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いいものあるんだけど……
しおりを挟む学校につくと、私の頭の中は帰宅することばかり考えるカウントダウンが始まる。
詩織と付き合うようになってからというもの、元々、好きでもない学業にも身が入らないばかりか、部活も退屈に思えてくる自分がいた。
常に私の脳内を支配しているのは詩織のことばかりであった。
そういったわけで、あと何時間で授業が終わるとか、もうちょっとで部活が終わるとか、ことあるごとに時計とニラメッコしながら、学生にとっては貴重な時間を消費していたわけである。
授業中に他の同級生達が受験戦争に備えて必死にノートを取ってる中、詩織と一緒に帰ることや、妄想内で詩織を犯したりしながら昼休みまでの時間を無駄につぶしていた。
昼休みに、「あぁ、早く詩織と帰りたいなぁ」と思っていると、突然、雅博が隣の席に座ってきた。
雅博は、ニヤニヤしていてご機嫌そうである。
なんだか、また雅博の自慢話を聞かされそうで嫌な感じであった。
「よぉ、祐一。メンズボーイ買ったのかよ」
「おう、昨日、詩織と一緒に本屋に行って買ったよ。なかなか、いいこと書いてあって面白かったよ」
眼帯のおっさんのことが気にいって、昨日激しくトレーニングをしたなんて雅博に言えるはずもなく無難な答えで返した。
「そっか、そりゃよかったよ」
雅博は満足そうにそう言った。
でも、そんなことをわざわざ聞きにくるほど、お人好しの雅博でないことは、私は知っている。
早く本題を言えよと思いながら、私は雅博の顔を見た。
「ところで、祐一。今日部活休んで、俺んちに遊びにこないか? いいもん見せてやるよ!」
雅博の言ったことに耳を疑った。今まで、雅博から家に遊びにこないか? なんて誘われたことなんてなかったからだ。それと、いい物ってのが気になる。
「お前が遊びに来いって珍しいな、いいもんってなんだよ」
単刀直入に聞いて見る。
「実はなぁ、昨日、家に帰って掃除してたら、親父の部屋で凄いもの見つけたんだよ」
雅博は、よほど凄いものを見つけたらしく、口調が興奮していた。
「なに、見つけたんだよ?」
「ビデオだよ、ビ・デ・オ。しかも無修正のHビデオ」
雅博のその言葉を聞いて、私は持つべきものはいい友達だなと心底思った。
「それ、凄いのか? お前見たのか?」
僕は生唾を飲みこみながら、雅博に聞いた。
「もちろん、見たよ。まぁ、それなりに凄い代物だったよ。なにしろ無修正だからな」
雅博は嘘を言うような男ではないので頼しいお言葉であった。
「で、どうすんのよ、部活休んで家くんの?」
雅博は分かりきった答えを聞いてきた。
「お邪魔させていただきます」
考える間もなく答えていた。
「ちなみに、ビデオのタイトルは、洗濯屋ケンちゃんっていうんだ。いちおう、今、週刊誌の記事とかで有名なものらしいぜ! それじゃ、放課後一緒に帰ろう」
そう言って雅博は席を立った。
しかし、洗濯屋ケンちゃんって凄いタイトルのビデオだと思った。
テレビドラマでやってる、カレー屋チャコちゃん・ケンちゃんのパクリみたいなものだろうか。
僕の頭はまだ見ぬ、洗濯屋ケンちゃんなる無修正ビデオに、好奇心からすっかり心を奪われてしまった。
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