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ちらつく父の影
しおりを挟む案の定、三者面談の帰り道に母親は私に対して、酷く憤慨していた。
「祐一、どういうことよ! お母さんわね、あなたの成績があんなに悪くなっているなんて思わなかったわ」
もはや、母親には得意のおべっかいは通用しないぐらいお怒りであった。
「花道だけは、絶対に行ったらダメよ。お父さんみたいに、祐一もなりたくないでしょう!」
実は、僕の父親は花道出身者である。
うだつの上がらぬ万年平社員であってして、そのために家計は常にぎりぎりで、いつも母親はため息をよくついているのだった。
「お父さんは、いい人だけど、嫌でしょう? 会社で一回りも年齢の違う後輩にさんづけで頭下げるってことは……」
母親は確信をついてくるような事を言ってくる。なるほど、確かに分かりやすい例えである。
僕は自らの失態であるからして、ひたすら母親に言い訳と謝りを入れるしかこの場をおさめる術がなかった。
「この前のテストの時は体調が悪かったんだ。今日からがんばるよ!」
「ほんとに、がんばらないとお父さんみたいに寝言でチェストとか訳のわからない格闘技バカになってしまうわよ」
父親は花道での学生生活ですっかり格闘技に目覚めてしまっていて、暇さえあると、プロレスとか空手のビデオばかり見ている人だった。
心の師匠は極真空手の大山倍達氏だと僕に公言するくらい気合の入った正真正銘の格闘技バカなのだ。
「俺も花道だけは絶対に行きたくないから……がんばるから安心してよ」
母親は僕が真剣な顔でそう言ったので、ようやく怒りはおさまったようであった。
「ホントに祐一がんばらないといけないわよ」
最後にそれだけ言うとそれ以上は受験のことには触れなかった。
帰宅すると、さすがに自身も花道だけには行きたくなかったので、受験の参考書を開けて勉強をした。
しかし、元々勉強が好きな方ではないので、一時間もしないうちに参考書閉じてしまってい、受験のストレスを発散させるかのように右手を動かすのであった。
今から思えば、ここが自分にとって最初の将来を左右する分岐点であったような気がする。
でも、その時の僕はそのような人生の分岐点であったことなんて知るはずもなく、ただ、ひたすらに詩織との妄想に明け暮れ右手を動かすのみであった。
僕の心は、三者面談が終わった後は多少のへこみはあったものの、それからすぐに冬休みに入ったこともあり解放感からブルー気持ちはすっかり影をなくしていた。どちらかというと、まもなく訪れるクリスマスに心が躍りハッピーな気分に包まれていたのだった。
それと、冬休み前に少しでも女の子にもてたい気持ちで入部したテニス部を受験を理由に退部した。
思えば、このテニス部に入ってから、先輩からオナニーなるものを教えてもらったのが、自分が本格的に性に目覚めるきっかけだったと思う。
女子テニス部の恵キャプテンにも妄想内で随分とお世話になった思い出があるだけに、部活を辞める時には感慨深い気持ちになったのであった。
詩織と付き合いだすようになってから、急に冷たい態度になり疎遠になった先輩は元気に高校生活を送っておられるのだろうか。
それに恵キャプテンはあの豊満な胸を武器にエロ学生達の目の保養に活躍されているのだろうかと頭をよぎったりするのであった。
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