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第二章

男爵の姫

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 僕達は男爵という名のソープの店の前に到着した。

 格安ソープといっても店構えは立派で男爵という名にふさわしい貴族の館を思わせるような外観になっている。


 初めての経験なので緊張しながら男爵の店内に足を踏み入れた。

 入ると、すぐに「いらっしゃいませ」と蝶ネクタイをした胡散臭い従業員の男が僕達を迎えいれてくれた。

「ご予約の方でございましょうか?」

 

 三平はすぐに「予約のものです」と従業員に答えると自分の苗字を告げていた。

 三平はその場で従業員に二人分の入浴料を支払う。

 入浴料の支払いが済むと、私達は従業員に待合室に案内されてソフェに座って待つように言われた。

 待合室にいるのは、まだ時間が早いのか僕達だけのようで安心した。


 こんなところで他の男性客と一緒に悶々とした気分でソープ嬢の待つ浴室に案内されるのは御免だからである。

 待合室にかかってる時計を見ると、二時までは十分前である。どうやら予約の時間より気持ちが焦っていたのか早く到着してしまったようであった。

 


 僕と三平が、待合室に置いてある成人雑誌を見て待っていると、先ほどの案内してくれた従業員が現れて、「三島様、ご案内でございます」と準備が出来たことを三平に知らせた。

 三平は従業員に呼ばれると「はい」と緊張した声を上げて立ち上がった。

 別に声を出して返事をしないでもいいのにと思ったが、こういう時の三平は真面目なんだと可笑しくなってしまった。

 

 三平は従業員の後ろについて待合室から出ていった。

 三平が部屋から出る直前に「がんばってこいよ」と三平に声をかけて見送る。

 三平は小声で「おう、がんばってくる」と言って、待合室から消えていった。

 三平の歩き方がぎこちないのが少し気がかりであったが、こればかりはどうしてやることも出来ないので、友人として、三平が無事童貞を捨てることが出来ることを祈るばかりなのである。

  三平が童貞を捨てにいくのを見送った後、一人待合室にいる形になってしまった。

 次は自分の番だと思いながら従業員に呼ばれるのを一人待合室で待っていると、急にドキドキとした気持ちになってくる。

 それは、なりゆきとはいえどもソープに訪れることになってしまい、情報誌で見た顔だけしか知らない女性とこれからエッチするからである。

 風俗初体験という好奇心からくる期待と初対面の女性とうまく関係をもつことが出来るのかという不安が交互に入り交ざって複雑な心境になってしまう。

 なんとなく三平が入浴料を奢ってまで、ついてきて欲しいといった理由がわからないものでもないと思えてくるのであった。

 そんな気持ちの中、さきほど三平をソープ嬢のところに案内した従業員が呼びにきた。

「お待たせいたしました。女の子の準備が出来ましたので、今からご案内します」

 従業員はとても、丁寧な言い方をしてくれる。

 いよいよかと思い手に汗をかいてしまう。

 従業員の背中を見ながらあとについて行き、ソープ嬢の下に向ったのである。

 最初、僕は従業員がソープ嬢のいる部屋まで案内してくれると思っていたのだが違った。

 それほど広くない廊下の途中で従業員が立ち止まると「あちらで、女の子が待っております。

 お楽しみくださいませ」と言って、廊下の先にあるカーテンで区切られたところを、「さぁ、どうぞ!」と言わんばかりに手を差し伸べて言ったからである。

 どうやら、あのカーテンの先でソープ嬢が待っているみたいである。

 そう思うと僕は、初対面の女性と逢う緊張から心臓が飛び出しそうになってしまう。

 それでも、高い金を払ってまで遊びにきてるのだから、逃げ出すわけにもいかず、カーテンをくぐるのであった。

 後ろからは「お客様入りまーす。ご案内OKです」と、ここまで連れてきた従業員の業務連絡の大きな声が廊下に響いていた。

 カーテンの先には、男爵という名だけのこともあってして、豪勢な二階にあがる階段がそびえていた。その階段の手前にソープ嬢が絨毯の上に正座して深々と頭を下げて出迎えていた。

 ソープ嬢は僕を確認すると、すぐに立ち上がって接客してくれる。

「ご指名ありがとうございます。葵といいます」そう簡単な自己紹介をすると葵嬢は僕の手を握ってきたのであった。

 葵嬢は体の線がはっきりと分かる白いワンピースを着ていてよく似合っていた。ソープ嬢のはずなのにどこか清楚な感じがして、正宗は途端に反応してしまう。

 葵嬢は、ゆっくりと手を繋ぎながら階段を登っていった。

 僕が無言でいると「今日はポカポカして暖かい日ですね」と話しかけてきた。

 きっと、僕の手が汗ばんでいるので、気を遣って言ってくれてるのかと思うと恥かしい気がする。

「部屋二階なんですよ。ごめんなさいね。今日は一人でこられたんですか?」

 葵嬢は、初対面の僕に緊張することなく、明るい声でどんどんと話しかけてくる。

 当たり前といえば当たり前なのだろうけど、葵嬢の社交性は抜群である。

「今日は、友達に誘われて一緒に来たんですよ。初めてなんで緊張しちゃってすいません」

「え!? 初めてなんだ。お兄さん、もてそうな感じするけどなぁ、じゃ今日は筆卸しなんだ」

 どうやら、葵嬢は僕のいい方が悪かったようで童貞だと思ったようである。

 僕は童貞の方が可愛がってもらえそうな感じがしたので、あえて否定はしなかった。

 そうして、僕はこくりと頷いて嘘をついたのであった。

「わぁ、葵嬉しいなぁ。じゃ、葵がお兄さんの記念すべき第一号になるんだ。今日は楽しみましょうね」

 しかし、ソープ嬢ってのは客に合わせて話をするのが長けてるなぁと、つくづく思ってしまう。

「おトイレとか大丈夫ですか」

 部屋の前につくと葵嬢は僕に聞いてきた。

「はい、大丈夫です」と私が答えると、葵嬢は部屋の中に入れてくれた。

 室内はかなり広く、二層構造の造りになっていた。

 一つはベッドルームになっていて、服をかけるラックと冷蔵庫が置いてあるだけのシンプルな部屋。

 そして、ベッドルームの奥には段差で区切られてるバスルームが広がっていた。バスルームには、ラブホテルで見たマットと特殊な椅子が置いてある。

 葵嬢は、部屋に入るとすぐに、浴槽に向かいお湯を張りに行った。

 そして、突っ立てる僕のところにすぐに戻ってくると、「すぐにお風呂には入れますから」と言って、立ったままいきなりキスをしてきた。

 僕はあまりの出来事にびっくりしてしまったが、すぐに体は反応して葵嬢の唇に吸い付いていた。

 葵嬢はキスをしながら、僕の服を器用に脱がせていく。

 ふだん、女性にしている事がここでは逆なのである。

 上半身を脱がせ終わった葵嬢は、キスを一旦止めると「今日は楽しみましょうね」と甘ったるい声で言って、僕のズボンを脱がし始めるのだった。

 そしてパンツ一枚になって、すっかりテントを張ってしまったものを見て葵嬢は「もう、元気になってるんだ。かわいい」と言って、パンツを膝まで下げたのだった。
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