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番外編、圭吾と零
夏の暑い日 学生if
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※中学生ifのため、零が圭吾にタメ口です。
また、2人は幼馴染兼カップルという設定です。
______________
「あづ~い…」
パタパタと町内のお楽しみ会でもらった幼稚園児の手作り団扇と、十数年もののガタガタとぬるい風が吹く扇風機の二刀流で汗を乾かす。
零はTシャツに半ズボンで、母方の祖母宅の縁側で伸びていた。
ジー、ジー、やらミーンミンやら、暑さをより際立たせる蝉の声。
直射日光ではないものの、空気全体がムシムシと暑い。
麦茶を何度もおかわりし、とめどなく出る汗に鬱陶しさを感じながら夏休みを過ごしていた。
「れーいーーーー」
と、玄関の方から聞き覚えのある声がする。
跳ねる心を押さえ、声のする方へ向かう。
ガラガラ、と鍵のかかっていない引き戸を開けると、やはりそこには圭吾がいた。
「けーくん!どうしたの?」
これまたTシャツに半ズボン、足元はサンダルという夏仕様の格好をした圭吾は、手になにやら大きなスイカを持っている。
「じーちゃんが、お前んちにやれって」
圭吾の祖父母は農家を営んでおり、そこで採れた野菜や果物をおすそ分けに来てくれることがある。
「わ~!おっきなスイカ、ありがとうって伝えてね」
さあさあ、と家に入れ、氷たっぷりの麦茶を出す。
コップから水滴がぽたぽたと床に落ちた。
圭吾はありがとうと言って受け取ると、氷が溶けないうちにその場でゴクゴクと飲み干した。
もう少し飲みたいかなと、零は2杯目を注ぎ足す。
「スイカ、今食べる?それとも冷やしてから?」
圭吾はきっと夕方まで帰らないだろうから、食べるのはあとでもいい。
零が聞くと、圭吾はスイカを抱えて零の手を引いた。
何も言わないので、きっとまた面白いことを思いついたのだろうとワクワクする。
圭吾はお風呂場まで行くと、さっそく服を脱いで零にもそうするよう促した。
決して広くはない湯船は、2人が小さい頃よく一緒に入った場所だ。
「もしかして、プール?」
大正解。
スイカを冷やしながら水風呂で涼む作戦だ。
圭吾は勝手知ったる家、という感じで、さっさと湯船に水を張った。
と言っても水が溜まるまで、2人は湯船の中で水シャワーを浴びていた。
「すずしい~」
2人の真ん中にスイカを浮かべると、ぷかぷかと気持ちよさそうに漂っている。
腰の半分くらいまで水を貯めると、圭吾がシャワーを止めた。
「零、課題終わった?」
プールと言ってもただの水風呂。
2人は14歳と15歳で、お風呂用おもちゃを持っているような歳でもない。
ここですることと言えば、学校の話くらいだ。
「半分くらい。計画表通りにやってるよ」
零は夏休み前に配られる課題計画表に書いた通り、1日3ページずつくらいで順調に進めている。
零は一気に詰め込むより、こうしてコツコツと進めていくのが好きなタイプだ。
「けーくんは、もう終わったんでしょ?」
零が聞くと、圭吾はもちろんと言った。
「今年は受験もあるし、そっちの勉強を進めないとだからな」
2人の家はマンションで、ここから自転車で30分、電車で一駅のところにある。
2人の母と父同士も幼馴染で、2人が2歳と3歳の頃に新しく建った同じマンションに引っ越したのだ。
幼稚園も小学校も、今通ってる中学校も同じ。
高校は少ないので、良いところに行きたいなら本気で勉強をしないといけないことを、零も知っている。
「凄いね、けーくん。塾も忙しいって聞いた」
圭吾の母と零の母が話しているのを、零は聞いていた。
塾内テストの順位も、毎回トップだと。
圭吾は週三で塾に通っており、行かない日も勉強が忙しいからとあまり遊べなくなった。
寂しいけど、第一志望の高校に行けなかったら遠くの高校に通うことになる。
近所の高校でレベルを下げるとなると、授業内容によって大学のレベルまで下がってしまうのだ。
「忙しいけど、楽しいよ。昨日模試の結果が帰ってきて、結構いいとこまで行ってるんだ。
今日はそれのご褒美」
少し拗ねたように俯く零の頭に、圭吾がキスをした。
「ご褒美って、僕が?」
他の同級生と遊ぶとか、どこかへでかけるとか、そんなことより?僕と一緒にいることを選んでくれたんだ!
