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番外編、圭吾と零
春が来た
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「ままー!はやくこーえんいこー!」
零の支度が終わるのを、ゆいは靴を履いて玄関で待っている。
靴のまま家に上がってはいけない、と圭吾に何度も教えられているので、できるだけ声が届くように床に寝そべって身を乗り出している。
「ちょっとまってね~もうすぐだから」
0歳のりおを連れて行くには、準備にとても時間がかかる。
オムツやおしりふき、着替えやミルクなど、他にも沢山のものを持って行かなくてはならない。
ゆいは自分が着替えて靴を履くだけなので、かれこれ15分以上こうして玄関で待っている。
いつもは支度を手伝い、長くてもお利口さんに座って待っているゆいがこうなっているのには、とある訳があるのだ。
「わ~あったかいね~」
ようやく準備が終わり外へ出ると、数日前までの冷たい風はなくなり、ぽかぽかと暖かい。
そう、待ちに待った春が来たのだ。
「まま~こーえんいったらなにする?」
ゆいは嬉しそうにぴょこぴょこと跳ね、ベビーカーを押す零の前を歩いた。
「そうだな~、また近所のお兄ちゃんたちとおにごっこかな?」
たまに公園に行くと小学生の子達が遊んでいて、ゆいはそれに混ぜてもらうことがあるのだ。
男の子たちはゆいに合わせてゆっくり走ってくれるし、遊んであげたくてもりおを見ていないといけない零にとっては本当に助かる存在なのだ。
「おすなばでおやまさんつくる!」
ゆいがそう言ったのは、きっと零と遊びたいからだろう。
「いいね、すごいおやまさん作ろうね~」
歩いて5分ほどの公園に着くと、やはりいつも遊んでくれてた男の子たちがいた。
それに気がつくと、ゆいは一目散に駆け寄ってぎゅう、とくっついた。
「ゆいひさしぶり!元気だった?」
冬の間はほんのたまにしか公園に行けなかったので、ちゃんと会うのは久しぶりだ。
土日は圭吾がゆいと2人で公園に行ったりもするが、どうせならと少し遠くの遊具がたくさんある公園に行っていた。
「良かったね~ゆい。りんくんたちも元気だった?」
りんくんとは、一番最初にゆいを遊びに誘ってくれた子だ。
りんくん以外の子は常に入れ替わるので、名前は覚えられない。
ただ1つわかるのは、りんくんがクラスの人気者だということ。
誰とでも仲良く遊べるというのは、一種の才能でもある。
「ゆい、今日は何して遊ぶ?おにごっこでもいいし~、キャッチボールでもいいよ!」
りんくんにそう言われると、ゆいは嬉しそうにしながら断った。
「ゆいままとおすなする!おやまさんつくる!」
にこにこの笑顔で断るので、りんくんは笑った。
「そっか~、じゃあ俺達も砂場で遊ぼーっと!ボールがゆいの方に飛んでったらあぶねーもんな!」
りんくんがそう言うと、他の子達も賛成してくれた。
というわけで、この公園の小さなお砂場は、ゆいと零、そして男の子達6人によってわいわいと賑わうこととなった。
「ゆいのまま見て~!ぴかぴかの泥団子!」
日光により乾いた砂を掘ると、湿った砂が出てくる。
男の子たちはそれを使って、ぴかぴかの泥団子作りをしているらしい。
「わ~すごい!上手だね」
一生懸命山を作っていたゆいはそれを見ると、
「ゆいもちゅくる!」
と山をままに丸投げし、教わりながら泥団子を作り始めた。
と、そこで寝ていたりおが突然起き、泣き始めた。
「あらあら…すぐ手洗ってくるからまっててね」
零は急いで公園の手洗い場に行くが、言葉の通じない赤ちゃんのりおはままがいなくなったことで更に泣き出した。
しかし、先程からお砂遊びには一切目もくれずりおの寝顔を眺めていた男の子が、
「泣かないよ~」ととんとんし始めたのだ。
手を洗ってきた零はその子にお礼を言い、お腹がすいたのだろうとベンチに座って授乳した。
授乳中はケープで隠しているので、風でめくれないようさっきの男の子が押さえてくれる。
「ありがとね~、もしかして、弟か妹がいるの?」
零が聞くと、その子はブンブンと首を振った。
「ちがうよ、今度産まれるの!」
そう答える目はキラキラと輝き、この子はきっといいお兄ちゃんになるだろうと零は思った。
それからしばらく遊び、りおがぐずり始めたので一足早く3人は帰宅することになった。
りんくんたちは寂しがり、ゆいも少しだけ泣いた。
