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番外編、圭吾と零

もしかして

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「あっ!」
やられた。
たった3秒目を離しただけで、りおは顔に離乳食を塗りたくり、コップを投げ飛ばしている。
ゆいが今のりおくらいの頃は、食事初心者として慣れていないなりに頑張って離乳食を頬張っていたのに。
りおは少しでも気に入らないと、こうして全力で拒否してくる。
まだ首を振ったり手でお皿を押してくるくらいならいいが、こうしてまるで八つ当たりのようにされると流石に腹が立つ。
しかし相手は0歳児だ。
零は行き場のない怒りをぶつける事ができず、歯を食いしばった。
「りお、だめでしょ。ご飯は大切にしなさい」
お茶でびしょ濡れになった床を拭き、コップを軽くすすいでお茶を少しだけ入れた。
ベタベタの顔はかぶれの原因になりかねないので、一旦お風呂に入れることにした。
身体まで付いているのは日常茶飯事なのだ。
薄い髪の毛にもしっかりとついたお米は、カピカピになると厄介。
ばんざいして~と言うと、こういう時だけ素直に聞いてくれる。
「あ~ぶっ、だぅ!」
りおは最近お風呂がお気に入りのようで、先程の不機嫌とは打って変わってご機嫌の様子だ。
そういえば、何回か同じようなことがあったな…と、零は思い返す。
この前もせっかくの苺をぐちゃぐちゃに塗りたくり、お風呂に入れた。
その前も、今日と同じように離乳食で…
「もしかして、お風呂に入りたかったの?」
そんなことを聞いても答えてくれはしないが、もしかするとこれはりおなりの意思表示なのかもしれない。
身体が汚れるとお風呂に入れてもらえるとわかって、わざとそうしている可能性もある。
「なんだ…そうだったの…」
腹を立てていた自分を、逆に叱りたい気分だ。
りおは言葉を話せないなりに一生懸命伝えようとしてくれた。
なのに、自分は目先のことに腹を立てて分かろうとしなかった。
ゆいはなんでも零の言うことを聞いてくれたし、あまり意思表示はしない子だった。
小さい子が集まる場所に遊びに行っても、他の子におもちゃを譲ったり。
今だってママが弟の世話ばかりでなかなか遊んでくれないのに、文句一つ言わないのだ。
零は2人のことを思うと、自分の不甲斐なさに泣けてきた。
幼稚園から帰ってきたら、いっぱい遊んであげよう。
今日は作り置きの料理を食べて、家事はみんなが寝た後にしよう。
すっかり綺麗になったりおをお風呂から上げ、まだお腹が空いてそうなので授乳する。
んく、んく、と顔を真っ赤にして必死に吸い付く様子は、なんとも言えないかわいさがある。
お風呂から上がったばかりのほかほかの体。
湯冷めしないように素早くクリームを塗り、服を着せた。
_______________

お久しぶりです!
この後、圭吾に話して「零はいいお母さんだよ。ていうか、理由がなんであれせっかくのご飯を無駄にしたことは叱りなさい」と言われる零です。
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