックピット内で、博士はすっかり禿げ上がってしまった頭をこすりながら、お猿さん二匹に装置のボタンを押させる訓練に悪戦苦闘していた。

 コックピット内には大小さまざまな計器やスイッチ、ボタンが配置されていて、それぞれが色々な光を発していて実に綺麗だった。

「こらこら、お前達。そのボタンじゃないだろう」

「ウキィーウキキキィ」



「うんうん。そうだ、そのボタンだ!」


「ウキィー」

 お猿は、わざと大きく緑の色に塗られている大きな安全装置のボタンを押すことに成功した。



「そうだ、そうだ。よくやったぞ!お前達」

 さすがに、何世代もの知能指数の高いチンパンジーを掛け合わせて作られたお猿さん達。


 物覚えがいいなと博士は思った。

 博士はお猿さんがうまくボタンを押せた御褒美にとバナナを与えてやった。

 お猿さんは、バナナをもらえてご機嫌になり、その場でバクテンをして喜んでいた。

「ウキィーウキィーウキィキキー」



 高名な物理学者兼、考古学者の博士が、研究に研究を重ねて早三十年。

 

 博士の長年の夢のタイムマシーンが完成しようとしていた。

 

 もう既に世間及び、マスコミ関係にはタイムマシーンの事は発表している。

 
 後は明日の開発記念式典で実験をかねて旅立つだけであった。

 

 旅立つ先は6500万年前の白亜紀末期のアメリカ合衆国”グランドキャニオン”だった。

 

 博士がグランドキャニオンにタイムトラベルしたいには理由がある。

 そもそも夢のタイムマシーン開発に至るきっかけの話になるのだが……



 博士が少年の頃、テレビを見ていたらグランドキャニオンで恐竜の化石発見のニュースが流れていた。

 ニュースによると、恐竜はティラノサウルスという大型の肉食恐竜でほぼ原型をとどめて発掘されていて、考古学者達が詳しく化石を調べたところ恐竜の胃の内容物から人骨が発見された。

 人骨もまた生物学者によってくわしく調べられたところ驚く事に現代人のものだった。

 

 そう、人類の祖先とされるアウストラロピテクスが誕生したのが、およそ440年前なので、白亜紀末期に人骨が発見される事などありえないことなのだ。

 

 博士は子供ながらにも、このニュースに胸を躍らされて目を輝かせたものだった。

 
 そして、どうしても真相を知りたいという情熱によって、科学を必死に勉強して物理学者の道が開けたのだった。



 物理学者になった博士は6500万年前の白亜紀に行くために、青春の全てを懸けてタイムマシーンの製作に励んだ。

 研究の為に恋も結婚も犠牲にして、ただひたすら研究に明け暮れた博士だったが、時空を超える壁は厚く、研究すればするほど、時空の壁を越えることなど不可能と思われた。

 

 なぜ不可能なのかといえば、過去に行くためには、光の速度で地球の自転と逆方向に回らないといけない。

 

 光の速度とは、秒速三十万キロ、およそ一秒間に地球を七周半回る、とんでもない速度である。

 

 多くの科学者達が、今までに秒速三十万キロの壁に挑んで、はじき返されてきた壁――

 

 しかし、博士は先人の科学者達とは違い決して研究をあきらめなかった。

 

 それから十年の間、博士は、悩み、思い、苦しみ、考え、そして閃いた。

 

 時空の壁をこえる事の出来る、脅威的な光の速度をだす方法を閃いたのだ。

 

 その方法とは……。 


 まず動力源は電気エネルギーにすることにした。

 ただ、秒速三十万キロを出すのには豆電球をつけるような小さい電気エネルギーでは話にならない。

 

 博士の十年の研究によると、秒速三十万キロの速度をだすのに必要な電気エネルギーは、135ギガワット必要だった。

 135ギガワットの電気とは、この国の一年間の電力量に匹敵するほどの大きな数値であった。

 原子力発電所の原発三基を一年間フル稼働させて、ようやく得られる膨大なエネルギーなのだ。

 

 博士はまたも、頭を悩ませる。

 

 原発三基ぶんもの膨大なエネルギーをどうやって得るかと……。

 この問題を解決させるのに、博士はさらに十年の歳月を投じた。

 

