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最終章
社長 雅博の提案
しおりを挟むその頃の雅博は秋葉原にほど近い雑居ビルを間借りして、パソコンの事業を立ち上げて曲りなりにも社長であった。
雅博の事業は、僕のAVなどと違って経営は順調そうで、そこで働く従業員の生き生きとした表情から窺い知れるものだった。
その小さいながらも活気ある職場を眺めつつ私は、女性社員に案内されて社長室に案内された。
雅博は社長室で熱心にキーボードを叩いていたが、僕の来訪に驚いて手を止めた。
「会うの久しぶりだなぁ、青い顔してどうした? 忙しいけど友達だから何か相談事だったら話だけ聞いてやってもいいぞ!」
雅博は、長年の友だけあって私が何も話していないのにここに訪問した理由をまるで知ってるかのように冗談っぽい言い方をして話かけてきた。
僕は、いきなりエロビデオを売りつけに来たことを言うのは恥かしく思ったので雅博の会社の話を聞いて見ることにした。
「お前の会社、活気があって凄いな、ここに案内される前に社員の顔見たけど、みんな目が輝いてやる気にみち溢れてるじゃないか!」
すると雅博は褒められて嬉しそうな顔をして言った。
「そりゃ、うちの社員の給料は能力に応じてだけど、他の業種ではありえないぐらい高給だよ! 年齢なんかも関係なく会社に貢献してくれる人材なら月収三桁も夢じゃないから、それでみんな目が輝いているのだろ。実際、三桁の給料を貰ってる奴も何人かはいるからな……」
雅博は僕にとっては驚く事をさらりと言ってのけていた。
「三桁って、お前の会社それほど儲かっているのか? それに一体ここは何を売ってる会社なんだ?」
「自慢する気はないが、正直儲かってる。年商で去年は三億は越えてるよ、それに、まだ正確な数字は分からないが今年は上半期だけで去年の数字は軽く越えてると思うよ! 今年は去年の倍は売り上げが出るのじゃないかな……それと、この会社の売ってる商品はソフト開発というアイデアなんだ」
「そのアイデアって何なんだ? もっと詳しく教えてくれ」
僕は、この職業に転職したいような衝動に駆られて思わず聞いてしまう。
「今はな、パソコンの時代なんだ。どこの企業もパソコンを使って様々な業務をこなしてる。そこで、よりよくパソコンの操作を使いやすくしたり、パソコンの管理をし易くするソフトを開発してるんだ。最近では個人もパソコンを使う機会が増えているので、そっちの方のソフト開発も手がけていってる。それにインターネットも普及していってるので、その波に乗り遅れないようにインターネット関連のソフトやサイト運営も始めだしてるんだよ。この業界はこれから益々伸びていくよ!」
雅博の話は、パソコンに疎い僕にとってはよくわからないものだが、熱く語ってるところから雅博の会社はホントに儲かって急成長してることは理解できた。
なるほど、雅博が高校時代から熱心にパソコンの知識をつけていたことが、この話を聞いてようやく分かったような気がした。
「で……俺の話はいいとして、祐一は何か目的があってここに来たのだろう?」
雅博は、そう言って、今度は僕に答えるように聞いてきた。
僕は、雅博からスケールの大きい話を聞いたばかりなので、自身のエロビデオを売りにきたと言い出しにくかったが一本でもビデオを売りたっかたので恥を凌いで頼むことにした。
「うん、実はな……ビデオを買って欲しいと思ってやってきたんだよ」
僕は、そうしていかがわしいパッケージのビデオを鞄から取り出して雅博に見せた。
「友達だから、買ってやるけど……友人の俺にまで売りつけにこないといけないぐらいビデオの販売がうまくいってないのか? 確かこの前の電話では調子がいいといってじゃないか」
雅博の言うことは図星であった。
正に痛いところをつかれて、僕は雅博に結局、このような事態になってしまったいきさつを全て話すことになったのだった。
結果、ビデオを売りにきたはずなのに相談しにきたようになってしまった。
雅博は、僕の話を全て聞き終わると大笑いした。
こっちは、真面目に話したのに僕は雅博に笑われて少し気分を害してしまった。
「何が可笑しいんだよ! こっちは人生がかかって必死なんだよ」
咄嗟に僕は相談を聞いてもらってるのに怒った口調で雅博に噛み付いてしまった。
「悪い、悪い。あまりにもお前達の視野が狭いなって思ってしまって……怒らせた代わりと言っては何だが、俺がいい事教えてやるよ!」
雅博は何かいいアイデアがあるのか自身満々でそう言った。
「頼む、教えてくれ、いや教えてください」
僕は、わらにもすがる気持ちで雅博に頼み込んだ。今の状況が改善できるなら、恥も外聞もないってものである。
「新しい販売ルートを探してるんだよなぁ。そして、飛び込みで店舗回ってるんだろ? そんなもの俺からしたら、祐一達には悪いが時間の無駄だと思うよ! それに、三人で手分けしてルートが出来たとしてもたかが知れてるのじゃないか?」
雅博の言った「たかが知れてる」は確かに、その通りであって僕は反論が出来ない。
でも、これぐらいしかやれることは無いのじゃないかとも思ってしまうのだ。
「じゃ、雅博だったらどうしたらいいと思うんだ?」
雅博は僕の質問に対し不敵な笑みを浮かべると、自身の目の前にある箱型をしたものをなでながら言った。
「こいつを使うのだよ!」
雅博は愛着をもった感じでパソコンのCPUの入ったケースをなでながら話を始めた。
「いいか、祐一。俺がさっきお前達のことを視野が狭いって言ったのはパソコンがあるからなんだ! パソコンのインターネットを使ってビデオ販売したら、顧客は全世界になる。だから、お前達が新規開拓で頭を下げてお願いして商品を置いて売って貰うよりか、パソコンを使ってサイトでビデオを販売した方が圧倒的に売れるよ! うん、間違いなく桁違いに売れる。しかも、将来的にはネットを使ってAVのテープに収まってる映像を配信する時代がくるだろう。それだと、在庫もいらないことになるんだ。どうだ素晴らしいことだと思わないか」
雅博の言ったことは、僕を震え上がらせるものだった。あまりの発想に脱帽物であった。
でも、僕にはパソコンの知識がないので、どうしたらサイトで販売することが出来るのか分からない。
僕は、その事を雅博に聞いてみた。
そしたら、雅博は私に具体的な話をしてきたのだった。
「祐一、お前三百万出せるか? 出せるのだったらサイトの運営は俺の会社でしてもいい」
僕はいきなり三百万という大金を聞いて驚いてしまった。
「三百万は初期投資費用だと思ってくれ、それと、上手くいけば手にしたことのない大金が転がりこんでくるぞ」
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