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最終章
嫌な予兆
しおりを挟む新たにのぞんだAVの販売結果は芳しくなかった。
僕達は、方向転換をしてから一年以上にわたって、様々な企画をしてAVを撮ったのだが、販売の方は一番最初に出荷した販売本数の500本前後をいききするだけで、徐々にではあるが販売するたびに赤字に転落していったのである。
売れない理由は、三流女優を起用したことにより、以前販売していたような作品の中に垣間見えた素人感がなくなってしまったのと、他のライバルのAV作品も似たような手法で撮影にのぞんでいた為、作品自体のオリジナリティーが無くなったのだと考えられた。
そうして、僕達はAV業界から撤退を考えないといけないくらいに追い込まれていったのである。
そして、もの事っていうものは歯車が狂いだすと、他の事にも伝染するかのように僕に仕事以外の不安をもたらしてきたのであった。
その不安とは、詩織のことである。
その頃の僕は、テレクラで女性を探さなくてよくなっていたので、詩織と時間の都合が出来るとデートを重ねていた。
そして、AVの売り上げが芳しくないストレスもあって、逢うたびに僕は詩織の体を求めていたのだった。
そんなある日のこと、詩織とラブホテルで行為をしていたら、突然、詩織が正宗を受け入れてる時に「痛い」とお腹を押さえて訴えてきたのだった。
僕は、詩織が以前からお腹が痛くなる時があると言っていた事を思い出し、詩織に病院に一度行って診てもらった方がいいと提案した。
しかし、詩織は保険証がないことを理由にして病院には行きたがらなかった。
そして、僕に「すぐに痛みはおさまるんだよ! 大丈夫だから、心配しないで……たぶん生理前だから、痛くなっちゃう」と言った。
僕は、女性の体はよく分からないので、生理前になったら痛むものだと解釈したのであった。
僕は詩織に無理に病院を勧めることはしなかったのだった。
それは、僕の頭の中の不安に対する優先順位が詩織のことより、自身が手がけるAVビデオの販売不振の方を一番に選択していたからであった。
そんな出来事があって以降も詩織は頻繁ではないが、時折お腹の痛みを訴えることがあって僕を不安にさせたのだったが、詩織は日が経つとと痛みが治まるみたいで病院に行くことはなかった。
そして、僕は詩織の痛みが不安に思うことはあっても、病院に連れていくことはなかったのであった。
しかし、その事が僕と詩織の間にある出来事をもたらす事になるとは、その時の僕は想像さえも出来なかったのである。
僕は、ビデオ販売の不振の為に夜もあまり眠れないぐらい追い込まれていた。
男優業をしていた頃とビデオ販売が好調だった時に溜めていた詩織を救出するための貯金も少しづつではあるが減っていき、僕をより不安な気持ちにさせるのである。
僕は頻繁に販売に対する今後の方針を暇さえあれば、弥招さんと三平に相談して意見を求めるのだった。
「こうなったら、かなり危ない橋だけど、無修正に手を出して一発逆転狙おうぜ!」
三平は、お手伝い的立場なので過激な事を平気で言ってきた。
三平の危ない橋は古びた冒険活劇によく出てくるような必ず崩落してしまう橋であってして怖くて渡れるようなものでは到底ないものだ。
上手く最初は渡れたとしても、いずれ逮捕という奈落の底に突き落とされてしまうものである。
それでも、僕は以前に三平と一緒に裏ビデオに騙された経験があるので、裏ビデオの絶大な販売力は知っている。
そして追い込まれた気持ちから、一瞬でも手を出してしまいそうになってしまうのだった。
「無修正とか現実離れした話は置いといて、ここは、やはり新規の販売ルート開拓に励もうじゃないか」
弥招さんは、さすが年長者だけあって三平の話には乗る気など全くなく、多少の地震でも崩れない橋のような現実的な事を言ってくれた。
「そうですね、ここは手分けしてレンタル店をまわって営業かけるしかないですね」
僕は、弥招さんの意見に同意することにした。
「じゃ、俺も高校時代のエロ友達のところに売りつけてくるよ!」
三平は、そう言って嬉しいことを言ってくれたのだった。
そして、僕達はそれぞれに売れ残ったビデオを車に詰め込むと分担してビデオの営業に向ったのであった。
しかし、現実は甘くなく、飛び込みでレンタル店に営業をかけても売る商品が売る商品だけに相手にされなかったり、話を聞いてもらっても販売にはつながらなかった。
一週間がんばって売れたビデオは十本にもいかない惨たんたるものでガソリン代だけ無駄に消費するものである。
しかも、一番売ってきたのが三平であったという目もあてられない結果であったのだ。
それでも、僕は三平を見習って一本でも売ってやろうと雅博のところに売りつけに行ったのだった。
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