 そうして、導き出した道は、プルトニュウムと濃縮ウランによる核融合エネルギーしかないと判断した。

 博士はプルトニュウムを使うのはいささか躊躇したが、135ギガワットの電力を瞬時に得るには、これしか無かった。

 

 博士がプルトニュウムを躊躇したわけは、無論危険すぎるからだった。

 万が一にも核融合に失敗したら、核爆弾が爆発したのと同じような被害が考えれた為である。

 

 しかし、やはり、この方法でしか135ギガワットの電力はえられない。

 

 博士は核融合時の安全性を高めるために、更に五年の歳月を投じることを余儀なくされた。

 五年の歳月を要した安全装置はバリアシステムと呼ばれるもので、万が一にも、核融合システムが暴走して、放射能漏れのメルトダウンや爆発した時に搭乗者と周囲の安全を確保する為に、巨大なバリアが半径五キロにわたって瞬時に展開される代物だった。

 

 そして核融合システムの小型化にさらに二年かかった。

 

 ここまでに費やした時間は二十八年間にもなっていた。

 

 最後に博士は、タイムマシーンのデザインに残りの時間全てをかけた。

 

 タイムマシーンのデザインは円盤型になった。

 円盤型になった理由は、動力源である核融合エンジンが四つ必要だった為で、それをバランスよく配置するためには、円盤型にどうしてもなってしまう為だった。

 

 そうして、ようやく四基の核融合エンジンとバリアシステムを搭載した秒速三十万キロを出す事が出来る、



 夢のタイムマシーンが完成したのだった。

 タイムマシーンの外観材質は軽量化をはかるため、チタンアルミニウム合金が使われている。

 

 耐久度にいささか問題があったが、一回のタイムトラベルをするのには十分な耐久度だった。



 博士は明日の実験を前にして、興奮してなかなか、寝付けないでいた。



 博士が寝ようとしている場所は、博士が愛してやまない、タイムマシーンのコックピット内である。

 

 傍らで、お猿さん二匹が、明日の実験のこともしらずに、幸せそうにネンネしている。

 

 博士はそっと、お猿さんを起こさないように気をつかいながら、頭をなでた。



「明日は練習通りしっかり頼むよ!」

 二匹の雄、雌つがいの、お猿さんは博士の思いも知らずに寝息をかきだした。

 

 まるで、人間そっくりだなと博士は思った。そしてお猿さんの寝息に誘われたのか、博士も眠りについた。



 次の日の朝になり、博士は研究の資金提供をしてくれているスポンサー企業の女性従業員に、体をゆすられて目覚めた。



「博士起きてくださいよ… もう全く…… 今何時だと思っているのですか!」



「うーん~? あぁ~君かねぇ~、今…… いったい何時なのかね?」

 

 博士は、寝ぼけまなこで、女性従業員に聞いた。



「博士もう十時ですよ! 今日は博士の一番大切な日じゃないですか!」


「えー、もうそんな時間なのかね… ごめん、ごめん、昨日なかなか寝付けなかったものでね」


「もうー博士ったら~、しっかりしてくださいよ。正午に実験開始なんですからね!」


「うん、わかったよ。急いで支度するよ~、起こしてくれて、ありがとう」

 

 博士は一時間ほどかけて身支度をした。

 博士とお猿さんは、宇宙服に似た真新しいトラベルスーツに身を包んだ。

 

 スーツには資金を提供してくれている企業の宣伝用広告が所狭しとつけられている。

 そして、実験開始三十分前になり、円盤形のタイムマシーンが研究所の格納庫から重機によって、ゆっくりと、実験会場の飛行場に搬出されだした。

 
 飛行場はラスベガスにある研究所の敷地内にあったので、搬出作業が終わって実験開始準備が整うまで、さほど時間は要しないのである。



「さあ~そろそろ、いこうかぁ~」

 

