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友人はハングドマン
しおりを挟む「なんだ、雅博もエンペラーいったのか? 鉢合わせしなくてよかったなぁ」
まぁ、鉢合わせしても、それはそれで面白いとも思ったのだが、とりあえず無難にかえしておいた。
「祐一は、初めてのラブホテルで分からないと思うが、エンペラーはあの辺りでは結構いいホテルなんだぜ」
「そうなのか、確かに凄い設備っていうか、びっくりしたけどな」
「そうだろ、俺もいろいろなホテル見てきたけど、あそこは設備の割に値段が安いんだよ。酷いホテルになると、部屋にセンベイ布団が敷いてあるだけで、値段もエンペラーより高いところもあるんだ」
なるほど、雅博の話はいろいろ経験してるだけあって真実味がある。
「設備で思い出したけど、雅博達は何て部屋で休憩したんだ?」
「俺達は、ハングドマンって部屋だったよ。てか、そこしか空いてなかったからな……でも、面白い部屋で燃えたぜ」
ハングドマンって……僕は、その部屋の名前である“吊られた男”のタロットカードの絵を思い出した。
あの部屋はSM専用部屋じゃないか! しかも、燃えたってどういう意味なんだろう。まさか、蝋燭の炎で……なんて淫らなことを考えてしまった。
「ハングドマンは、アブノーマルな部屋だったぜ! 朱美を縛っていろいろしちゃった……」
いろいろしたって、僕は雅博の言ったことに大いに妄想がかきたてられてしまう。
あの清楚な朱美さんが、雅博に縛られて、一体何をされたんだろう? 朱美さんは悶絶したのだろうかと考えると、スケベな正宗が途端に反応してしまう。
「たまには、ノーマルじゃないのも、刺激があって楽しいぞ! あとエンペラーだとマジシャンって部屋も面白かったなぁ。ナースとか体操着に水着等いろいろなコスチュームが置いてあるんだ。彼女を七変化させたりなんかして楽しめこと受けあいだ。あと、シチュエーションしだいで興奮できるからお勧めかな」
僕は、雅博の話を聞いて、結構、こいつの性癖は多彩で変態ではないかと思ってしまった。
「まぁ。祐一も機会があったら試してみるといいよ」
雅博の言った機会がいつ今度訪れるのだろうか? と考えてしまうのだった。
恐らく、年が明けると、僕達は受験戦争の真っ只中に立たされてしまうだろうことが目に見えて分かっている。
クリスマスだって一緒に過ごせたのは受験生である立場だと奇跡に近いものであるのだ。
そんな訳で、これから詩織と合える機会は激減するだろうし、ましてや、デートなんかしてる余裕はないだろうと考えると、気持ちが落ち込んでしまうのだった。
「あぁ、早く受験なんて終わったらいいのになぁ」
そんなことを考えていたので、つい口から、あまり雅博と話したく言葉が飛び出してしまう。
「ほんと、そうだな。ところで、祐一は花道受験するんだろう。花道の受験日っていつなんだ?」
雅博に花道の受験日を聞かれて、ハッとしてしまった。
花道の受験日は来年の一月二十日であった。
もう、一ヶ月をきってしまっているじゃないか!
「やべぇ、受験の日、すっかり忘れてたよ。花道は来月の二十日だったわ」
「奇遇だなぁ、俺の受ける慶早も一緒の日だわ」
しかし、雅博の奴は慶早っていう超進学校を受験するのに余裕だなと思ってしまう。
あの高校を受験する奴は、今頃は寝る間を惜しんででも参考書と睨めっこしてるはずなのだ。最も、雅博のことを心配する余裕など尻に火がついてる僕が言えるようなことじゃないのだが。
「でも、俺達こんなことしていていいのだろうか?」
さっきまでラブホテル談義をしていたことが不安になって雅博に聞いていた。
「うん、確実に……俺はともかくとして、祐一はヤバイだろうな……でも、何とかなるんじゃねぇ」
雅博は、まるで他人事のようにサラリと言う。
しかも、自分は大丈夫で、私はヤバイとはっきり言っているじゃないか!
今更だが、突然に受験の事が不安になってきた。
「俺、そろそろ家に帰って勉強するわ」
「どうしたんだよ? 急に……」
雅博は、僕の気持ちなど、どこ行く風で知る由もなく軽く言ってくれる。
「いや、急に受験のことが心配になってきたんだ。帰って勉強するわ」
「そっか、まぁ、今更やったところで焼け石に水だと思うけど、祐一がんばれよ!」
雅博は冗談だか本気だかわからな言い方をすると、肩をポンと叩いてくれた。
それから、玄関まで見送ってくれると、「今日は誘って悪かったな。また明日遊ぼう」などとふざけた事を言って送り出してくれたのだった。
雅博の家に遊びに行った日を境に、僕は猛烈に受験勉強をすることを決意したのであった。
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