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サンルーム
しおりを挟むタロットカードのサンをモチーフにした太陽の部屋に入室した僕は、まず、その作りに驚かされてしまった。
それは、知ってる限りの一般のホテルと違って“それ”専用に作られていたからだ。
およそ二十畳はあるかと思われるワンルーム式の天井の高い部屋には、これ見よがしにダブルベッドが置かれていた。
しかもダブルベッドにはいろいろなスイッチがついていて、部屋の照明調節はもちろんのこと、正面にある大型テレビやビデオ、はたまた有線のBGMなんかもベッドにいながら操作できるようになっている。
全てがベッドの上で“それ”を行うのを前提に事が足りるように工夫されているのだ。
照明のスイッチなどは、6段階も客の好みに合わせて明るさを調整できるようになっていた。
僕は、早く詩織と合体したい衝動を抑えつつ、好奇心と物珍しさからベッドについてるスイッチをいろいろと押して使い勝手を試していた。
隣では、程よい硬さのベットの上で詩織がちょこんと正座して、僕のしていることを黙って見ていた。
そんな風に、スイッチと戯れていた時に、ある見慣れないボタンを発見したのであった。
そのボタンは赤い色をしていて押すと危険な感じがするものである。
でも、よく見ると、ボタンが赤いのはこの部屋のモチーフである太陽の形であったことから、この部屋特有の仕掛けだと僕はピンときた。
これは、好奇心旺盛な私にとっては押すしかないものである。だから、私は躊躇せずにボタンを押してみた。
すると、ボタンを押した瞬間に部屋の照明が全部暗くなり、天井からまばゆい七色の光を発したシャンデリアが回転しながら舞い降りてきたのだ。
例えるなら、未知との遭遇の円盤みたいである。
その天井から降りてきた物体に同調するかのように、「ウィーン」とモーターの唸るような音がしてベッドが回転木馬のようにゆっくりと360度に回転を始めたのであった。
これには、さすがに無言の詩織もびっくりしたようで「わぁ、凄い」と苦笑いをしながら感嘆の声をあげるほどである。
僕も、この行き過ぎたサービスなるものに度肝を抜かれてしまっていた。
ただ、何故ゆえにドリフのコントみたいに回転しないといけないのかと些かの疑問と間抜けさを感じずにはいられなかったのも付け加えておくことにする。
それでも、このラブホテルならではの過剰なサービスに嬉しくなり、「アステカ文明バンザイ」と叫んで子供のようにはしゃぐと、回転ベッドの上で飛び跳ねていた。
詩織も、そんなバカな僕を見て大笑いしてくれている。
「ねぇ、祐一君。嬉しいのは分かったから止めてよ! お腹痛いよ」
どうやら、詩織の緊張した様子もこの間抜けな回転ベッドのおかげでほぐれたようであった。
「あぁ、面白かった」と私は詩織に言って、ボタンを押すと回転を止めた。
僕は更に詩織をリラックスさせるために有線のBGMを流すことにした。
有線からは、私が期待するようなムードのある音楽などは流されてなく、なぜか「悪魔の心、身につけた」などと、ムードもへったくれもないアニメのテーマソングが聞こえてきていた。でも、アニメの歌詞はこれから理性をなくすであろう展開を想像する私には、うってつけのような感じがしないでもない。
僕は、武者震いのためか震える手で照明のスイッチを押すと、部屋の明るさを薄暗くなるように調整した。
それから、僕は抑え切れない性欲によって理性のバリアを破ると、さきほどのアニメソングの歌詞ではないが悪魔に魂を性欲と引き換えに安く売りとばしたのだった。
そして、野生の動物になると、正座してる詩織の後ろから背中に抱きついたのである。
「ちょっと待ってぇ、シャワーあびさせて……」
その詩織のもっともな訴えによって、僕の簡単に破れるバリアは復元し、悪魔から魂を買い戻した。
元々、二束三文の魂などで売るのも簡単だが、買い戻すのはそれ以上に容易いってもんである。
僕は安い理性を取り戻したのだが、せっかくのいいタイミングっだったのにと、すぐに性欲の悪魔にとりつかれそうな気持ちになってしまうのである。しかし……焦ってはいけないのだ。
シャワーぐらいあびる猶予を与えないと男がすたるってものである。性欲を心の片隅においやると、そのように考えて心をなだめるのだった。
「あ、ごめんよ。俺も汗臭いかも知れないから、詩織の後に入るよ」
「うん、ごめんね祐一君。ちょっと体だけ洗ってくる」
詩織が、そう言って立ちあがった時に僕は閃いたのであった。
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