 そう博士は二匹のお猿さんに言った。

 二匹のお猿さんは朝食代わりに出されたバナナを嬉しそうに食べていたが、博士の声が聞こえてバナナを一気に食べると、博士の隣に駆け寄ってきた。

 博士は二匹のお猿さんの手をつないで、実験の見物に来ている大観衆の待つ飛行場に向かって歩き出した。



 ラスベガス飛行場は快晴で、外に出た博士は、太陽からの眩しい光で一瞬、目がチカチカした。



 飛行場の滑走路の両脇には、見物にきた観客がアイスクリームをほうばりながら実験開始をいまか、いまかと待っている。

 博士の視界の前方には巨大な円盤が見え、銀色のボディーに太陽光線が当たってキラキラ輝いている。

 

 博士とお猿さんは、この晴れ舞台を楽しむかのように、ゆっくりとタイムマシーンに向かって歩いていった。

 

 その姿を二台のテレビ局のカメラが前方と後方から撮影している。観客からも、博士が一歩ずつ歩く度に、無数のカメラのフラッシュがたかれていた。

 

 視聴者にライブ映像の臨場感を出す為に、アナウンサーが実況している声が博士の耳に聞こえてくる。





「いま、まさに人類の夢――タイムマシーンはまもなく発進します!」

 

 お猿さん達も、このただならぬ雰囲気に少々興奮気味であった。

 

 そして、博士はいよいよ、タイムマシーンの搭乗口のタラップに足をかけて登りはじめた。

 

 博士は搭乗用ハッチの扉に手をかける前に、観客達の方向に姿勢を向きなおして大きく手を振った。

 

 お猿さんも、博士の真似をしてか、軽くジャンプして手をあげていた。

 そうして、大歓声が巻き起こってる中、博士とお猿さんは、タイムマシーンの中に入っていった。



 

 タイムマシーンのコックピット内は外の熱気と違ってひんやりしていた。

 これは、コックピット内にある精密機器が熱によって異常をおこさないように冷却しているためである。

 コックピット内は円卓になった乗務用シートが三つ設けられており、博士はお猿さんをシートに座らせて安全ベルトを装着してやった。

 

 博士の方も、メイン操縦席に腰をおろし、安全ベルトを装着した。

 そして、核融合エンジンの起動スイッチを博士は入れた。

 

 キューイーンと音がしてエンジンに火が入った。

 

 核融合エンジンの状態を示すモニターは全てグリーンの文字が躍っていて、エンジンが正常に作動している事を示している。



 続いて博士は、タイムトラベルする行き先の座標と行き先の年代、時間設定を装置に入力した。

 


 モニターには、BC6500年前と表示されている。

 あとは、タイムマシーンの発進ボタンを押すと自動でタイムトラベルしてくれるのだった。

 

 博士は退屈の為、寝そうになっていたお猿さんに言った。



「さあ~準備はいいか? いよいよ白亜紀にむかって出発するぞ!」

 

 お猿さんは、博士の熱い気持ちを知ってか、知らずか、ただ一言だけ発した。




「ウキィーキィキィ!」

 博士には、「アイアイサー!」と言ってるように聞こえた。

 

 博士は躊躇なく発進ボタンを押した。



 円盤形タイムマシーンはゆっくりと垂直に上昇し始める。

 タイムマシーンの発進をずっと待っていた観客からはドット歓声とため息がもれた。

 テレビレポーターも興奮して実況している。

「まさに、タイムマシーンが発進しました――実験が成功してクルー達が無事に戻ってくる事を祈るだけです」

 


 タイムマシーンのコックピット内からの窓からは、眼下にラスベガスの街並みがどんどん小さく見えていく。

 


 正面にはグランドキャニオンの自然が作りあげた芸術的な起伏の谷が広がっていた。

 

 タイムマシーンは更に垂直に上昇していく、

 

 コックピット内の高度計が5千メートルに達した時、上昇が止まった。

 

 もう、眼下のラスベガスの景色は見えない。変わりに広がっているのは雲海だった。

 上昇が止まった瞬間。核融合エンジンがうなりを上げた。

 

 物凄い音をたてて、135ギガワットの電力をエンジンに供給すべくとうなりをあげる核融合システム。

 

 そして、タイムマシーンは水平に飛びだした。

 

 地球の自転の逆方向に想像すら出来ないスピードをだして!



