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最新話

小さなきみと

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※圭吾と零のif話です。
年齢差も適当です。
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「だいじょうぶ、あとちょっと、あとちょっと。れいちゃんはおりこうだからひとりでかえれる、だいじょうぶ」
寒い冬の日、小学1年生の零はコートの裾を、手袋をした小さな手で握りしめて歩いていた。
初めて見る雪に大はしゃぎした1年生たちは、放課後に寄り道をして雪遊びをしていた。
零も同じように、だけれど1人で、少し遠くの公園に行った。
誰も足を踏み入れていない新雪にむぎゅ、とお母さんが朝履かせてくれた長靴を押し付けては嬉しそうに足跡を眺めていたのだ。
しかし気づいた時には空はもう真っ暗で、白い雪に街灯が反射していたせいか、はたまた初めての雪に興奮して周りが見えなくなっていたせいか。
零はひとり公園にぽつんと取り残されていた。
それから家路を急いだが、雪のせいで思うように歩けない。
除雪された場所もあるが、それはそれで中途半端に残ったジェル状の雪で滑りそうになる。
誰もいない恐怖と、今にも吸い込まれそうに真っ暗な空の下、零は鼻水を垂らしながら呪文のように大丈夫、大丈夫と自分を元気づけた。
「あれ、君1人?大丈夫?」
突然後ろから、学ランを来た中学生のお兄さんに声をかけられる。
びく、として驚いた零は、何を思ったのか突然走り出した。
慣れない長靴と雪で当然のようにすってんころりん、幸い雪のクッションに助けられたが、恐怖と痛みで零はカチコチに固まってしまった。
「ごめん、怖かったね。俺はそこの中学に通ってる花嶺圭吾って言うんだ。君は?」
転んだ零を起こした圭吾は、優しい瞳で零を見る。
「たちばな…れいちゃん」
れいちゃん、れいちゃん、とお母さんに呼ばれる零は、自己紹介をする時に必ずちゃん付けをする。
ふふ、と笑った圭吾は、
「そっかあ、れいちゃんか。かわいい名前だね」
と言ってティッシュを取りだし、凍りそうになっている鼻水を拭った。
「俺そっちなんだけど、れいちゃんは?お家どの辺?」
「いっしょ…れいちゃんのおうち、ぞうさんのすべりだいがあるところのまえなの」
圭吾は一緒に帰ろうか、と言って手袋をした小さな手を握った。
圭吾は零の歩幅に合わせてゆっくり歩く。
はあはあと一生懸命歩く姿がかわいくて、丸いほっぺをつん、とつつきたくなった。
「あのね、れいちゃんのおかあさんはね、おりょうりがじょうずなの。れいちゃんもね、たまに、おてつだいするよ」
零はそう言って嬉しそうに笑う。
「そっか~、れいちゃんはいい子だね。
俺は料理全くできないんだ。全く、ってわかる?全然、できないの」
圭吾は一度包丁で指を切った経験から、一切の料理をしなくなった。
とはいえまだ中学生なので、料理が必要な機会もそうそうない。
「そうなの?でも、だいじょぶだよ!おかあさんが、いってた。おりょうりができるひととけっこんすればいいよって」
零はあまり意味を理解していないだろうが、零の母は結婚とはお互いに足りない部分を補い合って生きていく、という意味で言っている。
「そっか~、じゃあ料理上手な人と結婚できるといいな」
圭吾がそう言ったところで、前から声が聞こえてきた。
「れい!!!!れいちゃん!!!」
ふわふわとしたスカートを履いている女性は、零の母親らしい。
どれくらい探したのか、こんな真冬だと言うのに髪の毛が汗でぺったりとしている。
「あ!おかあさん!!!」
零は圭吾の手を離すと、歩きにくい長靴で一生懸命走った。
「もう!れいちゃんったらどこにいたの?!お母さんすっごい探したんだよ!!」
こんな大雪の日に、小学生になったばかりの息子が暗くなっても帰らないなんて、心配にならないはずがない。
「あのね、あのおにいちゃんがいっしょにおうちまでいってくれるってね、それでおててつないでた!」
母親の必死な態度を全く気にもとめず、零は圭吾を指さした。
「そうなの?本当にありがとう、あなたお家はどこ?送って行くよ」
零の母親は圭吾にお礼を言うと、家の場所を聞いた。
「あ、いえ。このまま塾に向かうので大丈夫です。れいちゃん、お母さんに会えて良かったね」
圭吾はしゃがんで零の頭を撫でると、にこりと笑った。
「うん!そうだ、れいちゃんがおとなになったら、けいくんとけっこんしてあげる。れいちゃん、おりょうりじょうずになるから!」
零がそう言った瞬間、零の母と圭吾は顔を見合せて笑った。
結婚して、子供まで生まれることなど露知らず。
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