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生死の戦い(最強戦士決定戦) (ファンタジー)

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 昼とも夜ともわからぬ丸いドーム状の部屋に、どこからともなく現れた戦士達が集結していた。

 戦士達がこの部屋に集まっている理由は、この世界の王によって取り行われる最強戦士決定戦に出場する為である。

 狭いドーム状の室内は王の命によって一定の室温が保たれている。それは、これから行われる激しいバトルを戦士達が万全のコンデションで戦えるために王がとったはからいなのだ。

 王が戦士達のコンデションまで考えて行う最強戦士決定戦とは、文字通りこの世界で一番優れた戦士を選出するためのもので、参加する戦士達に過酷な試練を与え戦士としての適性を見るためのものである。

 

 しかしながら、過去、幾度となく開催されているのだが、未だに王のお目通りに適う最強戦士は現れてはいなかった。そして、あまりの過酷さの為に開催ごとに参加者は減っているのが現状である。

 王の最強戦士選抜方法とは、いたってシンプルなものであって、戦士達の集結しているドーム状の部屋をスタート地点として、王の一人娘がいる城の城門に、いち早く到着したものが最強戦士に選ばれるというものであった。

 但し、一番に到着した戦士が確認されると門は硬く閉ざされてしまい、それ以外のものは、全員殺されてしまうのである。

 それだけではない、戦士達が城門にたどりついても、王が最強戦士の資格が無いと判断すると、たとえ一番に門に到着しても城門が開かれていないのだ。

 その場で戦士達は全員殺されてしまう。

 それと、城門までの道のりには、水路を通っていくのだが、水路には邪悪なモンスターが放たれており、戦士達を発見したら確実に襲ってくるのであった。

 モンスターに捕まった戦士は頭から食べられてしまうのが常であり、ほとんどの戦士達がこのモンスターの餌食になってしまうのである。

 しかし、戦士達は何故ゆえに、殺されてしまうかもしれないリスクを背負ってまでデスマッチに参加するのであろうか?

 

 それは、決定戦を制した者こそが、最高の名誉と、これからの幸福を約束されるからに、ほかならないからだ。

  

 戦士達は、少しでも他の者より、いいスタートダッシュをきめる為に、スタート地点のゲートに押し合いへしあいで王の決定戦スタートの合図を待つ。ゲート先頭の戦士などは、もう三日も前からスタートの準備をしていた。

 

 戦士達は、緊張しながら、これから始まるバトルを待つ。

 

 戦士達の目標は唯一つ、誰よりも早く城門にたどり着くこと。たとえ、一番に城門に到着して城門が開いていない悲劇が待っていようとしても、みずからの栄光を信じて、戦士達はひたすら待つ。

 

 そんな、戦士達の熱い気持ちをあざ笑うかのように、王はなかなかスタートの号令をかけない。まるで、戦士達の、はやる気持ちを持て遊んでいるかのようだ。


 戦士たちに待たせることで、忍耐をも試しているかのようであった。

 

 その時である、ドーム内に、ある変化がおこり始めたのだ。

 その変化とは戦士達の気持ちの高鳴りとは裏腹に、静けさを保っていたドーム内がゆっくりと上下左右に揺れ始めだしたのである。


 しかも、少しずつではあるが、徐じょに揺れは大きくなりだしたのである。

 

 戦士達は本能的にこの揺れの意味を知っている。

 

 そう、間もなく……最強戦士決定戦の火蓋がきられようとしているのだ。

 

 ドーム内の大きくなりだした揺れは、更に大きな揺れに変わり、もうすでに戦士達は立っているのも、ままならない状態になっていた。

 戦士達の多くは地べたに横たわるしかない状態である。

 そして、この激しい揺れのほかに戦士達をさらに追い込む事が起こり始めたのだ。それは、ドーム内の外壁から液体が出始めたのだ。

 このままでは、ドーム内に液体が満ち溢れてしまい戦士達は溺れ死んでしまう。

 
 祈るように戦士達はドームに、一箇所だけあるスタート地点の扉を見つめる。

 

 あの扉さえ……あの扉さえ開けば……

 そして、ドーム内の揺れが最高潮に達した時、戦士の祈りが通じたのであろうか! 

 
 スタート地点の扉が開いた。

 

 ドピュー、ピュ、ピュー。



 戦士達は、姫の待つ城門めがけて一斉にスタートダッシュをした。

 

 すぐに、水路が行く手をさえぎっていた。筒状の水路は粘々した液体で満ち溢れている。

 

 しかし、戦士達は泳ぐしかないのだ。戦士達に手足はない、あるのは、頭でっかちの体と足の代わりにある尾ひれのような鞭毛のみである。

 

 戦士達は必死に鞭毛を左右にふって推進力をつけて泳ぐ、まるで、オタマジャクシのように……

 

 ぴよぴよぴよ、ピヨピヨ、ぴよよーん。

 目指すは姫の待つ城門、いや子宮めがけて…… 

 一番に子宮に着かなければ殺されてしまう。

 

 だから戦士達は死にものぐるいなのだ。

 隣で泳いでいる者を攻撃するものもいて熾烈である。

 また、体内の免疫システムが戦士達を異物とみなして、モンスターとなり戦士達に食らいつく。

 ほんの数分で戦士達の大半は姿を消してしまった。

 それでも、抜群の運動能力と強運を持っていた戦士の一人が城門まで、あと少しの位置にきていた。あとは、城門が開いていることを祈るのみだけであった。

 そして……









 それから、数ヵ月後のある日のこと。

 とある病院の待合室に心配そうな面持ちのご婦人が一人、診断結果を待っていた。

 この、ご婦人。最近、体調がすぐれず診察にきていたのである。

 ほどなくして、診断室から若い看護師の声がした。



 「加藤さーん、加藤貴子さーん! どうぞ、お入りくださーい」

 

 不安そうな表情をして、室内に入るご婦人。

「あのぉ、先生、あたし、なにか悪い病気なんでしょうか?」

 ご婦人の質問に対して、医者は優しい笑みで……

「加藤さん、おめでたですよ、おめでた! 妊娠三ヶ月ですね」



 新しい命の誕生を意味する嬉しい言葉であった。 
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