 コックピット内で、博士は物凄いGに対して、歯をくいしぼらせて耐えていた。

 

 お猿さんも、何が起こったか理解できずに、ウキィキィと雄たけびをあげて気絶してしまった。

 

 これでは、万が一の為の安全スイッチを押すというお猿さんの大役が、意味がなくなってしまうのだが、こうなってしまった以上、後のまつりだった。

 

 秒速計の数値が秒速三十万キロに達した時、雲海の隙間にポッカリと穴があき、タイムマシーンは穴に吸い込まれていった。

 時空の壁をうち破った瞬間だった。

 博士はそのことを確認した瞬間意識がとんでしまった。



 


 博士が意識を取り戻した時には、タイムマシーンは地上に着陸していた。

 博士は果たして、タイムトラベルが成功して、白亜紀に来れたのかどうか、早く確かめたかったので、急いで安全ベルトをはずすと搭乗口の扉をあけた。

 


 外は夜になっていて、うっそうと被子植物のシダがおいしげっていた。

 

 遠くに見える山からは、活火山なのか白煙が濛々とあがっている。

 博士が空を見上げると、見たこともないような、満天の星空が広がっていてその横に、見事なオーロラが光輝き、実に幻想的で美しかった。

 


 博士はその時に確信した。

 タイムトラベルは成功して、白亜紀にきたのだと!

 

 博士は搭乗口の扉を閉めて、コックピット内に戻った。

 探索は危険な夜ではなく、視界がいい昼にした方が得策だと考えたからだ。

 


 コックピット内では、お猿さんが意識をとりもどしていて、安全ベルトを外そうともがいていた。

 

 博士はベルトを外してやって、ほって置いたおわびに得意のバナナをお猿さんに与えた。

 お猿さんにはバナナさえやれば、ご機嫌になると勝手に思ってるふしがあった。

 

 実際のところ、バナナを与えていたら、お猿さんは。ご機嫌な事は確かなことだったが。

 博士は、明日は探検、探索で忙しくなると考えた為、睡眠を十分とることにした。


 最初、興奮のあまり、神経が高ぶってしまい、なかなか寝付けないのではないかと心配したが、このところの睡眠不足と恐らく実験は成功しただろうと思われた安心感から、あっさりと寝る事ができた。



 博士はどれくらい睡眠をとったかわからないぐらいよく寝た。

 

 そして、探検、探索の日がやってきた。

 

 博士はトラベルスーツを脱ぎ捨てると、探検用の身軽な服装に着替えた。

 

 お猿さんにも、動きやすいようにと、スーツを脱がしてやった。

 博士達は身支度を整えると、麻酔銃を片手に持ち、白亜紀のシダ植物が生い茂るジャングルに降り立った。

 昼間のジャングル内は思ったより、涼しく薄暗い。

 シダ植物の生い茂る隙間から時々、太陽の光が 木漏れ日となっていて、白く靄がかって見える。

 

 空高くには、恐らくプテラノドンだろうか、翼竜が優雅に飛びまわっている。

 遠くに見える、高い山からは、相変わらず噴煙が立ち昇っていた。

 

 博士は恐竜達が踏みならして、できたであろう獣道をゆっくりと歩いて進んで人類の痕跡を探す。

 現代人がもし、この時代にいたとしたら、何らかの痕跡が必ずあると信じているからだ。

 


 お猿さんは、野生の血が蘇ったのか、実に元気で、博士の隣で飛び跳ねている。

 その時であった。前方の方から、何か物が倒れるような大きな音がした。

 音がした方を見ると、




 大型肉食恐竜のティラノサウルスが草食恐竜のトリケラトプスを襲っていた。

 


 ティラノサウルスは大きな雄たけびを上げて、獲物の首にかみついている。

 博士は食い入ってティラノサウルスを観察した。

 

 恐らくこの時代の王者だけあって、ティラノサウルスは実に立派でデカイ、体長は15メートルは、あるのではないかと、博士は思った。

 

 やがて、ティラノサウルスは獲物のトリケラトプスの息の根を止めると勝利の雄たけびを大音量で上げた。

 

 その雄たけびに驚いたのか、お猿さんが騒ぎ出した。

「こらぁ~お前達…静かにしなさい!」



「キィキィキィ~」

 博士の声を聞いても、猿達は静かにならず、ますます騒ぎ出したため、ティラノサウルスの目に博士達が飛び込んでしまった。

 


