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第二章
三島三平
しおりを挟むそんな女っ気のない男ばかりの修羅である男子校生活をそれなりにバカなことをしながら過ごしていた時、僕に運命的な出会いが待っていたのだ。
運命的と言っても、将来の伴侶になるような女性ではなく、同じ花道に通ってる、みてくれは決してよくない思春期特有のニキビ面をした同級生である男であった。
そいつは、三島三平と言って、名前の中に三が二つも入る覚え易い奴である。
こいつは、雅博同様に無二の友になる奴であってして、将来、僕の進むべき道のきっかけになってくれる大事な男なのだ。
三平との初めての出会いは、夏休みが間近に迫ってきて蝉がやかましく教室の外で大合唱している昼休みのことであった。
早々に退屈な授業中を利用して早弁を済ませた私は、同じく早弁を済ませて口が寂しい友人達といつものようにバカな話をして盛り上がっていた。
だれるような暑さが話しの内容をより熱くさせるのだった。
「祐一、新田恵美の新作借りたんだってぇ! 俺の国章こすりと交換しようぜ!」
エロビデオをいつも交換してる友達がどこから情報を仕入れてきたのか僕にそう言ってきた。
友人の言った、新田恵美ってのは、おにゃン子クラブの新田恵利にくりそつなAV女優のことである。
アダルトビデオ業界も販売とレンタル促進の為に手を変え品を変えてオカズを矢継ぎ早に投入してきて飽きさせない。
「おお、いいねぇ、こすりちゃんかぁ。エロダビングしたら持ってくるんで明日にでも交換しようよ!」
僕は、昼間から話すような内容でないことを堂々と大声で話し、股間をムズムズさせていた。
そんな、オナニーを早くしたいという禁断症状で股間が膨らみかけてた時に、自身に向けられる妙に熱い視線を感じたのである。
視線の先にはポチャッとした体型をしていて色白のにきび面をした、いかにも女にもてそうにない感じのする奴がこちらを見て、ニヤニヤと笑っていたのだった。
そして、僕と目が合うと近寄ってきて「俺も恵美ちゃんの見たいなぁ、いつでもいいから貸してくれよ」と言いよってきたのだった。
その、にきび面をして言い寄ってきた奴が三平であった。
三平は商業科の生徒だったので、その時話すのが初めてだった。
僕は初めて話す相手に対して、三平の奴はなんて図々しい奴だと思ったが、曇り一つないアホ面を見ているとなぜか憎めない気持ちになってしまったのだった。
「あぁ、返ってきたら渡すよ!」
そう言って三平に快諾してやった。
「ありがとな、俺、隣の商業科だけど……ちょくちょくこっちに来てるので――また貸してくれよな」
それが、僕と三平の出会いである。
なんとも、アホらしい出会いのきっかけであるのだが、男子校ではこのようにして友達の輪は広がっていくのである。
その日を境にして、三平はちょくちょく話しかけてくるようになっていった。
ほんんどがどうしようもない恥かしい話ばかりなのではあったが、三平のバカ話に大いに腹を抱えて笑わしてもらったのだ。
特に、深夜にエロビデオでオナニーをしていた三平がヘッドホーンのジャックが外れていたことを知らずに大音響でアヘ声を家中に流してしまい母親に右手を擦ってるところを見られ注意された話などは傑作であった。
とにかく三平は明るい奴で、このような恥かしい経験をみんなに臆さずに話して笑いを提供してくれるので自分のみならず他の友人達からも人気がある奴なのであった。
そういったエロ交流から始まって、僕と三平は少しづつ仲がよくなっていき、夏休みに入ると週末の日に三平の家に泊まりに行くぐらい親交が深まっていったのである。
三平の家に遊びに行くのは、彼の実家が寺だったものだから、自分の自宅の部屋より、三平の自室の方が広くて居心地がよかったからである。
そんな夏の終わりのある日に、突然、三平から相談事を持ちかけられたのだった。
それは、恒例になりつつあった三平の家に週末訪れている時のことであった。
「なぁ、これ一緒に買ってみないか?」
三平は何度も見たのであろう、くちゃくちゃになったチラシを真顔でつきつけてきた。
チラシを手にとって中の内容を確認してみた。
そこには、“完全無修正ビデオを自宅まで配送します(その日のうちにお届けします)。あの有名女優が早くも流失”と書かれていたのだった。
「何だこれ?」
僕は思わず三平に聞いていた。
「三日ぐらい前に郵便ポストに入っていたんだ! まぁ、ここを見てくれよ」
三平は興奮した口調で唾を飛ばしながら、チラシに指をさした。
三平の指の先には、私が大ファンである新田恵美の顔が流失ビデオのラインナップとして載っていたのである。
僕はそれを見た瞬間に欲しいとおもわず心の中で叫んでいた。
「いくら、するんだ? これ……」
僕は買う気満々で三平に聞いている。
「一本、五千円。だけどな三本だったら一万になるんだ」
なかなか、裏ビデオ業者も微妙な値段設定してくる。三本で一万とは非常に悩むところであった。
「なぁ、祐一買わないかぁ? 一人五千円づつでお前は恵美買って、俺はこすりいくからよ! もう一本は二人で決めるってことで……」
僕は、既にこすりの名前を聞いた時点で購入を決意していたのであった。
お小遣いの一月分がまるまる飛ぶのは痛いが、こんなものを見せられては買わないわけにはいかないのである。
それから、二人してチラシを睨めっこをすると、迷いながら見たいもう一本を決めた。
「じゃ、電話するぞ!」
そう言って、三平は電話の子機を部屋にもってくると、チラシに書かれてる電話番号をプッシュしたのであった。
三平はチラシの番号を復唱しながら強張った表情でプッシュボタンを押し終わった。
「よし、これでOK。祐一……あとは任せた!」
そう言って三平は子機を私に突き出してきた。
「え!? 俺がかけるのかよ!」
僕はおもわず三平に聞いていた。
「俺、こういうの苦手なんだよ!」
三平は申し訳なさそうな顔をして、僕に向って手を合わせて拝みだす。
嫌々ではあるが、三平の情け無い顔を見ていると自分が電話で注文しないといけないと決意するしかなかった。
そうして、僕は緊張しながら相手が電話に出るのを待った。
呼び出し音を聞きながら待つこと数秒後、「もしもし、お電話ありがとうございます」と明るい声をした女性オペレーターが電話に出たのであった。
僕は、まさか、女性がエロビデオの注文の応対電話に出るとは思っていなかったので拍子抜けしてしまいなかなか言葉がでてこなかった。
イメージでは怖そうなあっち系の人が応対してくると思っていたからだ。
「もしもし、お客様ご注文番号どうぞ!」
オペレーターはきびきびした感じで注文を聞いてきた。
僕は、慌てて、分かり易いようにと丸印をつけていたチラシの商品番号を見た。
間違いがないことを確認するとオペレーターに注文番号を伝えた。
「はい、三本ですね。それでは、すぐにお届けに行きますので住所をどうぞ」
三平の自宅住所をオペレーターに伝えた。
「でわ、ご注文ありがとうございました。本日中にお伺いいたしますのでお待ちくださいませ」
そう、オペレーターは私に告げると電話を切ったのだった。
「どうだった?」
電話を切った途端に三平は事の成り行きを心配そうに聞いてくる。
聞いてくるぐらいなら、三平が電話したらいいじゃないかと思ったが、三平の自宅を相手に晒したので我慢することにした。
「注文はちゃんとしたよ――今日中に配達するってよ!」
「そっかぁ、流石祐一だな」
何が流石なのかよく分からないが、三平は褒め称えてくれた。
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