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朱美さん
しおりを挟む詩織と一緒にバスの時刻表を確認してみた。
父親から勝手に拝借した腕時計で時間を確認して見ると、時計の針は止っていた。
どうやら、電池が切れているのを確認せずに拝借して腕につけていたようである。
「祐一君、今何時?」
僕は止ってる針をニラメッコして、「二時前だよ」と勘で言った。
詩織はバスの時刻表を再度見て、「じゃ、後10分ほどでバス来るね」と言った。
「まぁ、バスの到着なんか、あくまで目安だから……」
腕時計の不始末を誤魔化す為に言い訳をする。
「え!? そうなの? じゃ時刻表って意味ないね!」
詩織の奴は痛いところを即座についてくる。
そういったところが詩織に対して好きなところでもあるのだがMな性質があるのかも知れない。
「もう、そろそろ雅博達くるはずなんだけどなぁ」
そう言って道路の路肩を眺めた。
遠くで、手を繋いで歩いてくる見慣れた顔が現れた。
雅博達である。
二時前と適当に詩織に言ったことは案外当たっていたのかもと僕は思った。
「雅博達、来たみたいだよ!」
僕は、だんだんと姿がはっきりしてきた雅博達を指差して詩織に言った。
「あ、ほんとだ」
詩織は、近寄ってくる雅博達に向かって右手で手を振った。
ここらへんが、詩織の社交的な部分であってしてチャーミングである。
そうして、数分後に僕達は雅博達カップルと合流したのであった。
まさに、雅博達カップルは絵にかいたような美男美女であった。
初めて見る雅博の彼女は背がすらっと高くて、スレンダーな体型をしている。
服装は、白のワンピースにコートを羽織っていて大人な雰囲気がプンプンと匂いたつ。
スレンダーな体型からは想像も出来ないくらいに出るところは出ていて雅博の彼女なのにそそられてしまう。
僕達よりも二つ歳が違うだけで、こうも大人な女性の感じがするのかと驚いてしまった。
雅博の方も、デニムのジーンズが体にピッタリとフィットしていて、元々長い足が更に長く見える。上着はジーンズに合うように革ジャンを着ていて、黒のタートルネックの首元にはアクセサリーが輝いていた。
「ごめん。待った?」
雅博は申し訳なさそうに詩織に聞いた。
「ううん。私達も今きたとこ」
詩織は雅博のいでたちに目を奪われているように見える。
「そっか、だったらよかった」
雅博は白い歯を覗かせて笑顔である。
「あ、紹介するよ。このポカンと口を開けてるのが祐一で、その隣にいるのが彼女の詩織ちゃん。そして、俺の隣にいるのが彼女の朱美」
普段はクールで無口な雅博が饒舌に自己紹介を始めだしたので僕は驚いてしまった。
でも、雅博だけが全員と面識があるので当然といえば当然のなりゆきでもある。
僕は、朱美さんに「はじめまして」とだけ言って会釈した。
朱美さんも、挨拶すると「こんにちわ、よろしく」と言って笑みを浮かべた。
すぐに、横にいる詩織が「朱美さんってむちゃくちゃ綺麗な人だね」と小声で耳打ちしてきた。
僕は、詩織と同意見なので「うんうん」と大袈裟に頭を振った。
すると、詩織は「バカ」と言って、わき腹を軽くつねった。全く乙女心ってのは難しいものである。
四人がそれぞれの想いを胸に自己紹介もどきをしているとバスがやってきた。
僕達は詩織を先頭にバスに乗り込むと、ちょうど都合よく空いていた最後部座席に腰をおろした。
バスは座席に座ったのを確認したかのように目的地に向かって走りだした。
バスが動き出すと、すぐに詩織は、さきほど知り合ったばかりの朱美さんに話かけていた。
流石に詩織は人見知りなどせずに、すぐに誰とでもうちとけられる性格の持ち主である。
詩織は、朱美さんの着ているワンピースの事を聞いたり、雅博と付き合ってどれくらいとか自身の興味の赴くままに質問攻めをしている。
その様子を見ていた雅博がぼそりと安心したかのように「女同士仲いいな」と呟いた。雅博の言うようにバスが走り出して10分も経たないうちに車内は朱美さんと詩織の楽しそうな笑い声が満ち溢れていた。
「着いたら、映画館に向かうだろ?」
僕は雅博に確認するかのように聞いた。
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