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番外編、〇〇とゆい
寝つけない日
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「今日は寝れない日かな~」
眠いのにうまく寝付けない次男のりおを抱き、零は二時間ぶりにリビングに戻る。
圭吾と長男の唯が別の寝室で寝ているので、起こさないようにそっとドアを開閉し、常夜灯を一番明るい設定で点けた。
これなら明るすぎず暗すぎないので、完全に目が冴えてしまうことも、足元が見えなくて転ぶ心配もない。
今日のようにりおがなかなか寝付けない日は、ベッドで朝までゴロゴロするよりリビングで一度リフレッシュする方がいいのだ。
「ココア飲もっか」
先月3歳になったばかりのりおは、ソファーにちょこんと座って零がココアを入れるまで大人しく待っている。
ぼーっと、テレビ台に置かれたお菓子のおまけのおもちゃ達を眺め、静かに座っている。
「はい、どうぞ。何か本でも読もうか。クジラさんのがいいかな」
零はソファー前のローテーブルにコップを置き、最近りおが気に入って読んでいるクジラの絵本を持ってきた。
あまり大きな声は出せないので、小声で読み聞かせをする。
りおはココアを飲みながら、目をぱちくりさせ絵本に夢中になっていた。
───広い海に、大きなクジラが一頭、寂しく暮らしている。
昔は友達を作ろうと頑張っていたけれど、声をかける間もなくその大きな体に驚かれ、逃げられてしまうことに何度も傷ついてきたクジラ。
そんなクジラの元に、一匹の小さな魚がやってきた。
やってきたと言うより迷い込んできたのだが、なんとその魚は生まれた時から目が見えないらしいのだ。
お母さんとはぐれてしまった魚は悲しそうに、小さな体でえんえんと泣いている。
クジラが恐る恐る声をかけると、魚は嬉しそうに返事をして、誰も助けてくれなくて心細かったのだと言った。
クジラは魚がまた迷子にならないよう、大きな口の中に入れてあげることにした。
クジラの舌はふかふかで、まるでお母さんのお腹のようだと魚は言った。
クジラは魚の記憶を頼りにお母さんの居場所を探し、2人で3日も海を探し続けた。
眠る時は一緒に、クジラは魚を間違えて飲み込んでしまわないよう時々起きながら、旅をした。
そしてようやく、魚のお母さんを見つける。
しかし魚のお母さんは、クジラを見るなり他の子供たちを避難させ、あっちへ行け、あっちへ行けと叫ぶ。
悲しくなったクジラは、ぴゅ、と口から魚を吐き出し、再び暗い暗い海の中へ消えていったのだった。
「はい、おしまい」
読み終えると、りおはコップをテーブルに置き、手をぱちぱちと叩いた。
零にとっては悲しいお話だけれど、りおにとっては違うのだろうか。
クジラの唯一の友達と言える魚は目の見えない魚で、クジラの大きな体を見たわけではない。
クジラにとってそれは、いいことだったのだろうか。
姿を見た上で友達になったわけではないと、心のどこかで寂しく思っているのだろうか。
真相はわからないけれど、りおはクジラの泣いている絵を一生懸命、小さな手で撫でている。
零はこのクジラに、りおがいるから大丈夫だよと教えてあげたい。
絵本を読んでココアを飲んで、眠くなったりおにうがいをさせ、2人でもう一度寝室に戻った。
今度は3分も経たないうちにすっと眠りにつき、すうすうとかわいい寝息を立てている。
今頃夢の中で、ひとりぼっちのクジラと遊んでいるだろうか。
零は少し汗ばんだりおの頭を、愛おしそうに撫でていた。
眠いのにうまく寝付けない次男のりおを抱き、零は二時間ぶりにリビングに戻る。
圭吾と長男の唯が別の寝室で寝ているので、起こさないようにそっとドアを開閉し、常夜灯を一番明るい設定で点けた。
これなら明るすぎず暗すぎないので、完全に目が冴えてしまうことも、足元が見えなくて転ぶ心配もない。
今日のようにりおがなかなか寝付けない日は、ベッドで朝までゴロゴロするよりリビングで一度リフレッシュする方がいいのだ。
「ココア飲もっか」
先月3歳になったばかりのりおは、ソファーにちょこんと座って零がココアを入れるまで大人しく待っている。
ぼーっと、テレビ台に置かれたお菓子のおまけのおもちゃ達を眺め、静かに座っている。
「はい、どうぞ。何か本でも読もうか。クジラさんのがいいかな」
零はソファー前のローテーブルにコップを置き、最近りおが気に入って読んでいるクジラの絵本を持ってきた。
あまり大きな声は出せないので、小声で読み聞かせをする。
りおはココアを飲みながら、目をぱちくりさせ絵本に夢中になっていた。
───広い海に、大きなクジラが一頭、寂しく暮らしている。
昔は友達を作ろうと頑張っていたけれど、声をかける間もなくその大きな体に驚かれ、逃げられてしまうことに何度も傷ついてきたクジラ。
そんなクジラの元に、一匹の小さな魚がやってきた。
やってきたと言うより迷い込んできたのだが、なんとその魚は生まれた時から目が見えないらしいのだ。
お母さんとはぐれてしまった魚は悲しそうに、小さな体でえんえんと泣いている。
クジラが恐る恐る声をかけると、魚は嬉しそうに返事をして、誰も助けてくれなくて心細かったのだと言った。
クジラは魚がまた迷子にならないよう、大きな口の中に入れてあげることにした。
クジラの舌はふかふかで、まるでお母さんのお腹のようだと魚は言った。
クジラは魚の記憶を頼りにお母さんの居場所を探し、2人で3日も海を探し続けた。
眠る時は一緒に、クジラは魚を間違えて飲み込んでしまわないよう時々起きながら、旅をした。
そしてようやく、魚のお母さんを見つける。
しかし魚のお母さんは、クジラを見るなり他の子供たちを避難させ、あっちへ行け、あっちへ行けと叫ぶ。
悲しくなったクジラは、ぴゅ、と口から魚を吐き出し、再び暗い暗い海の中へ消えていったのだった。
「はい、おしまい」
読み終えると、りおはコップをテーブルに置き、手をぱちぱちと叩いた。
零にとっては悲しいお話だけれど、りおにとっては違うのだろうか。
クジラの唯一の友達と言える魚は目の見えない魚で、クジラの大きな体を見たわけではない。
クジラにとってそれは、いいことだったのだろうか。
姿を見た上で友達になったわけではないと、心のどこかで寂しく思っているのだろうか。
真相はわからないけれど、りおはクジラの泣いている絵を一生懸命、小さな手で撫でている。
零はこのクジラに、りおがいるから大丈夫だよと教えてあげたい。
絵本を読んでココアを飲んで、眠くなったりおにうがいをさせ、2人でもう一度寝室に戻った。
今度は3分も経たないうちにすっと眠りにつき、すうすうとかわいい寝息を立てている。
今頃夢の中で、ひとりぼっちのクジラと遊んでいるだろうか。
零は少し汗ばんだりおの頭を、愛おしそうに撫でていた。
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