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花道バンザイ!!
しおりを挟む最寄のバス停から、おそらく始発であろうバスに乗り込むと乗り継ぎしないといけないJRの駅に体をバスの振動に揺られながら向かった。
車窓の風景を見ても退屈なので、花道高校から配れている受験要項に目を通す。
もうプリント用紙がくちゃくちゃになるぐらい何度も読んだものだが、いてもたってもいられない気分を紛らわす為に再確認してみた。
受験要項には、花道高校までの地図と学校までの交通アクセス、受験開始の日時と時間、受験に必要な物、適性試験教科などが書かれている。
受験開始時間は午前8時45分に始まり、国語、数学、英語の三教科のみで行われる。
公立受験が五教科なのに対して花道は社会と理科がないだけ楽である。
一教科あたり50分の解答時間で、15分の用足し時間を挟んで、次の教科の試験に移る形がとられていた。
ちょうど試験が終わるのは12時きっかりに終わるようになっている。
なんとも教職員の都合のいいように試験時間が設定されてるように思うが、昼までに受験が終わるのは僕にとっても都合がいいことである。
しかし、花道の適性試験は難しいのだろうか? 僕は受験に対する準備不足から非常に不安な気持ちにつつまれていた。
まぁ、いまさらジタバタしても仕方ないと思っていたら、なぜだか、シブガキ隊のナイナイ・セブンティーンの歌詞が頭から離れなくなってしまった。
そうして僕は、ワケの分からないシブガキ隊の歌詞が離れない状態のまま、JRを乗り換え、気がつくと花道高校の正門まで辿りついてしまっていた。
今日は止っていない腕時計を確認してみると、受験開始まで1時間も前に到着してしまっている。
それでも、僕と同じ境遇なのか受験生もチラホラと正門の中に吸い込まれていた。
正門の前でぼっと突っ立ていても仕方ないので、他の受験生達と同じように花道高校の敷地内に入っていった。
すぐに、校舎の前に職員が立っていて、私の受験票を確認すると、受験会場であるところの教室の行き方を教えてくれた。
受験番号はCー0069番であって、普段は三年生の在校生が使ってる教室が割り当てられていた。
思わず69番という番号に昨日あれほど酷使した正宗が一瞬反応してしまう。
僕は流石に、この期に及んでエッチな妄想をするわけにはいかないので、その妄想よりかはましであろう、シブガキ隊のメロディを思い浮かべることにした。
教室には、ライバルである受験生が数人着席していて、両手を枕代わりに寝ていた。
普通なら、試験開始ぎりぎりまで、参考書でおさらいするであろう光景だと思うのだが、やはり花道を受験する輩は只者ではないのである。
いびきをかいて完全に寝入っているものもいた。
僕は、こんな奴らに負けてたまるかと、持参した参考書に目を通したが、昨晩のオナニーに夢中になっていた為からくる睡眠不足で途端に眠たくなり、すぐに意識が飛んでしまった。
「おい、起きなさい」
体を激しく揺すられて、僕は教職員に起こされて目覚めた。
なんとも、やってしまった感であるが、いいように考えると、しばし眠ったおかげで脳が活性化するのではないかと自分を慰めることにした。
教職員は僕と同じように、眠ってる受験生達を起こしてまわるのに大忙しである。
その光景を垣間見てなんとも恐ろしい高校を受験したものだとしみじみ思ったのであった。
教職員は、全ての生徒の準備が整ったのを確認すると、前から順番に問題用紙を配りだしていった。
そして、問題用紙を全員に配り終わると、黒板の上にある時計を見て試験開始時間を待っていた。
ほどなくして、チャイムの音とともに「それでは、始め」と教職員の号令の下、試験が開始された。
どうか簡単な問題でありますようにと神様にお願いして、裏返してある問題用紙をひっくり返して試験に挑んだのであった。
不安と緊張に包まれながら、適性試験第一科目国語の問題にとりかかった。
詩織とのラブホテル…… いや人生がかかってる大切なテストなので鉛筆を握る手が汗ばんでくる。
手に汗握るとはこのような事だと私は実感した。
まずは、誰でも出来る答案用紙に名前を書く作業をして、国語のテスト特有の現代文章を易しい問題であってくれと念じながら読み進めていく。
文章を最後まで読んだ時点で、僕は自身の目を疑った。
そして、体の内から笑いがこみあげてきたのだった。
なぜなら、問題がむちゃくちゃ簡単だったからだ。
簡単というより、なめてるのじゃないかというぐらいのレベルである。
しかも、問題は全て三択の選択式であってして、ほとんど答えが書いてあるといっていいほどのものであった。
あまりに易しすぎる問題なので、ひっかけじゃないかと思ったぐらいである。
しかし、何度、問題を読み返してみても、やはり結果は同じで簡単なのだ。
初めて答案用紙に答えを書き込む鉛筆の音がうるさいと思うほどスラスラと答えが出てくるのである。
テスト開始して20分ほどで問題の半分以上が解き終わっていた。
そして、最後の問題である古文もどきを解き終わった時には、テスト終了時間まで15分以上の余裕をもってフィニッシュを向えたのである。
時間があるので、もう一度解答を見直したが、それでもまだ5分以上は時間にゆとりがあったのであった。
僕の頭の中では、すでに国語はもらったという気持ちが蔓延していて、脳内では、詩織と一緒にエンペラーの入り口に立ってる姿が思い浮かんでいたのであった。
「それでは、やめなさい」教職員のテスト終了の掛け声とともに、国語の適性試験が終わった。わからない問題も若干あったが、それでも八割以上は正解してると自負していた。
正に花道バンザイである。
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