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キ、キモイって……
しおりを挟む先輩は唐突に「ぶざまだろ」と言われた。
僕は意味がわからないので「はい?」と聞き返した。
「祐一は、さっきの俺の試合見てただろう。ぶざまな負け方だっただろう」
どう答えていいものかと思案したが、出来るだけ当たり障りのない返答をした。
「先輩なんだか、調子悪そうな感じがしましたよ。どこか体の調子でも悪いのですか?」
先輩はふうとため息をつかれてから話だした。
「実はなぁ、祐一。俺、女に告ってふられてしまったんだよ! そのふった女ってのが、俺達の隣のコートで練習してるあいつだ」
そう言うと先輩は、普通の人より少ししゃくれた顎で女子テニス部キャプテンこと恵さんを顎でさした。
「あいつ、俺のことキモイって言いやがったんだよ!」
キ、キモイって、私は思わず笑いそうになってしまったが、笑ったら深刻な表情で打ち明けてくれてる先輩に何をされるのか分からないので必死にこらえた。
確かに、先輩は男から見てもかっこいい感じではない。
どちらかというと、男には人気があるが、女子からしたら……なのである。
先輩の顔は思春期特有のニキビ面であってして、先輩のありあまる精力を象徴するかのように全体的に油ぎっしゅなのである。
僕は心の中で、恵キャプテンは凄いこと言うなと思ったのであった。
「しかし、とんでもない女ですね。そんな女こっちから願いさげじゃないですか」
消沈してる先輩を励ます為に適当なことを言っていた。
「まぁなぁ、俺もあの女があそこまで性悪女だと思わなかったよ。でもよ、むちゃくちゃ好きだっただけに、ショックが大きいんだよ。わかるか祐一、この俺の気持ちが」
「わかりますよ、むちゃくちゃわかりますとも」
正直よくわからなかったが、とりあえずわかったようになるのが得策ってもんだと思ったのでそう答えていた。
「ありがとうな、祐一。お前にだけは言うけどな、俺はあいつのこと想像して、よくマスかいていたんだよ。
それぐらい、あいつに熱い思いがあったんだよ」
あちゃ、先輩あんたもかよと思った。
思わず、「僕もよく恵キャプテンには右手のお供にさせていただきました」と言いそうになりかけてしまった。
その後、先輩は恵キャプテンの悪口を小一時間ほど一気にしゃべりたくして、すっきりしたのか私に礼を言ってきた。
「ありがとな、祐一。お前に打ち明けて、なんだかすっきりしたよ。お前も女にふられたり、悩みごとがあったらなんでも相談してくれよ」
先輩の言った事は、私にとってエロ本のことを聞く絶好のチャンス到来となるものであった。
今から思えば、私が思春期を過ごした昭和という時代は、エロを愛する青少年にとって苦難の時であった。 なぜなら、あの頃の青少年はおかずに欠乏していたのだった。
現在のように、インターネットや携帯端末などがない時代なのでエロ画像を入手するのが非常に困難であったからだ。
今はネットを通して卑猥な単語を検索すれば、たちどころにエロサイトに行くことが出来る。
あとは、18歳以上ですか? という年齢確認さえクリアすれば容易に無修正画像にいきあたることが出来る。
もちろん、年齢確認といっても身分証明をするわけでなく、自己申告に基ずくものであるからして簡単に未成年でもおかず画像にありつけるのが現状なのではないだろうか。
でもでも、あの時代は違った。大人と子供のエロに対する境界線がはっきりしていて、青少年からしたら、エロ本ひとつとっても、非常に敷居が高いものだったのだ。
そう、僕が中学時代に先輩にエロ本入手方法を聞かなければいけないぐらいにエロ画像は敷居が高いものであったのだ。
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