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最終章
キャバ嬢詩織
しおりを挟むキャバクラってところは、店にもよるのだが基本的にそこで働いてる女性が歌と踊りなどを下着姿やトップレスになどになって披露してくれお酒の相手をしてくれる場所である。
同じ業種のピンクキャバレーに比べておしゃぶりや挿入がないので、詩織にとっては風俗であってしても、女性に優しい職場だと僕は思うのだった。
ましてや、たちんぼに比べると性病に冒される危険が皆無なので月とすっぽんぐらいの差があるほどマシな仕事であるのだ。
それでも、風俗であるからして、嫌な客に接しなければならないし、立ちの悪い客になれば平気で体を触ってくるのが日常的にあることなのだ。
だから、僕は一刻も早く、そのような風俗の世界から救ってやりたいと詩織の働く姿を見ながら思うのだった。
しかし、駆け出し男優になったばかりの僕には店で指名してやることしか出来ないの現状であった。
それでも、詩織にとっては私が来店してくれることが嬉しいみたいで、営業スマイルでない僕だけに見せる笑顔で接客してくれるのであった。
そして、その日も詩織の笑顔が見たくて、撮影が終わってから店に行ったのだった。
店につくと、馴染みになっていた受付の従業員に詩織を指名した。
ちなみに店での詩織の源氏名はきよこであった。
なんともキャバクラに似つかわしくない源氏名だと、つけた奴のセンスを疑いたくなったのだが、店のコンセプトが素人を売りにしていたのと、つけた本人が詩織自身だったので文句も言えないのである。
すぐに、従業員が他のキャバクラ嬢を刺激するかのように、これ見よがしに「きよこさんご指名入りました。ありがとうございます」と店じゅうに声を轟かせるのである。
すぐに、きよこさんなる詩織が真っ赤なキャミソール姿で現われて、しょぼいテーブルソファに案内して僕を座らせる。
詩織の真っ赤な下着姿を見ていると、中学時代には、とてもじゃないがこのような場所で詩織と逢うなんて想像も出来なかったのでなんだか、可笑しくもあり悲しいといった複雑な心境になってしまう。
席についたのを確認すると、詩織は私の正面に腰をかけて、ビールをつぎだした。
「祐一君、いらっしゃい。いつもありがとね!」
と、詩織は嬉しそうに注いだビールを私に渡してくれた。
ビールを少しだけ口に含んで胃に流し込むと、いつものように詩織の近況を聞いた。
「なぁ、お母さんの具合は大丈夫か? それにお腹は痛くなったりしてないか?」
「うん、両方とも大丈夫だよ! ママも詩織も元気、元気」
詩織は、そう言うと肘を曲げて握りしめた拳を上下に振ると、ジェスチャーをして健康だとアピールした。
「それよりか、詩織は祐一君のことが心配だよ。だって、月に何度もこの店に通ってくれて、無理してない?」
「全然、無理してないよ! 最近、営業の仕事、のってきてるんだ。だから心配しないでいいよ」
僕は、詩織にAV男優をしていることは隠していた。
詩織には自動車のディーラーで勤務してると嘘を言っていたのである。
「へぇ、凄いね。だったら安心だね!」
「うん、凄腕営業マンだからね……」
ほんとは、凄いのはあそこだけで、ここでの出費はけっこう負担になってるのだけれど口がさけても言ってはいけない。
「あ、そうそう、最近雅博君のこと話してくれないけど、元気にしてるの?」
僕は、詩織の口から雅博の事が突然出てくるとは思ってもいなかったのでびっくりしてしまった。
なぜなら、詩織は、自分の過去を知ってる人の事は話したがらなかったからだ。
僕は、随分と詩織も心に余裕が出てきたのだと思えたので嬉しい気持ちになったのである。
「雅博は、慶早大学に行ってるよ。なんでも来年あたりに会社を立ち上げたいとか夢のようなこと言ってるよ」
雅博は高校の時から、どっぷりとはまり込んでしまったパソコンのソフト開発に夢中になっており、最近ではネット関連のサイト制作会社を立ち上げたいと僕に熱く語っていたのであった。
その時の僕は、自分のAV監督になって億万長者になってやるという事は棚にあげて、雅博の事を何夢見てるんだ程度にしか思っていなかったのだが、それから、数年後には雅博の会社は大成功をおさめ、僕の求めてやまない力、すなわち巨万の富を若くして手にいれるのだった。
「慶早って超名門大学だよね、雅博君ってやっぱり頭いいんだ! それで会社って何するつもりなの?」
僕は、雅博がいくら仲のいい友達でも、詩織がベタ褒めするのは嫉妬してしまうのである。
「詩織が思ってるより雅博はそんなに頭いい事ないよ、だってネット関連の会社したいって言ってるんだぜ! ふつう、慶早行っていたら、一流企業とかの就職目指すだろ。それを夢みたいな事ばっかり抱いているんだよ。全くバカだよ、あいつは……」
「もしかして、祐一君妬いてるの? 詩織は別にバカだとは思わないけど……それに夢のある人って素敵じゃない」
僕は、詩織の言ったことをうけて、自分も夢を語りだしそうになってしまったが、それこそバカになってしまうので自重した。
「なんか、雅博君の話聞いたら、また中学の時みたいに、みんなでデートしたくなっちゃった」
詩織は、しみじみと昔を思い出しながら言ってるようであった。
「なぁ、詩織、近いうちにデートしようよ! 昔みたいに手をつないで……今なら、車あるし、どこでも好きなところ連れてってやるよ」
僕は、気づくと詩織にそのようなことを言っていた。
詩織の返事を緊張して待ったのだ。
それは、昔の詩織ならひとつ返事で喜んでくれる話なのだが、時間の壁が詩織の気持ちを変えてしまってるのではないかと思ったからである。
「詩織は、遊園地行きたい! 小さい遊園地でもいいから、祐一君連れっていってくれるかな」
その返事は中学時代の詩織そのものであった。
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