【完結】【やりちん】僕の青春グラフィティ。ノスタルジーな昭和チェリーボーイの卒業物語

カトラス

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第二章

将来の道は未知

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 僕は、夜行バスに揺られながら、詩織をひきとめられなかった自分の不甲斐なさを悔いた。

 いや、一時ひきとめたからといっても何か助けてやれるわけでもなく、根本的問題が解決しないので、このほうがよかったのかも知れない。

 だからといって詩織をこのままにしておいていいはずもなく、どうしたらいいのかと頭がおかしくなりそうになってしまう。一つ分かってる事は僕に力さえあれば詩織を救ってやれるということである。

 その力とは、つまり、愛さえも簡単に買える力、愛さえも簡単に捨てられる力であるところの金であるのだ。

 金さえあれば、詩織はたちんぼをしなくていいのだ。


 だからといって、学生の僕が今日、明日用意できるような小額の金では屁のつっぱりにもならない。


 僕が欲する力はもっと巨大で高額な金なのだ。

 僕はまだ手にすることの出来ない巨大な力を得るために、この日を境に力を得ることばかり考えるようになっていったのだった。

 力を得る目的は勿論、詩織を救う為にほかならない……

 



 歌舞伎町という欲望渦巻く街で、詩織との衝撃的な再会をしてから数ヶ月がたっていた。

 僕は詩織と再会して、あのような悲しい現実を知るぐらいなら、逢わなかった方がよかったのじゃないかと、何もしてやることの出来ない不甲斐ない自分が情けなくなったりする。

 ただ、逢った事により、そう悲観するようなものばかりでない嬉しい出来事もあった。

 それは、詩織からあの日以来電話がかかってくるようになったのだ。

 恐らく、詩織の気持ちをを想像するに僕に全てを打ち明けたことによって彼女自身知られたくない秘密を隠さなくてよくなったという安堵感が生まれたのではないかと……。

 だから、三年間も一度も連絡をよこさなかった詩織が自分から電話をしてきたのだと思ってしまう。
 もちろん定期的に電話があるわけでもないし、こちらから連絡先を聞いても教えてはくれなかったのだが、それでも、詩織の近況が知れるだけで十分なものであった。

 僕は詩織との電話が切れるたびに、いつかきっと詩織を救ってみせると心に決意を抱くのである。

 たとえ、それが何年かかろうとも、僕は詩織をあの環境から助けてみせると心に誓うのだった。

 詩織を救ってやるには巨大な力が必要になってくる。

 つまり莫大な金が必要なのだ。

 詩織は借金の事は話さなかったが、おそらく詩織の父親が自殺したことから考えると多額の借金があるのではないかと容易に推測できた。

 いや、もしかしたら父親が死んでしまったことによって借金は相殺されたのかも知れない。

 でもたとえ借金がなかったとしても、母親の治療費に莫大なお金がかかるからこそ、あのような仕事を詩織はしているのだ。

 だから、その状態を救ってやるには多額の金が必要になってくる。

 その力を得るためにはバイトとかでは、とてもおぎなえるような代物でないのである。



 そんなことばかり考えていたころ、ちょうど花道高校では将来の進路を決定する時期に入っていた。

 わが花道の進路は100%就職一本の道である。大学に進学するものは一人もいない状態なのだ。

 そういった訳で僕の進路も他の同級生達同様に就職の道になるのである。

 僕は学校に貼り出されている就職活動掲示板を見ながら将来の職業について大いに悩むのだった。

 詩織の事があるので会社情報の給与のところにばかり目がいってしまう。

 しかし、高卒の僕がいただけるとされるお金は一ヶ月の給料が10万から12万の間と、現在バイトしてるサムソンに毛が生えた程度のものばかりであり、詩織を救えるような額には遠く及ばないものであった。

 もちろん、その給料で少しづつ貯金をしていったらいいのだろうけど、それでは時間がかかりすぎると思ってしまうのだ。

 やはり、サラリーマンでは限界を感じずにはいられないといったところなのだ。

 その証拠に自身の父親なんかがいい例であり、毎月の小遣いにも何年働こうとも困ってる有り様である。

 だからと言って、自分で何か事業をするとしても、資金も経験もアイデアも無いのであってして、僕は掲示板を見てはため息ばかり出る日々をすごしていた。

 そんな将来の仕事について悩んでいたある日の事だった。

 僕は、自室で最近バイトで買ったテレビを見ながら、雅博に電話で将来の仕事について相談をしていた。

 テレビでは、“俺達ひょうきん族”というバラエティー番組が流れていた。

 何気にその番組を見ながら、雅博にアドバイスを貰っていた。

「やっぱり、自分で何か仕事立ち上げるのが一番いいのだろうけどな。祐一は何かしたい事とかないのか?」

 雅博は最もらしい事を言ってくれたが、したい事がわからないから電話してるのであって、雅博にヒントになるような事を言ってほしいのだった。

「何かいいアイデアないか?」

「うーん。自分の好きだとか得意なことを仕事に出来たら一番成功するとは思うのだけど……まずは、そう焦らずに自分の好きな事、やりたい事が見つかるまでふつうに就職して時期がくるまで待ったほうがいいだろうな。慌てて何か始めても絶対にうまくいかないって……それに事業をするにも資金をある程度ためておかないと無理ってもんだよ」

 雅博は自分でも薄々わかっている事をズバっとアドバイスしてくれる。
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