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最終章
売れて欲しい初ビデオ
しおりを挟むそれと、AVの流通についてなのだが、基本的に販売は二種類に限られる。
一つはアダルトショップなどでお客さんに直接買ってもらうものと、もう一つはビデオレンタル店に買ってもらうものだった。
弥招さんのツテは主にアダルトショップに顔が利くものであって、レンタルビデオの方は小規模の個人で経営してるものに限られていた。
本当は大手のレンタルビデオ店に顔が利けば、数が大量にさばけて嬉しいのだが、何のツテもコネもない僕にとっては弥招さんは神様のような人などで贅沢などは言える立場ではなかった。
「最初だから、1000本と行きたいところだが、ここは慎重に半分の500にしとこうか」
僕は、弥招さんから具体的な数を聞いたので、頭の中で収支を計算してみた。
まず、支出の方が業者にパッケージ込みでのビデオ制作料が一本あたり千円なので500で五十万円、女性に払ったギャラが一人約十万だったので三十万円、撮影所使用料が一回十万なので三回で三十万円、それと三平にもお礼がしたかったので、ヘルスの40分コースの一万円、その他もろもろのテレクラ代金などを含む雑費が四万円で計百十五万円かかったことになった。
次に収入なのだが、ビデオは過当競争の影響もあって高い値段にしてしまうと売れないことから、一本四千円にしていたので500本全部売れたら二百万円になる。
昔は一本一万で売れた時代だったが、今はそのようなご時世ではないので仕方のないところである。
それでも全部売れたら一本あたり八十五万の利益になって、弥招さんと折半しても四十万以上の金が稼げておいしい仕事なのだ。
「それじゃ、最初は様子見で500にしましょう」
そうして、僕達はビデオの発注本数を500とした。
僕は、すぐに業者に電話をかけてビデオを発注したのだった。
それから、三日後に注文した通りに業者から500本のビデオが送られてきた。
そして、弥招さんはそのビデオを僕達の夢と一緒に車のトランクに詰め込むと、僕と三平に見送られながらツテを頼りに販売しに行ったのであった。
午前中に出発した弥招さんが、すっかり日が暮れた頃に戻ってきた。
僕と三平が出迎えに行くと、弥招さんは車のドアミラー越しにガッツポーズをして笑顔を見せていた。
それは、ビデオが全て売れたことを意味する嬉しい合図だとすぐにわかるものだった。
「いや、今日ほど嬉しい日はないと思ったよ――一店舗で10本買ってくれたところもあってさぁ……」
弥招さんは、ビデオが完売した嬉しさからか、僕達が用意した缶ビールを片手にご機嫌そのものでふだんよりよく回る舌を滑らせていたのだった。
「流石ですよ! まさか初日で完売させてくるなんて思ってませんでした」
そう言って弥招さんをねぎらった。
「今まで、店の人に頭下げてきてやっと種が実ったって感じだよ」
弥招さんは、満面の笑顔を見せて実に嬉しそうである。
僕は、弥招さんの言ったことから、カメラマンでありながら監督に頼まれて販売に駆り出され苦労されてきたのだと思ってしまう。
「祐ちゃん、近いうちにまた撮るよ! だから明日からテレクラの方よろしくね」
「分かりました。がんばって女性探してきますので、がんがん稼いでいきましょうよ!」
僕は、一回の撮影で四十万もの金を手にいれたので、やる気が益々起こってくるのだった。
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