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第二章
アルバイト
しおりを挟むあぁ、本当なら詩織と……などと考えてしまうと益々気分が鬱になってしまうのだ。
それに輪をかけるようにして、詩織からは一年近く音沙汰がない。
詩織の事情はどうあれ、そろそろ自身の気持ちも彼女から遠ざかっていくのは致し方ないことであった。
そういった訳で、僕は次第に詩織に代わる新しい彼女を欲しはじめていくのだった。
しかし、残念な事に男子校であるから、そう易々と彼女が出来るような出会いの場などなく、常にいるのは同じような境遇の三平を筆頭にしたオナニー野朗ばかりであるのだ。
最初は、仲のいいモテ男である雅博に頼んで女の子でも紹介してもらおうかとも思ったが、さすがに、詩織と僕の関係をよく知ってる雅博に軽蔑されそうな気がするのである。
それと、雅博は最近パソコンなるものにどっぷりと嵌ってしまい、元々の趣味であるギターと重なって大変忙しそうなので遠慮することにしたのだった。
そんな、女っ気のない生活にそろそろ終止符をうちたいと思っていた時に友人の一人に彼女が出来たのであった。
その友人は、日ごろから女性に縁のなさそうな感じだったので、どのようなきっかけで彼女が出来たのか知りたくなり聞いてみたのだった。
友人は、新婚さんいらっしゃいに出てくる間抜けな旦那のような顔をして、嬉しそうに彼女が出来た馴れ初めを教えてくれた。
「マックのバイトで知り合ったんだよ! 悩み事を聞いてやってるうちに仲良くなって……今じゃもう――」
友人は幸せいっぱいな顔をして自慢話を披露してくれたのだった。
僕の隣で一緒になって話を聞いていた三平は、「いいな、いいな」とひたすら羨ましがっていた。
「なぁ、俺達も何かバイトしないか?」
学校が終わった帰り道で一緒に下校していた三平が突然思い出したように言ってきた。
どうやら、三平はマックで彼女が出来た友人のことが頭にあるようだ。
僕も、密かにバイトでもして女性と出会いたいと思っていただけにタイムリーな話題である。
「いいバイトあるかな? このさい時給は安くてもいいから、女がたくさんいるところがいいな」
本音で三平にそう言った。
「ファミレスとかだと、いっぱいいそうだなカワイイ子が……」
三平は想像したのか顔が伸びきっている。
「でも、お前がウエイターだと食欲なくなるなぁ」
「どういう意味なんだよ!」
三平は少し怒って口をとがらせると文句を言った。
「冗談だよ、怒るなって。でも、真面目な話バイトしたいよな。帰ってから暇だし」
「小遣い稼げて、彼女が出来たら最高だよな」
三平の言う通り、バイトは一石二鳥のように思えた。
問題はバイト先をどこにするかだけで、僕はバイトをする気満々になってきていた。
「とにかく、お互いにバイト探し合おうぜ。いいところあったら紹介してくれよな」
僕は、三平にそう言うと分かれて帰ったのだった。
それから、僕は数週間かけてバイト探しに奔走した。
しかし、高校生が出来るバイトは限られていてなかなかに見つからない。
自宅の近所を中心に自転車を乗り回してバイト先を探したのであった。
そして、自宅からは少し離れているもののいいバイト先を発見したのだった。
見つけたバイト先は、サムソンという名のコンビ二であった。
なんとも、ローソンのばったもんのような店の名前なのだが、一応にちゃんとしたコンビ二ではある。
僕がここでバイトしたいと思ったのは、様子見で入ったコンビ二の中でレジ打ちをして働いてる店員さんが自分好みのカワイイ人だったからだ。
その際にお菓子を購入したのだが、お釣りを渡す時に、その女性店員さんが、僕の目を見ながら笑顔でぎゅっと手を握って小銭を返してくれたので、一瞬のうちにメロメロに心を奪われてしまったのだった。
その時にこの店でバイトをしたいと強く思ってしまった。
次の日、学校が終わると早速に履歴書を持ってサムソンなるコンビ二に面接に行く。
面接はオーナー兼店長が行ってくれて、すぐに「来週から来てほしい」と言われてバイトが決まったのだった。
店長は小太りで口髭を生やしていたので、マリオのような感じがしたが、少し目つきが悪かったのでワリオにも見えた。
でも、話した感じでは、やんわりとした物言いをする人でえらぶった素振りもなく好印象である。
まぁ、働かしてもらう自分が言うことではないのだが、ゆるい感じのする店長だった。
勤務シフトは平日の週二日、火曜と木曜に働くものであった。
働く時間は夕方の七時から十時までで、主に商品の仕分けとレジ打ちが仕事になるということだった。
もっと働きたい場合は、土日もなれてきたら入っていいと店長は言ってくれていた。ちなみに時給は540円である。
今では考えられない最低賃金だが、その当時の相場はこんなものだった。
そうして、僕はコンビ二で働くことになるのだが、ここで完全に女体の神秘に触れることになるのであった。
バイト先が決まった私は、その日のうちに両親にバイトをしてもいいかと相談してみた。
母親は学業がおろそかにならないかと、少し心配したがバイト代の一割ぐらいは家に入れると言ったら、すぐにOKサインを出してくれた。
もしも、公立高校に通っていたら絶対に許してくれなかっただろうが、花道は職業訓練学校のようなところなので、母親は大学に進学することは絶対にありえないことだと、息子の将来の事より目先のささいな金に走ったのである。
父親の方は母親のいいなりなので自身の意見などはなく、母親の顔色を窺いながら「よし、祐一、しっかり社会勉強してきなさい」といちおうに父親としての体面だけは許されたのであった。
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