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禁戒
しおりを挟む僕は受験勉強を本格的に行うのにあたって、自身に厳しい禁戒を課すことにした。
その戒めとは、最も受験勉強を邪魔すると思われる雑念、邪念の類を一切断ち切ることであるのだ。
具体的に言うと、女人禁制をすることにしたのだが、それは今まで勉強をするたびに襲ってきた性欲を断ち切ることによって、頭の中を受験モード一色にしたかった為である。
女性の事を考えないことは勿論の事、唯一の楽しみである右手の運動さえも禁止することを自らに課すことにしたのだ。
そして女人禁制と銘打ったからには、その最大の試練と思われる詩織との関係も冬休みの間だけでも断ち切らないといけないと思ったりする。
しかし、僕にとってこのような厳しい戒めは、やり遂げた際に見返りがないと、とてもじゃないがすぐに挫折して続かないような気がした。
なので、僕は自身にやり遂げた際のご褒美なるものを勝手に決めることにした。
そのご褒美とは詩織にお願いして、もし花道を合格した折には合格祝いをしてもらうってものだ。
それは、ラブホテルであるエンペラーに一緒に行き、思いっきりハメをはずして楽しむってものである。
そうして、僕はドイツの鉄血宰相ビスマルクの政策をパクってみて、題して飴と鞭作戦を敢行することにしたのだった。
思いたったら吉日とばかりに、決意をした日に都合よくかかってきた詩織からの電話で自らの意思を表明したのだった。
「へぇ、祐一君。やっとやる気になったんだぁ、いい事なんじゃないかな」
僕は、受験勉強に集中するためにも、冬休み期間は逢ったり連絡をとらないでおく事を詩織に提案した。
詩織から、「寂しいから、嫌だよ!」などと言ってくれるのではないかと、少し期待していたのだが、そのような気持ちは彼女にはないようである。
「逢えなくなって寂しくないのか?」
自分で提案しておいてバカな事を聞いていた。
ホントは自分が一番寂しいのかも知れない。
「うん。寂しくない……ってのは嘘だけど――祐一君のためだから仕方ないし……逢えないの我慢する」
その詩織の優しい気持ちに涙が出そうになってしまう。
「悪いね、詩織。ところで、昨日は大丈夫だったか?」
昨晩の詩織と別れてからの事を聞いてみた。
「うん、大丈夫ってわけでもなかったけど……それより……」
詩織は途中で言葉を詰まらせた。それよりの後が気になるが詩織は黙っている。
「門限破ったこと以外に、何かあったのか?」
僕は、詩織の家から聞こえてきた男性の怒鳴ったような声の事を思い出してしまう。
「……うん、何でもないよ。門限の事はたいして怒られなかったから心配しないでね」
「門限の事はよかったけど、何か言おうとしなかったか? 何かあるのだったら、彼氏の俺に相談しろよ」
僕は、詩織の微妙に間のある言い方から心配になって聞いていた。
「うん、ごめんね……ホントに何もないから……あ、そうそう、それより詩織の愛のこもったクッキー食べてくれたの?」
僕は、詩織の急な話の切り替えしから、何か隠してると直感したが、本人が話したくないように感じたのでこれ以上は聞かないことにした。
「クッキーは、まだ食べてないよ。だって食べてしまうのもったい無い気がするから」
「もう、祐一君のバカぁ。手作りだから、そんなに日持ちしないよ! いいから早く食べてね」
詩織は、いつものように明るい口調に戻っていた。
いつもと詩織の様子が違うように感じたのは自分の考えすぎかなと思ったので、一番伝えておきたいことを言うことにした。
「勉強がんばるにあたって、詩織にお願いがあるんだけど……」
僕は、さっきの詩織じゃないが、少し含みのある言い方をした。
「お願いって何よ! エッチな事だったらダメだからね」
詩織は、読心術でもあるのか、思惑を先読みしてくる。
「いや、その……直接的にはエッチな事じゃないんだけど……」
図星すぎて、しどろもどろになる。
「直接的じゃないけど、何なのよ」
詩織はすかさず、追い込みをかけてくる。
「うん、ほらぁ、俺、詩織に逢えないし、連絡とらないっていう試練を自分に課してるじゃないか。そこまでして、受験がんばるので……」
僕は、流石に都合のいい事を言おうとしてるのではないかと思ってしまい、また言葉がつまってしまっていた。
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