【完結】【やりちん】僕の青春グラフィティ。ノスタルジーな昭和チェリーボーイの卒業物語

カトラス

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「どうしよう? 雅博、門限21時だと言ってるよ!」

 僕は、ジョボジョボと本当に用を足しながら雅博に聞いた。

 隣で雅博も勢いよく尿を出しながら言う。

「どうしようも、こうしようもないだろう。お前のやる事は一つ、門限なんて気にせずにプレゼントを買ったらムードを作ってラブホに行くだけだよ!」

 雅博はそう軽く言ってのける。

「でも……やばくないか?」

「何がやばいんだよ。多少のリスクを犯さないとHなんて出来ないよ! いいかぁ、門限なんてあってないもんだ。時には強引さも必要なんだぞ。それこそ、拝んでもいいから、ホテルに連れ込め」

 さすが、持つべきものは友である。
 雅博は私に勇気を与えてくれる存在である。

「それとな、ラブホのことなんだけど、エンペラーは22時から宿泊料金になるんだ。だから21時ごろにホテルに入室しろよな。でないと、万札が休憩だけなのに吹っ飛んでしまうぞ! たぶんクリスマスなので宿泊料金待ちの客が22時まではホテルに入ろうとしないので21時あたりが狙い目なんだ。覚えとけよ」

 その事を聞いて、雅博はつくづくいい奴だと思った。


「雅博、プレゼントってどうしたらいい?」

 僕は、ついでに聞いておくことにした。

「ばかぁ、そんなもん自分で考えてくれよ。でも、そんなに高いものでなくてもいいんだ。用はお前の気持ちなんだよ。買うところはエンペラーの近くがいいんで、丸井堂あたりで買ったらどうだ」

 

 雅博の言った丸井堂ってのは、女の子にはとっては人気の雑貨店である。

 リーズナブルな価格でちょっとしたアクセサリーなんかも売っていてプレゼントを買うのには最適な場所だと思われた。


「そっかぁ、丸井堂ならいいなぁ。雅博ありがとな」


「おう、とにかくがんばれ、健闘をラブホで祈ってるよ」

 
 どうやら、この後に雅博もラブホに朱美さんとしけこむつもりらしい。

「じゃ、そろそろお互いのお姫様のところに戻るとするか」

 雅博はそう言って、ぶるんぶるんと私の正宗にもひけをとらないものを振って尿をきると、手を洗いに行った。

 僕も負け時と正宗を振った。

 正宗の状態はいつでも臨戦態勢OKで元気な顔を私に見せてくれていた。

  

 僕と雅博は揃って、姫達の待つテーブルに戻ってきた。


「ほんとに仲がいいのね」

 朱美さんが棘のあるいい方をして迎えてくれた。


「女同士だってよく一緒にトイレいくだろ。それと同じだよ」

 
 すかさず、雅博も応酬する。

「で……これから、どうするのか決めたのかしらお二人さん……」

 雅博の負けであった。

 朱美さんは、僕達がトイレに行った目的を図星で言い当てる。

 さすがに女の子っていうか女性は鋭いと思い知らされる。男なんて所詮は女性からしたら、観音様の手のひらでもがく、手のひらの孫悟空状態なのかも知れない。

 ほどなくして私達は楽しく食事したリプトンから退店した。

 店の外は、食事タイムの事もあり長蛇の列が出来ていた。僕達は食事の時間が比較的早かったので難を逃れたことを窺いしれるものであった。


「それじゃ、今日はホントに楽しかったです」


「うん、また一緒にでかけましょうよ」

 
 詩織と朱美さんが別れの挨拶を店の外でしていた。


「祐一、まじでがんばれよな!」

 雅博は私の肩をポンと叩いて励ましの言葉をくれる。

「じゃ、またな」

 僕と詩織は手を振って雅博達が繁華街に姿が消えるまで見送った。

 雅博との別れは、メンズボーイのおっさんに代わる指南役を失ったことになるのだが、しかし、いつまでもおっさんや雅博に頼ってるわけにはいかないのである。

 僕は街のネオンで明るくなってる曇り空を一瞬見上げて思った。



「雅博君達って、ほんといい人で楽しかったな。それに、朱美さんって物凄く綺麗で大人だったね」

「うん、雅博にはもったいない人だよね」

「そっかなぁ? 美男美女でお似合いのカップルだと思ったよ」

 確かに、詩織の言うように雅博達はお似合いのカップルだと思った。



「それじゃ、俺たちも行こうか」

 僕はさきほど、雅博からレクチャーしてもらったことを行動することにした。そう勝負に出るのだ。

「そろそろ、帰るの?」

 詩織はどうやら僕が帰るものだと勘違いしてるみたいである。


「詩織まだ時間大丈夫だろ?」


「うん。もうちょっとなら大丈夫だよ」

 詩織の「もうちょっとだけ」と言う返事を聞いて僕に残された時間は少ないと感じてしまう。

 
「今から、丸井堂に行こうよ!」

「祐一君が丸井堂って……あそこ女の子ばっかだよ」

「うん、分かってるよ! だから行くんだ丸井堂に……詩織にクリスマスプレゼントしてないから、何か買ってあげるよ」

 
 詩織は言ったことを予想していなかったのか、大きな瞳を二、三回瞬いた。


「祐一君、ほんとにいいの? 詩織むちゃくちゃ嬉しいよ!」


「うん、こんな時でないと、いつも世話になってる詩織に何か買ってあげられないから……」

 僕は、自分の言った台詞に少し酔っていた。
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