 ティラノサウルスは、新たな獲物を発見した喜びで、またまた雄たけびを上げた。

「やばい! 見つかってしまったぁ~逃げろ~」

 

 お猿さんは、ただならぬティラノサウルスの殺気を感じ取って、一目散にタイムマシーンの方向に走り出した。

 


 その後を、必死に博士も走って逃げ出した。

 しかし、博士はかなりの御老人なので、足がもつれて、なかなかうまく走れなかった。

 


 後方からは、「ズシン、ズシン」と地響きをあげて、ティラノサウルスがせまってくる。

 足がもつれながらも、必死に逃げる博士。

 博士の前方には、タイムマシーンが見えている。

 走りながら博士は思った。

「タイムマシーンに乗れさえすれば、安全装置のバリアーで助かる!」

 

 お猿さんは、既にタイムマシーンにのりこんでいるのが博士に見えた。

 あと、もう少しで、タイムマシーンのタラップにつくという時に、博士に悲劇が起こった。

 

 足がもつれて転んでしまったのだ。

 

 そして、博士に激痛がはしった。

 


 ティラノサウルスに胴体から下をかみつかれたのだった。

 激痛のはしる中、博士はお猿さんたちの名前をよんで、安全装置を押すように叫んだ!







「アダム~とイブよ~ 早く、早く、緑色のボ…タン…を――」

 

 そう、叫び終わった瞬間に博士の胴体はティラノサウルスに食いちぎられた。

 

 残った上半身もティラノサウルスは咥えている。

 そして、博士を食ったティラノサウルスは、それだけでは、飽き足らず、見たこともない巨大な物体、タイムマシーンに噛み付いた。

 


 ティラノサウルスの噛み付いた場所は四基あるうちの一つ、核融合エンジンだった。

 アダムとイブの乗ったコックピット内では、けたたましい警告音が鳴り響いていた。

 

 もう、誰も読むことが出来なくなったモニターには、炉心破断と赤い字で警告されている。

 


 その時、こういう事もあろうかと、博士が事前に用意していた音声が流れた。

 

 博士の優しい口調で音声は流れている。



「アダムとイブよ! 練習通りに緑色のボタンを押しなさい!」

 

 繰り返し音声は流れる。

 懐かしい声を聞いて、アダムが反応した。

 

 緑色のボタンを押したのだった。

 ボタンを押したのと同時に、核融合エンジンが爆発した。

 


 その衝撃でアダムとイブはバリアーと一緒にハッチが開いていた為、外に飛び出した。

 


 地表を揺るがして、核融合エンジンが大爆発を起こす。

 

 強大な閃光と熱風がタイムマシーンを中心にどんどん広がっていった。

 しかし、アダムとイブは奇跡的に外にバリアーと一緒に飛び出した為、事なきをえた。

 

 バリアーの周り、半径五キロはそうしてセーフティーゾーンになった。

 タイムマシーンのあったグランドキャニオンの地表は爆発の衝撃で地面が激しく隆起してしまい、元の原型はとどめていない。

 

 セーフティーゾーンを除いての話だが……



 

 タイムマシーンのあったところからは強大なきのこ雲があがっている。

 そして爆発の衝撃によって、地表からは大量の粉塵が大気にまきあがり、太陽の光を遮断した。

 

 太陽の熱を奪われた地表は急激な温度変化をもたらした。

 長期に渡る、地球寒冷化の始まりだった。

 恐竜達はこの急激な温度変化に耐えられず、絶滅してしまったのだ。

 しかし、一箇所だけ、全く、この変化に該当しない場所があった。

 

 それは、現代においては、エデンの園とよばれている奇跡の場所だが……

 

 そう、アダムとイブがバリアーで守られた、半径五キロの小さな地域……



 エデンの園で生きながらえた、アダムとイブは爆発時に多少の放射能をあびた為に、遺伝子に変化をおこしていた。放射能が遺伝子の突然変異をもたらしたのだった。

 

 そうして、平和なエデンの園で、アダムとイブは交尾を繰り返して、彼らの子孫がどんどん繁殖していった。

 

 それは、人類の祖先の誕生を意味していた。
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