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ぶつぶつゴリラ
しおりを挟む部活が終わると、早速に詩織を引き連れて本屋さんに向かった。
目的はもちろん、メンズボーイを購入するためである。
本屋に行く道すがら、詩織がテニス部の先輩のことを聞いてきた。
「ねぇ、祐一君。テニス部にニキビがひどい人いるじゃない。その人ね、最近、凄く私のこと見てる気がするのだけど、なんだかキモイのよ。で、恵キャプテンに相談してみたのね。そしたら以前に恵キャプテンに告白したそうなんだって、なんだか怖くない? 恵キャプテンも以前から、ジロジロ見られていたんだって、ぶつぶつゴリラには気をつけた方がいいよって言われちゃった。もし、何かされそうになったら祐一君助けてね」
女子ってものは残酷な生き物だと、詩織の話を聞いてつくづく思ってしまった。
きっと、やらしい目で、先輩は詩織のことを見ていたのには違いないだろうが、ぶつぶつゴリラってのは酷すぎはないだろうか。
少し、先輩の事が可哀想に思ってしまった。先輩はぶつぶつゴリラでも僕にとっては性の伝道師には変わりがないからである。
「そっか、先輩は普通にいい人だよ。きっと詩織が可愛いから見てただけだろ。見てるだけじゃ罪にはならないから、先輩のこと悪く言わないでくれよ」
いろいろ教えてくれた先輩なので、悪く思われないように詩織に言った。
「はーい。ごめんなさーい」
詩織はちょっと膨れっ面になって謝った。その表情がまた可愛い。
「ところで、祐一君、本屋で何の本買うの? もしかして、やらしい本だったりして」
やらしい本は充分に間に合ってますと思わずいいそうになるのを、グッと抑えて詩織に答えた。
「あぁ、メンズボーイって雑誌だよ。雅博って、詩織は知ってるかな? まぁ、俺のダチなんだけど、そいつが秋物のいいジャケットが載っていると言っていたので無性にその雑誌が欲しくなっちゃって」
僕は半分、嘘で本当の事を言った。もちろん秋物のジャケットなんかは興味はない。
興味があるのは性のバイブル的特集記事である。
「へぇ、祐一君も雅博君もお洒落だね」
やはり、詩織は隣のクラスにも関わらず、雅博のことを知っているみたいだ。
いろいろな意味でのライバルでもある雅博が、女子達にどう思われているのか気になったので詩織に探りを入れてみることにした。
「やっぱし、詩織は雅博のこと知ってるんだ」
「うん、知ってるってほどでもないよ。話したこともないし、でも、詩織の周りの女子にはすっごく人気だよ。背がすらっと高くて、クールそうな顔がみんなかっこいいって言ってる。雅博君って京本正樹に似てないって、私達の周りでは評判なんだよ」
詩織の言ったことを聞いて、女子って本当に残酷な生き物だと再認識した。
同じ人間なのに、かたや先輩はぶつぶつゴリラで、かたや雅博は京本正樹ってあまりに違いすぎるではないか。
例えば、雅博がテニス部にいたとして、先輩と同じように恵キャプテンや詩織の事をやらしい目で見ていたとしても、きっと詩織達は「クールで素敵」って噂するのに違いないと思ってしまって不公平な気がして仕方ないのである。
二人とも、自分と同類、いやそれ以上にエロイのには違いないのに、雅博だと許される気がして、なんだか先輩のことがいたたまれないように思ってしまうのだった。
「雅博ってモテルんだね!」
私は、少し棘のある言い方をした。
「なにぃ、祐一君、雅博君に妬いてるの? 心配しなくても、祐一君モテモテだよ。だって、みんな詩織のこと羨ましいって言ってくれるもん」
その言葉を聞いて、ぶつぶつゴリラこと、先輩のことは忘れてしまった自分がいた。雅博についていた方がおいしいのだ。
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