【完結】【やりちん】僕の青春グラフィティ。ノスタルジーな昭和チェリーボーイの卒業物語

カトラス

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マイケル・J・セックス?

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「そうだな、映画の前売りを買いにいってから見にいこう。まだ、何の映画が上映しているかわからないし、前売りを買うときに見たい映画をみんなで決めようぜ」

 雅博はやっぱり頭がいいなと思った。

 それは、繁華街には映画専用のチケット売り場があって、そこで買うほうが映画館で当日券を買うよりは、片道のバス料金を払う分ぐらいお得なのである。



「それが、いいよな」有無もなしに雅博に同意する。

 隣からは、何の話をしているのかは分からないが楽しそうな声がしていた。

 

 ほどなくして、バスは目的地の繁華街に到着した。

 いつのまにか車内は僕達のように繁華街に行く人達で満員に近い状態になっている。

 車内の客がさばけるのを少し待ってから一番最後にバス代を払ってから降りた。

 バスから降りると、街は寒さを吹き飛ばすように活気に満ち溢れていて、目抜き通りの脇の歩道はクリスマスを街で過ごす人達でごったがえしていた。

 にょきにょきとそびえ建つ大小のビルの一階部分はほとんどがテナント店舗になっていて、どこの店もクリスマスらしいデコレーションがされていて目を楽しませてくれた。

 僕達は、人ごみではぐれてしまわないように、各々のカップル同士でしっかりと手をつなぎ、街の装飾を楽しみながら、映画チケット前売り所にむかった。

 僕は店先に立つ、ミニスカートのサンタクロースのコスチュームを着た女性店員に心を奪われそうになってしまう。

 思わず立ち止まりそうになる体を詩織によって強く握られた手で引っ張られながら人ごみの中を進んだ。
 行き交うカップルや家族連れなどの人達は、どの顔も幸せそうに見える。

 はたから見たら僕もきっと同じような顔をしているのだろうと、詩織と一緒にいられるクリスマスに感謝した。



 人ごみをぬって、映画の前売り販売所についた僕達は前売り券を求める渋滞の列に並びながら、どの映画を見るのか相談した。その中でも、面白そうな映画三本に意見がわかれた。

 僕達の候補にあがった映画は、偶然見つけた宝の地図を子供達で冒険して探しに行くという内容のグーニーズっていう映画と、バカ三人組みがオバケ退治をする会社を設立してニューヨークに現れたマシュマロマンなるオバケを退治するゴーストバスターズ。

 そして、最後の一本が自動車型のタイムマシーンによって、テロリストによって殺されてしまった博士を救い出す、ドタバタラブコメディーのバック・トウ・ザ・フューチャーであった。どの映画も久々に映画を見る僕にとっては楽しみなものであったが、グーニーズは雅博がガキっぽいという理由でそっこう却下してしまった。

 残る映画は二本に絞られた。

 詩織は、チラシに描かれているマシュマロマンなるものがカワイイという理由で気にいったらしく、ゴーストバスターズを推してくる。

 雅博は主演のマイケル・Jフォックスを海外ドラマでファンになったらしく、バック・トウ・ザ・フューチャーが見たいと言っている。

 朱美さんは、グーニーズが見たかったみたいなのだが、雅博に却下されて下を向いていた。

「祐一君は何が見たいの?」と詩織が聞いてきた。

 その時、雅博が耳元で小声で囁いた。

「ラブホテルはバック・トウ・ザ・フューチャーの映画館の方向にあるんだ。そっちに行かないと場所教えるチャンスなくなるかも……」

 それを聞いた僕の答えは決まっていた。

「俺も、マイケル・Jセックスのファンなんだ!」

 すかさず、雅博のつっこみが入る。

「ばかぁ、セックスじゃなくてフォックスだよ」

 それを聞いて、下を向いていた朱美さんがクスっと笑った。


「いやだぁ、祐一君エッチ」


「ごめん、ごめん冗談だよ」

 僕はこれから詩織と行うであろうことを先走って知らぬうちに間違ってしまったのだけど、わざと間違ったように誤魔化した。

「そいじゃ、詩織ちゃんには悪いけど、バック・トウ・ザ・フューチャーで決定だな! それに、あれを見てみろよ」

 そう言って、雅博はチケット売り場の電光掲示板を指差した。

 

 電光掲示板の映画名が書かれているところには、“ゴーストバスターズ立ち見”と表示されていた。

 それを見て、詩織も文句なくゴーストバスターズを諦めてしまった。

「やっぱり、詩織の見たいのって超人気なんだ。でも、立ってまで見る気ないから、お二人さんの見たい映画でいいよね。朱美さん」

 詩織は朱美さんのことも気づかって聞いた。

「うん、それでいいよ。面白そうだし」

 そうして、バック・トウ・ザ・フューチャーのチケットを買って、映画館に向かった。

 僕達は人ごみを抜けて、映画館を目指した。

 途中に先頭を歩く雅博が人ごみを避けるように脇道に入っていく。
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