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ご褒美の為に
しおりを挟む「がんばるので……どうするの? 男だったら最後まで言いなさいよね!」
こういう時の詩織は滅法強い気がする。
「だから、もし合格できたら……また、エンペラー一緒に行きたいなぁって思ったりなんかして……」
「……」
詩織は、僕の言ったことに呆れているのか、しばらく返事はない。
「なぁ、ダメかな詩織?」
詩織のだんまりに耐えられなくて思わず聞いてしまう。
ここらへんは、分身の正宗と一緒で辛抱が足りないのである。
すると、詩織は受話器ごしで突然笑いだして言った。
「やっぱり、エッチなことじゃないの! 祐一君は自分のために勉強するんでしょう。だから、そんなこと詩織に関係ないよ。 でも、もし合格したら、いい事あるかも知れないかもね……」
なんとも、詩織の返事はあいまいであるが、言ってることは的を得てるので文句も言えない。
しかし、いい事ってのは、エンペラーに行ってくれることなのだろうか? とにかく、がんばったらご褒美はありそうだと思う。
「うん、詩織の言う通りだよ。とにかく、がんばるので合格したらエンペラーの件はよろしく!」
「そういう事は合格してから言ってよね……とりあえず考えておくから、がんばりなさいよ」
詩織の言ったことは事実上のOKサインだと受け取ったので俄然やる気が出てくるのだった。
「そいじゃ、今から勉強がんばるよ! 今度逢うのは冬休み明けだけど、その時は俺の見違えた姿に驚いてくれよな。あ、それと年賀状は出すのでよろしく」
「うん、分かった。しっかり勉強してね! そいじゃ、クッキー忘れないで食べるのよ」
詩織とそのようなやり取りをした後、電話を切った。
それから、勉強机にいくと、参考書に目を通しながら、詩織から貰ったプレゼントのラッピングをひらいた。
綺麗に包装されたラッピングをあけると、中からは小箱に入ったクッキーが現れた。
クッキーはハートの形をしていて、詩織が作ってくれただけあって実に可愛らしかった。
クッキーをつまみながら、受験勉強を本格的にスタートさせたのだった。
僕は寝食を忘れてその日以降、今までの遅れを取り戻そうと必死に勉学に勤しんだ。
そんな、姿に感銘を受けて父親は頭に巻く、鉢巻を作ってくれた。
白の鉢巻には、筆ペンで“必殺”と書かれていた。明らかに意味が違うと思ったが、僕はそんな父親の気持ちが嬉しかった。
必殺鉢巻をおでこに巻いて、ひたすら受験に出そうなところをノートに書き込む作業を幾日にも渡って繰り返して勉強した。
日々、無我夢中に時間を忘れて、私は受験勉強に明け暮れたのだった。
そんなわけで気がつけば、大晦日の日になっていたのであった。
時刻は23時過ぎであろうか、居間のテレビからは紅白が終わったあとの行く年、来る年の音声が自室に聞こえてきた。
その音を聞きながら、今年もいろいろあったと回想にふける。
やはり、僕にとって今年一番の出来事はクリスマスを詩織と一緒にエンペラーで過ごしたことではないだろうか。
詩織のエンペラーでの淫らな姿が脳裡に浮かんでくる。
僕はなんだか、体がもどかしくなってきたのだ。そこには、オナニー禁断症状に悩まされる我慢できない自分がいるのだった。
テレビからは、そんな私の淫らな煩悩を打ち消すかのように、ゴーン、ゴーンと鐘が打ち鳴らしてる音が聞こえてきていた。
そんな鐘の音に合わせながら、ゴーンの度に右手を動かすのであった。
やっぱり、ダメ人間なのかも知れないが、今日だけはいいだろう、来年からはがんばるぞ! と自分に言い訳をして、ひたすらに正宗を扱くのである。
そして、発射と同時に新年を迎えたのであった。
新年になったからといって、僕は世間の人達と同じようにのんびりと寝正月を送れるような身分ではなかった。
特に年末になってから本格的に受験勉強を始めているので、元旦であろうとも机にむかわなければいけなかった。
少しでも、他の受験生に追いつかないと、とてもじゃないが志望校である公立高校なんて、夢のまた夢ってものであってして、スベリ止めの花道ですら危ないのだ。
そのような事情なので、年があけてからも、部屋にかんずめになりながら、お節料理を食べることもままならずに勉強に勤しんだのであった。
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