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女心と秋の空
しおりを挟む詩織は「うん」とだけ言ってくれたが、声の感じからして不機嫌そうに聞こえた。
玄関からは、母親が「ただいま、誰かお客さんきてるの?」とわめいている。
「あぁ、学校の友達が来てるんだよ! 勉強教えてもらってるんだよ!」
僕は、わざと大きな声を出して返答した。
聞こえるように言わないと「何言ってるの?」と部屋に入ってこられたら事だからである。
「あら、そうなの? あとで、おやつでも持っていってあげるからしっかりがんばりなさいよ」
母親がすぐに部屋に入ってこないことを知って胸をなでおろした。
でも、油断は禁物である。
早く詩織を正常な制服を着た状態になってもらわないと気が気でないのだ。
詩織の方はというと、ようやく脱がされたパンティーをはいてるところであった。
その姿を見ながら、実に惜しい気持ちでいっぱいであり、再度自身の不幸を怨みたくなっていた。
もう少しで、念願の童貞を詩織に捧げて有頂天になれたチャンスだったと思うと悔しくて今夜は寝れそうにないような気がしたのだ。
そんなことを思っていると、耳元で詩織の嗚咽が聞こえてきた。
詩織は制服を着ながら泣いていたのだった。
「どうしたんだよ、詩織?」
僕は、何が起こったのか、わからずに詩織に聞いてみた。
「だって、だって……いきなしであんなことになって……」
泣いてる理由の全部は言わない詩織であったが、瞬時に詩織の泣いてる理由を理解して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
詩織はきっと顔面に発射してしまったことが悲しいに決まっているのだ。
「ごめんよ、俺もとっさのことで、気がつかないうちに出てしまったんだよ」
僕の発射してしまった言い訳を聞いて、また詩織は泣き出してしまった。
「違うよ、違う。そんなんで泣いてるんじゃないもん」
どうやら、詩織の泣いてる理由はほかにあるようであったが、その当時の僕は女心を知るスキルは持ち合わせていなかったので、詩織の本当の泣いてる理由を知る術は残念ながら知る由が無かったのである。
とにかく、理由はわからないけど、僕は詩織を泣かせてしまったことには変わりがなかったので、ひたすら謝った。
詩織に謝っているうちに、なんだか自分自身も悲しい気持ちになってしまい、テレビのワイドショーで人気だったロス疑惑の三浦和義みたいに号泣していたのだった。
「ごめんよ、詩織……俺が悪かった」
僕が、号泣している間に詩織は制服を着衣し終わり、おちついたのかあきれた表情で私を見ていた。
「もう、いいよ。祐一君の気持ちはわかったから、もう泣かないで!」
いつのまにか、詩織になぐさめられてる自分がいたのである。
しかし、この、男が泣くという行為は案外使えるかもしれないのかもと思ってしまった。
のちに知ることになるのだが、大の男が女性の前で恥をしのんで泣くっていうのは、ある意味母性本能をくすぐるのだ。
もちろん、当時中学生の僕がそのような母性本能云々を知るわけもないのだが、このような実体験を経験できたことは大きな収穫になったような気がするのだった。
詩織は、ポケットからハンカチを取り出すと手渡してくれた。
ハンカチで涙を拭いていると、母親が飲み物とお菓子を持って部屋に現れた。
「あれ、お友達ってガールフレンドだったの? 祐一あんたもすみにおけないね」
僕は、玄関の小さい靴を見たら、すぐにわかるだろうとつっこみを入れたくなったが、ある意味鈍感な母親に感謝した。
「あ、おばさん。こんにちわ――詩織っていいます」
詩織は、母親に軽い自己紹介をすると、頭をちょこんと下げた。詩織は非常に社交的な女の子である。
「詩織ちゃんって言うの。かわいらしいわね。祐一はバカだけど仲良くしてやってちょうだいね」
バカって言うのは余計だと思ってしまう。
「もういいだろう。あいさつは済んだし、あっち行ってくれよ」
僕は照れ臭いのと妙にニヤニヤしている母親の態度がうっとしいので台所に戻ってくれるように言った。
「はいはい、すぐに出ていきますよ! それじゃ、詩織ちゃん悪いけど、祐一に勉強教えてやってちょうだいね」
母親は、そう言うと後ろ髪をひかれるように部屋から出ていった。
「それじゃ、祐一君どうする? 続きしよっか」
さっきのHの続きを是非ともしたいところであったが、詩織の言う続きは勉強であってしてHではないのでつまらない。
僕は、もう一度、詩織にキスをしようとしたが、今度は軽くあしらわれてしまった。
女心の移り変わりは早いと昔の人はよく言ったものだと思ってしまう。
僕が発射する前までの、明らかに興奮していたと思われる詩織と違って、すっかり気持ちは平常に戻ったみたいで全く隙がない。
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