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第二章
夢の為に。
しおりを挟むマットで果ててしまった僕は、その後、葵嬢に体を綺麗に洗ってもらってから、体にバスタオルを巻いてもらうと浴室から出てベッドルームで暫しの休憩を取っていた。
「何か飲み物いかがですか。ビールでいいかしら」
葵嬢はアルコールを勧めてきてくれたが、未成年の僕が飲めるはずもなく、冷蔵庫にあったコーラーを頂くことにした。
「お兄さん、初めてとは思えないぐらい上手だったよ」
コーラーを飲んでゲップしそうになってる時に葵嬢はそう言ってきた。
「いや、そんなことないですよ」
僕はあくまで童貞を捨てた純情な青年を装うことにした。
「一生の思い出になりました」
そう言うと、葵嬢は凄く嬉しそうな顔をしてくれた。
「葵さんは、エンジェルですよ! でも、この仕事って大変ですね。疲れるでしょ」
僕が調子に乗って、そのような事を言ったら、一瞬葵嬢の顔が曇った。
三平から聞いていた、ソープではプライベートな事を聞くのはご法度だと言うことを思い出してしまった。
「私、夢があるんだよね。将来、自分のお店小さくてもいいから持ちたいと思ってがんばってるんだぁ」
そう言うと、葵嬢はまた、さきほどと同じように嬉しそうな表情をして笑顔に戻った。
葵嬢の言ったことを聞いて、自分がなんだかちっぽけな恥かしい存在に思えてしまった。
詩織の事も考えてしまったのだ。
詩織はこのソープ嬢のように夢があって、たちんぼをしているのだろうか? それとも……
「ねぇ、お兄さん。何深刻な顔してるの? 何かわたし、気にさわるようなこと言ったかな?」
葵嬢は心配そうな表情をして聞いてきた。
「とんでもないですよ。さっきのマットプレイの余韻にひたっていただけですから……」
そのような事を言って誤魔化した。
「じゃ、そろそろ、お兄さんベットでエッチしようか それとも、もうダメかな……このまま、お話しとく?」
僕は、それを聞いて、コーラーの缶をベッドの脇に置くと、葵嬢をベッドに押し倒していたのだった。
30分ほどで、二回戦を終了していた。
お互いに汗と愛液にまみれながらの激しいセックスをした。
葵嬢は僕の夢のかけらの残骸をゴムと一緒に捨てると、「タバコ吸っていいですか?」と聞いてから、ベッドに座ってタバコを吸いはじめた。
「お兄さん、ホントに今日が初めてだったの。ひさしぶりにお客さんで感じてしまっちゃった」
葵嬢は、その事が嘘でないかのように頬を紅潮させて言った。
その紅潮させた顔は、千草さんが逝った時によく見せてくれるのと同じ物である。
僕は自身のエッチに大いに自信を持つことが出来たのだった。
「ねぇ、これからお友達とまっすぐ帰るの?」
葵嬢は一仕事終えたからか饒舌に話をしてきて、タバコをおいしそうにふかしていた。
「まぁ、ちょっとブラブラしてから帰ると思います」
実はこれからが一仕事待っているのであるが、説明しても長くなる話なので適当な事を言っておいた。
「もう、そろそろ時間ですかね?」
僕は、かなり時間をかけてエッチしたのと、その後会話を長い間、楽しんだこともあって心配になり聞いてみた。
葵嬢は置時計を見て、時間を確認すると「うん、あと10分ほどだから、そろそろ服きましょうか」と言って、脱いだ洋服を持ってきてくれた。
服を着ながら楽しい時間が過ぎのは早いんだなぁとしみじみ思ってしまった。
葵嬢も着替えてる間に元のワンピース姿に戻っていった。
そして、お互いが元の洋服姿に戻った時、葵嬢にエッチをしてくれた対価のサービス料を支払った。
葵嬢は自前の財布の中に大枚を二枚入れると「ありがとうございました」と対面した時と同じように深々と頭を下げた。
その瞬間に非常に虚しい気持ちが心の中で感じてしまった。
それは、葵嬢と僕が恋をして、お互いに一時ではあるがエッチを通して本気で愛しあったと思ってることが、お金を払ったことによって、結局は金の力で初対面の女性とエッチをして、擬似恋愛を体験したにすぎない現実に引き戻されたからだ。
それと同時に、お金ってものはひと時の愛させも買えてしまう恐ろしいものだと思い知らされたのだった。
「また、いつでも遊びにきてくださいね」
対面した時と同じ階段前で葵嬢と別れると三平が待っているであろう待合室に戻った。
待合室に戻ると案の定、三平が帰ってくるのを待ちわびていた。
「遅かったじゃないかよ。で……どうだった?」
「あぁ、いい人と当たったみたいで楽しかったよ」
三平は、おそらく僕からそんな優等生的発言は期待していないと思ったが、葵嬢とのエッチの詳細を語る気もなかったのでそう言ったのだった。
「祐一は面白くない奴だな。俺が聞きたいのはもっと……」
やはり、三平は口をとがらせて、不満を言ってきた。
僕は三平のご機嫌を直すために三平が一番話したいことを聞いてみることにした。
「三平の方はどうだったんだ? ちゃんと童貞をなんちゃら嬢に捧げたのかよ!」
聞いた途端に三平は膨れっ面から、突然に嬉しそうな顔になり、待ってましたとばかりに興奮した口調で語りだした。
やはり、三平は自分大好き人間なので、自身の事が話したくて仕方がないのである。
「おう、もう最高! しっかり由記嬢にぶち込んできたよ。いきなり、しゃぶってきてくれて――四回もやっちゃた」
僕は、三平の話を聞いて、由記って名のソープ嬢も仕事とはいえ災難だったと思い、他人事ながら同情してしまう。
しかし、いくらフルコースの120分コースとはいえ、四回もやるってのは、よほど三平が早漏で性力が強い奴なんだと思ってしまうのだった。
「それと、由記嬢帰りがけに俺に電話番号まで教えてくれたんだ。ひつこく聞いた甲斐があったてもんだよ。もうソープ最高、由記嬢バンザイだ!」
三平が言っていたソープ嬢に対するタブーの薀蓄をテープに取っておいてやったらよかったとつくづく思ってしまう。
何がソープ嬢に対しては絶対にプライベートな事を聞いてはいけないだ。
お前が電話番号という一番プライベートな事を聞いてるじゃないかよ! と突っ込みを入れたくなるのだった。
のちに、その電話番号が全くのでたらめだったことは言うまでもない。
僕は、その後、従業員から渡されたアンケートを書きながら、三平から由記嬢の口さばきはどうだとか、マット洗いの妙技とかを散々聞かされた後、男爵から退店したのだった。
そして、三平と駅前の喫茶店に行き、これからどうするか相談した。
僕は、詩織を探すのに三平は一緒についてきて欲しくないので、夜行バスの出発時間である22時にバス停に待ち合わすことにした。
そして、その時間にバス停にこなかったら一人で帰ってくれるように言っておいた。
もし、詩織が今日見つけられなかったら明日も探すつもりでいたからである。
普段なら、面白そうな事には絶対ついてくる三平だったが、今回は付いて来るとは一切いわなかった。それは、事情を知ってる三平の気遣いなのだと思うのである。
時計を見ると、17時にまもなくなろうとしていた。
もし、詩織がたちんぼなる事をしているなら、そろそろ動き始めるころではないだろうか。
僕は時間を見て喫茶店でのん気に茶をのんでる場合ではないと思い、三平と一旦別れて、歌舞伎町二丁目で雅博が目撃したと言っていた“ラブ&ピース”というラブホテルに単身向ったのであった。
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