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花道高校 合格発表!
しおりを挟む早く詩織に報告したい気持ちからチャイムが鳴るとすぐに帰宅する身支度を整えて、いつもの待ち合わせ場所に行った。
「祐一君、テストどうだったの?」
正門前で詩織を待つこと10分、逢うなり詩織は開口一番に担任の先生と同じような聞いてきた。
「もう、楽勝、楽勝! たぶん合格出来るんじゃないかな。で……合格したら――行ってくれるんだよな!」
僕の頭は、授業中の妄想の続きでいっぱいである。
「行くって……遊園地でも連れていってくれるの?」
遊園地と言えば遊園地なのだが、但し大人限定である。
それにしても、詩織は私の言いたい事が分かっているのに意地悪なのだ。
「だから……この前合格したらご褒美で……」
「あぁ……考えるっていっただけだよ! それに、まだ合格してないし……」
確かに、詩織の言う通りまだ合格はしていない。
しかし、花道の試験が終わった手ごたいから鑑みても、よほどの記入ミスが無い限り合格はもらったようなものなのだ。
ここは、合格発表までの日々を楽しく過ごす為にも、詩織の気のいい返事が欲しいところであった。
「もう、いいよ。試験がうまく出来たから、ちょっとはしゃいだだけだよ!」
演技で少し拗ねたようなそ振りをした。
「ほんと、祐一君はお子様なんだから……合格してたら、二人乗りの大きなメリーゴーランド乗りにいってあげるわよ」
詩織はそう言って、僕の隣でくるくると体を一回転させおどけて見せた。
そんな詩織が益々好きになる。
詩織から大きなメリーゴーランド=回転ベッドに乗るという確約を得た僕は、詩織と別れたあと気分は上々であってしてスキップしたい気持ちでいっぱいであった。
二十日後にある花道の合格発表が心底待ち遠しい。
受験前と違って早く時間が進んでくれと願ってしまう。
そうして僕は、花道までの合格発表までの間、期待と股間を膨らませながら悶々とした日々を過ごしたのだった。
しかし、その時の僕は合格発表の日に訪れる、幸せと不幸は隣り合わせだという事をまだ知らないのであった。
花道高校の合格発表当日。
僕は、花道高校の最寄り駅である穴留に来ていた。
理由は勿論、合否の確認の為である。
穴留駅から花道高校までは徒歩で5分少々なのだが、僕の花道に向う足どりは重く道のりが遠く感じてしまっていた。
花道の受験が終わった当初は、あれほど早くこの日が来てくれと願ったものだったが、合格発表までの二十日の日々が僕をすっかり弱腰に変えてしまっていたのだ。
最初は自信満々だったのだが、合格発表の日が一日ごとに経つにつれ、もしかしたら、記入ミスをしていたのでは無いかとか、自分が正解だと思っているものが間違いなのじゃないかと、よからぬ不安に苛まれてしまうのである。
不安からくるストレスによって、暇さえあれば右手を動かしてしまうというオナニー中毒に陥ってしまい心も体も、いつのまにかフラフラになってしまっていたのだ。
そういったワケで、本来駅から学校まで5分弱の道のりを、気がつくと20分近くもかかって花道の正門までたどり着いた。
正門からは、校舎の手前で人だかりが出来てる場所が見える。
おそらく、その場所に合格者の番号が貼りだされてるボードがあるのだろう。
僕は、一回だけ大きく深呼吸をすると意を決して、人だかりの出来てる場所に向った。
何度も見て暗記してしまった受験番号の紙をポケットから出し握りしめると一歩ずつ合格者が貼り出されてる場所に近づいていった。
近づくにつれ、合格者の歓喜の声が聞こえてきて、のみの心臓を大きく刺激するのである。
左胸に手を当てると、飛び出してしまいそうな心臓をおさえるかのようにして合格者の貼り出されてるボードの前に来た。
隣では、先に確認した受験のライバルが合格した喜びでバンザイして飛び跳ねていた。
僕は呪文のように小声で自身の受験番号C-0069を唱えながら、人だかりをかき分けてボードの見易い場所まで移動した。
そして、勇気を振りしぼって自身の受験番号を探した。
僕の受験番号シックスナインをあってくれと願いつつ端の番号から順に読みあげていった。
C-0061、0062――66、67……68……69、70、71。
僕の受験番号はそこにあった。
シックスナインは確かに貼り出された紙に書き込まれていたのだ。
人目を憚らずに大きな声で「やったぁ」と叫ぶと大きく手をあげて飛び跳ねた。
これで、また詩織とラブホテルに行けると思うと涙が出るくらい嬉しいのだ。
いや実際には頬に濡れるものを感じていたのであった。
私は、もう一度確認の為に番号を見た。
やっぱりC-0069番は書き込まれていた。
でも、再度見たときに思ったのだが、僕の上下の番号でとんでるものはなかった。
もしかして、ほんんど不合格した者はいないのでは……などと過ぎったが、この際そんなことはどうでもいいので忘れることにした。
暫くは、合格した喜びで興奮状態だったが、ほどなくして平常心に近い状態に戻ってくると、今度は合格したことを早く、詩織や担任に報告したくなってきたのであった。
いつまでも、ボードの前で一人喜んでいても仕方ないので、中学に戻ることにした。
時刻は午前10時を少しまわったところなので、今から戻れば昼前には学校につけるってもんだ。そしたら昼休みに詩織に合格したことを伝えられるので、ちょうど都合がいいってものである。
善は急げとばかりに帰路にたったのであった。合格発表を見る前の重い足どりが嘘のようにの足は軽やかで空でも飛んでいけそうな気持ちがした。
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