【完結】【やりちん】僕の青春グラフィティ。ノスタルジーな昭和チェリーボーイの卒業物語

カトラス

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詩織への返事

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 元々、痒さに耐えながらも無理して学校に来て、授業を早退せずに放課後まで凌いだのも、詩織のためであるといってもよかったからだ。

 僕は定期的に襲ってくる痒さを我慢しながら、詩織の待つ校舎裏に向かった。

 
 せめて、詩織に告白の返事をしている時だけでもいいので痒さが襲ってこないことを祈るしかない。

 校舎から出ると、人目がいないのを確認してアソコを掻いておいた。

 詩織に逢う前の最後の一掻きといったところだ。

 これで、十分ぐらいは痒さが襲ってこないことを信じるしかない。

 掻きまくって痒みがおさまったのを見計らい詩織のいる校舎裏に行った。

 詩織はまだ来ていなかった。
 その隙に、またアソコをポリポリと掻いておく。

 掻きながら、詩織に何て返事しようかと考えた。

 

 でも、ここにきて、どう返事していいものかとあせってくる。


 本来なら事前に想定して返事をある程度まとめておくのが良策なのだろうが、昨晩のコンニャクオナニーのせいで、そのようなことを用意しておく余裕などなかったのだから自業自得とはいえ仕方のないことであった。

 せめて、詩織から誘導してくれるように会話をもっていってくれたら楽なのだろうけど、むこうも恐らく、緊張しているだろうし、はっきりいって期待は出来ない。

 

 こうなったら、自分の社交性を信じて、行き当たりばったりでのぞむしかないように思えたりした。

 どうせ、あれこれ問答集みたいに会話内容など想定しても、ぶっつけ本番になってうまくいった試しなどないことは、学力テストなどでいつも経験してることなので諦めもつくものだと思うことにした。

 でも、恋愛と学力テストを一緒にしていいものかはわからない。たぶん違うのだろうけど、物事はいいように考えた方が得なんだとお気楽主義の自分は思うのだった。

 

 そんな、とりとめのない事をアソコをポリポリ掻きながら考えていたら、校舎の端のかげに人の気配を感じた。



 僕は股間から、すばやく手を離した。校舎の端からこちらに向かってくるのは詩織だった。

 詩織は慌てる様子もなく、ゆっくりとこっちに向かって歩いてくる。

 陽光によって詩織のショートカットの髪の毛が茶色く変色してるように映った。


 僕は、詩織がゆっくり歩いてこちらに向かってくるのを待っているのも、なんだか偉そうな気になったので、自分も詩織の方に向かって歩きだした。

 緊張の為か、痒さは完全に忘れていた。

 

 逸る気持ちを押さえながらも、心持ち少し早歩きになりながら詩織の方に向かった。

 
 詩織も、私が早歩きしている姿に気がついたのか、少し歩幅を大きくしたように感じた。

 そんなわけで、すぐに詩織の正面に立ってしまった。

 

 詩織が不快にならない程度の位置に少し下がると、意味もなく両手を後ろにまわして手の甲を握った。


 詩織との間に、しばしの沈黙がはしった。緊張で脈が早くうっているのがわかる。

 しばしの沈黙の中、小動物を彷彿させるような詩織の愛らしい顔を見ると、告白に対する返事は失敗が許されないと強く思った。

 それは、返事の成功いかんによっては、この可愛らしい詩織に童貞を捧げることが出来る絶好の機会になるからである。

「何事も最初が肝心」と日ごろから母親が言っていたことを思い出しながら、どう、詩織に声をかけようかと思った瞬間に、詩織の口から沈黙が破られた。


「ごめーん、祐一君。待たせちゃったかな? すぐに来ようと思ってたんだけど、先生に呼び止められちゃって」



「いや、俺も今、来たところだから、ぜんぜん待ってないよ」

 

 痒みと戦い、イライラしながら待っていたなんて死んでも言えない。


「あ、そうなんだ。よかった、よかった」と詩織は甘ったるい声で言った。




「で……昨日の返事なんだけど……」

 

 詩織は顔をぽっと赤らめて黙りこんだ。

 一時の静寂が校舎裏の二人を包みこむような感じがする。



 詩織は不安な表情で私の顔を見つめていた。



「うん、俺でよかったら、付き合ってください」

 僕は、自然と口からそのような事を言っていた。



「祐一君、わたし……嬉しいよ」

 

 そう言って、詩織は急に泣き出してしまった。

 僕は、なんだか、詩織がとても大事な存在に思えてしまって、気がつくと詩織を抱きしめていた。

 

 詩織の体は小刻みに震えているのが制服ごしに伝わってきた。

「なんで、泣くんだよ」



「うん、だって、だって……祐一君に振られるんじゃないかと思ったんだもん」


「そんな、こんなにカワイイ詩織の事、ふるわけないじゃないかよ」

 

 自分で言っていて恥ずかしくなるようなことを言っていた。しかも、詩織って呼び捨てにしてるのには自分でも驚いてしまった。

「うん、祐一君……ありがとう」

 詩織のその言葉を聞いて、正直決まったと思った。

 

 そして、いい雰囲気が二人の間を包んでいるのを感じて、このまま、キスぐらいは出来るのではないかと思ったのだった。
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