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最終章
Hの本質とは……。
しおりを挟む僕の献身的な奉仕に気をよくした剣崎さんは軽快に話を続けてくれた。
剣崎さんの次の話は、私にとって、女性に対する認識や自身の考え方の根本になってしまう貴重なものであった。
「ついでだから、面白い話してやるよ! ピストンは、何故いえに女性の事を好きになると思う? 例えばその詩織ちゃんとかいう借金だるまの女性のことを好きになったのはなぜなんだ」
僕の人生観さえも変えてしまった話は、剣崎さんのもはや十八番となってしまった質問から始まったのである。
いきなりの剣崎さんからの唐突な難しい質問に僕は戸惑ってしまう。
僕が詩織を好きになった理由って何故なんだろう? 最初に告白された時にカワイイと思ったからかな。
でも、剣崎さんは、もっと根本的な理由を聞いてるような気がする。
僕は質問の真意は見えないものの、とりあえず答えてみた。
「本能とかじゃないんですかね」
「じゃ、ピストン。本能ってなんだ?」
すかさず、剣崎さんは更に難しいことを聞いてくる。
ピストンと僕の事を呼ぶ声も力が入ってるようで正直怖い。
僕も剣崎さんの肩を揉む力を強めると、本能について、しばし考えこんでしまう。
しかし、いくら考えても本能がどこから来るものなのか全く分からないのであった。
「本能って、自然なものですよね……でも、どうしてかは分からないです」
いくら考えても答えは出そうにないと思ったので黙って剣崎さんの回答を待った。
剣崎さんも自分で振った話なので、言いたくて仕方がないのか、すぐに口を開きだしてくれたのである。
「本能の源は、遺伝子の命令によるものなんだ。DNAって聞いた事があるだろ。つまり人間の本能はDNAからの命令に従ってるに過ぎないんだ」
僕は、剣崎さんが、とてもAV男優らしからぬ、
どこぞの教授もどき的発言をされるので、正直拝みたくなってしまう。
しかし、DNAってなんとも、ややこしい話になってきてる感じがしてしまう。
そもそもDNAって言葉自体、高校の授業中に居眠りしている時に入ってきたものでしかないので、今一よくわからかったが、剣崎さんの口ぶりからして、偉い奴だということだけは理解出来た。
「では、何の為にDNAは、ピストンに詩織ちゃんとやらを好きになれって命令するんだ?」
剣崎さんは、また僕に質問してきたが、もはやアルファベットであろうDNAって言葉が出てきた時点で頭の中は悲鳴を上げていて分かるはずもないのだ。
僕は、肘で剣崎さんの肩をぐりぐりとマッサージしながら降参してしまっていた。
「すいません。詩織の事がカワイイと思ったから好きになったとしか……分からないです」
剣崎さんは、それを聞いてバカにした感じで笑うと、首も揉んでくれと僕に言ってきた。
そして話を続ける。
「結論から言うとな、男も女も自分のコピーを作るために生きてるんだ」
「コピーですか?」
「そう、コピーだ。つまりコピーってのは自分の子供のことをさすんだ。そのために人ってのは、いや人に限らず全ての動物は子供を作って、次の世代に生命をつむいでいってるんだ。だから、ピストンが女性を好きになるのは、DNAがピストンの子孫を作れと指令を出してるんだ。好きになった子と無性にエッチしたくなるのはそのためなんだよ。エッチしたら子供が出来るからな……そして、その指令は人類が誕生してからDNAにずっと刻まれていて拒むことが出来ないものなんだよ」
僕は、剣崎さんが分かり易い例えで話してくれるので、じょじょにDNAの事を理解しだしていた。そして、中学の時にテレビでみた野生の王国の事をなぜだか思い出してしまっていた。
あの時見た、おしどりの交尾シーンで雄が羽をばたつかせて雄たけびを上げていたのが鮮明に脳裡に浮かんだのである。
「だからな、ピストンが詩織って女性のことを好きになったのは、DNA的思考からすれば、ピストンが知らず知らずのうちにDNAに命令されていたって事になる。そして、詩織って子とエッチして子供を作りたいと思わされてのことなんだよ」
剣崎さんの話を聞いて、以前にも増して詩織の事が大事に思えてきたのであった。
この感情もDNAの仕業なのかとも疑ってしまう。
僕は、知らず知らずに詩織とのコピーを求めて恋愛していたのかも知れないことに気づかされたのであった。
しかし、そうだとしたら、詩織以外の女性にも興味を持ってしまうのは何故なんだろうと疑惑も同時に浮かんできたのである。
でも、その疑惑は剣崎さんの話によってすぐに解消されてしまう。
「それと、このDNAの思考命令は面白いことに男女によって、コピーを作るって目的は同じでも中身は少々違ってくるんだ。この男女のDNAの思考命令の違いを理解すれば、AV男優としても、女性を口説く上でも大いに役に立つのだが、どうだ聞きたいか?」
剣崎さんはまた話を寸止めすると、聞きたいに違いない分かりきったことを言ってくる。
今度は何を話のお駄賃として僕に所望されるのかドキドキものである。
「聞きたいですよ! 酷いですよ剣崎さん、いいところで話止めないでください」
僕は、晩飯を奢るくらいの覚悟で言っていた。
すると、剣崎さんは、ベンチにうつ伏せに寝転ぶと腰を指差していたのである。全く、これが一流男優のすることかよと思ってしまう。
「最近、ハードに腰使ってるんでこってるんだよ。ちょっと押してくれ」
僕は、いつのまにか剣崎さん専属のあんま師になった気になってしまったが、話の続きを聞きたいので腰を押して、マッサージをした。
そして、僕のサービスが確認されると剣崎さんは話の続きをするのだった。
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