でも、もう春なのでまたすぐに会える。
「またね!」
と手を振ってもらい、ゆいもばいばい、と手を振った。
零の支度が終わるのを、ゆいは靴を履いて玄関で待っている。
靴のまま家に上がってはいけない、と圭吾に何度も教えられているので、できるだけ声が届くように床に寝そべって身を乗り出している。
「ちょっとまってね~もうすぐだから」
0歳のりおを連れて行くには、準備にとても時間がかかる。
オムツやおしりふき、着替えやミルクなど、他にも沢山のものを持って行かなくてはならない。
ゆいは自分が着替えて靴を履くだけなので、かれこれ15分以上こうして玄関で待っている。
いつもは支度を手伝い、長くてもお利口さんに座って待っているゆいがこうなっているのには、とある訳があるのだ。
「わ~あったかいね~」
ようやく準備が終わり外へ出ると、数日前までの冷たい風はなくなり、ぽかぽかと暖かい。
そう、待ちに待った春が来たのだ。
「まま~こーえんいったらなにする?」
ゆいは嬉しそうにぴょこぴょこと跳ね、ベビーカーを押す零の前を歩いた。
「そうだな~、また近所のお兄ちゃんたちとおにごっこかな?」
たまに公園に行くと小学生の子達が遊んでいて、ゆいはそれに混ぜてもらうことがあるのだ。
男の子たちはゆいに合わせてゆっくり走ってくれるし、遊んであげたくてもりおを見ていないといけない零にとっては本当に助かる存在なのだ。
「おすなばでおやまさんつくる!」
ゆいがそう言ったのは、きっと零と遊びたいからだろう。
「いいね、すごいおやまさん作ろうね~」
歩いて5分ほどの公園に着くと、やはりいつも遊んでくれてた男の子たちがいた。
それに気がつくと、ゆいは一目散に駆け寄ってぎゅう、とくっついた。
「ゆいひさしぶり!元気だった?」
冬の間はほんのたまにしか公園に行けなかったので、ちゃんと会うのは久しぶりだ。
土日は圭吾がゆいと2人で公園に行ったりもするが、どうせならと少し遠くの遊具がたくさんある公園に行っていた。
「良かったね~ゆい。りんくんたちも元気だった?」
りんくんとは、一番最初にゆいを遊びに誘ってくれた子だ。
りんくん以外の子は常に入れ替わるので、名前は覚えられない。
ただ1つわかるのは、りんくんがクラスの人気者だということ。
誰とでも仲良く遊べるというのは、一種の才能でもある。
「ゆい、今日は何して遊ぶ?おにごっこでもいいし~、キャッチボールでもいいよ!」
りんくんにそう言われると、ゆいは嬉しそうにしながら断った。
「ゆいままとおすなする!おやまさんつくる!」
にこにこの笑顔で断るので、りんくんは笑った。
「そっか~、じゃあ俺達も砂場で遊ぼーっと!ボールがゆいの方に飛んでったらあぶねーもんな!」
りんくんがそう言うと、他の子達も賛成してくれた。
というわけで、この公園の小さなお砂場は、ゆいと零、そして男の子達6人によってわいわいと賑わうこととなった。
「ゆいのまま見て~!ぴかぴかの泥団子!」
日光により乾いた砂を掘ると、湿った砂が出てくる。
男の子たちはそれを使って、ぴかぴかの泥団子作りをしているらしい。
「わ~すごい!上手だね」
一生懸命山を作っていたゆいはそれを見ると、
「ゆいもちゅくる!」
と山をままに丸投げし、教わりながら泥団子を作り始めた。
と、そこで寝ていたりおが突然起き、泣き始めた。
「あらあら…すぐ手洗ってくるからまっててね」
零は急いで公園の手洗い場に行くが、言葉の通じない赤ちゃんのりおはままがいなくなったことで更に泣き出した。
しかし、先程からお砂遊びには一切目もくれずりおの寝顔を眺めていた男の子が、
「泣かないよ~」ととんとんし始めたのだ。
手を洗ってきた零はその子にお礼を言い、お腹がすいたのだろうとベンチに座って授乳した。
授乳中はケープで隠しているので、風でめくれないようさっきの男の子が押さえてくれる。
「ありがとね~、もしかして、弟か妹がいるの?」
零が聞くと、その子はブンブンと首を振った。
「ちがうよ、今度産まれるの!」
そう答える目はキラキラと輝き、この子はきっといいお兄ちゃんになるだろうと零は思った。
それからしばらく遊び、りおがぐずり始めたので一足早く3人は帰宅することになった。
りんくんたちは寂しがり、ゆいも少しだけ泣いた。
でも、もう春なのでまたすぐに会える。
「またね!」
と手を振ってもらい、ゆいもばいばい、と手を振った。
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