「けーくん、すき」
零は顔を上げ、唇にお返しをした。
2人は去年の花火大会の日から付き合っていて、もうすぐ1年。
今年は行けるかわからないけど、うれしい。
うれしい気持ちは、あの時と同じままだ。
「俺も零がすきだよ。そろそろ出よっか」
圭吾はざぶんと音を立て、スイカ入りの水風呂から出た。
「スイカ、冷えてるね」
先に上がった圭吾がスイカを抱え、台所へ向かった。
また、2人は幼馴染兼カップルという設定です。
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「あづ~い…」
パタパタと町内のお楽しみ会でもらった幼稚園児の手作り団扇と、十数年もののガタガタとぬるい風が吹く扇風機の二刀流で汗を乾かす。
零はTシャツに半ズボンで、母方の祖母宅の縁側で伸びていた。
ジー、ジー、やらミーンミンやら、暑さをより際立たせる蝉の声。
直射日光ではないものの、空気全体がムシムシと暑い。
麦茶を何度もおかわりし、とめどなく出る汗に鬱陶しさを感じながら夏休みを過ごしていた。
「れーいーーーー」
と、玄関の方から聞き覚えのある声がする。
跳ねる心を押さえ、声のする方へ向かう。
ガラガラ、と鍵のかかっていない引き戸を開けると、やはりそこには圭吾がいた。
「けーくん!どうしたの?」
これまたTシャツに半ズボン、足元はサンダルという夏仕様の格好をした圭吾は、手になにやら大きなスイカを持っている。
「じーちゃんが、お前んちにやれって」
圭吾の祖父母は農家を営んでおり、そこで採れた野菜や果物をおすそ分けに来てくれることがある。
「わ~!おっきなスイカ、ありがとうって伝えてね」
さあさあ、と家に入れ、氷たっぷりの麦茶を出す。
コップから水滴がぽたぽたと床に落ちた。
圭吾はありがとうと言って受け取ると、氷が溶けないうちにその場でゴクゴクと飲み干した。
もう少し飲みたいかなと、零は2杯目を注ぎ足す。
「スイカ、今食べる?それとも冷やしてから?」
圭吾はきっと夕方まで帰らないだろうから、食べるのはあとでもいい。
零が聞くと、圭吾はスイカを抱えて零の手を引いた。
何も言わないので、きっとまた面白いことを思いついたのだろうとワクワクする。
圭吾はお風呂場まで行くと、さっそく服を脱いで零にもそうするよう促した。
決して広くはない湯船は、2人が小さい頃よく一緒に入った場所だ。
「もしかして、プール?」
大正解。
スイカを冷やしながら水風呂で涼む作戦だ。
圭吾は勝手知ったる家、という感じで、さっさと湯船に水を張った。
と言っても水が溜まるまで、2人は湯船の中で水シャワーを浴びていた。
「すずしい~」
2人の真ん中にスイカを浮かべると、ぷかぷかと気持ちよさそうに漂っている。
腰の半分くらいまで水を貯めると、圭吾がシャワーを止めた。
「零、課題終わった?」
プールと言ってもただの水風呂。
2人は14歳と15歳で、お風呂用おもちゃを持っているような歳でもない。
ここですることと言えば、学校の話くらいだ。
「半分くらい。計画表通りにやってるよ」
零は夏休み前に配られる課題計画表に書いた通り、1日3ページずつくらいで順調に進めている。
零は一気に詰め込むより、こうしてコツコツと進めていくのが好きなタイプだ。
「けーくんは、もう終わったんでしょ?」
零が聞くと、圭吾はもちろんと言った。
「今年は受験もあるし、そっちの勉強を進めないとだからな」
2人の家はマンションで、ここから自転車で30分、電車で一駅のところにある。
2人の母と父同士も幼馴染で、2人が2歳と3歳の頃に新しく建った同じマンションに引っ越したのだ。
幼稚園も小学校も、今通ってる中学校も同じ。
高校は少ないので、良いところに行きたいなら本気で勉強をしないといけないことを、零も知っている。
「凄いね、けーくん。塾も忙しいって聞いた」
圭吾の母と零の母が話しているのを、零は聞いていた。
塾内テストの順位も、毎回トップだと。
圭吾は週三で塾に通っており、行かない日も勉強が忙しいからとあまり遊べなくなった。
寂しいけど、第一志望の高校に行けなかったら遠くの高校に通うことになる。
近所の高校でレベルを下げるとなると、授業内容によって大学のレベルまで下がってしまうのだ。
「忙しいけど、楽しいよ。昨日模試の結果が帰ってきて、結構いいとこまで行ってるんだ。
今日はそれのご褒美」
少し拗ねたように俯く零の頭に、圭吾がキスをした。
「ご褒美って、僕が?」
他の同級生と遊ぶとか、どこかへでかけるとか、そんなことより?僕と一緒にいることを選んでくれたんだ!
「けーくん、すき」
零は顔を上げ、唇にお返しをした。
2人は去年の花火大会の日から付き合っていて、もうすぐ1年。
今年は行けるかわからないけど、うれしい。
うれしい気持ちは、あの時と同じままだ。
「俺も零がすきだよ。そろそろ出よっか」
圭吾はざぶんと音を立て、スイカ入りの水風呂から出た。
「スイカ、冷えてるね」
先に上がった圭吾がスイカを抱え、台所へ向かった。
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