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番外編、圭吾と零
零の悩み
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「零、一緒にお風呂入らない?」
産後、ゆいを両親に預け初めて2人で過ごす日、零は圭吾からの誘いを断ってしまった。
産後はゆいの沐浴をスムーズに行うため、どちらかがゆいとお風呂に入り、どちらかが外から受け取る、という連携プレーだったので、2人で入るのはとても久しぶりだったのに。
「ごめんなさい…僕、家事終わらせておくので上がったら2人で映画でも見ましょう」
普段は圭吾の誘いをほとんど断らない零が、何か気にしているのだろうか。
圭吾はそれ以上誘わず、1人でささっとお風呂に入ることにした。
「…やっぱり、目立つよね」
零は姿見の前で、自分のお腹を見て落ち込む。
元々細身のせいか、ゆいを妊娠していた時に皮が伸びてできた線は、今もくっきりと残っている。
妊娠中は見えなかったのに、お腹が縮んで一気に目立ってしまった。
圭吾が毎日欠かさず塗ってくれたクリームも、ほとんど効果を発揮しなかったのだろうか。
これが恥ずかしくて、セックスをする時も上半身は脱がないか、部屋を真っ暗にしてお腹に毛布をかけるようにしている。
圭吾は薄々気づいているだろうか。
しかし、お風呂となると隠す術がない。
いくら圭吾が気にしなくても、零にとっては恥ずかしいのだ。
そんなことを考えていると、圭吾の母から零のスマホに着信が入った。
ゆいはちょうどご飯を食べ終わった頃だろうか、きっと寂しがっているに違いない。
出ると、テレビ通話が始まる。
落ち込んだ表情を見せるわけにはいかないので、なんとか笑顔をつくった。
「んまっ!」
赤ちゃんせんべいをくわえたゆいが、じいじに抱えられながらままに手を振る。
「ゆい~いい子にしてるかな?」
そんなことを聞いても言葉を喋れないので意味は無いが、今のうちからたくさん喋りかけている。
「ゆいくんはね、さっき離乳食を完食してミルクまで飲んだのよ~」
圭吾の母が代弁してくれた。
その上赤ちゃんせんべいまで食べるなんて、ゆいは食いしん坊だ。
3分ほど通話をすると、もうままの顔に飽きたのかじいじに夢中になってしまったので、普通の通話に切り替えて圭吾の母と話す。
「零くん、何かあった?」
さすが義母、ちょっとした変化にも鋭い。
同じ子を持つ母として、ここは相談に乗ってもらおう。
正直に悩んでいることを話すと、圭吾の母は真剣に最後まで聞いてくれた。
「そうね、零くん細いからできるとは思ってたけど…。
そういうのは自分が一番気になるのよね」
圭吾の母も、昔はこれで悩んだこともある。
まだ若いのに、水着が着れなくなるのかと。
「でもね、思い切って悩んでることを圭吾に話してみるのもいいかもしれない。
もちろん零くんがよければだけど。
そうすれば今後お腹が見えるようなことは避けてくれるだろうし…それに、隠すっていうことが一番ストレスになるだろうから」
確かに、このまま隠し続けて変な態度を取るのと、見せたくないことを話すのとでは違う。
話して見られたくないと本音を伝えれば、優しい圭吾なら無理に強要することはないだろう。
零は義母からの助言を聞き、さっそくお風呂上がりの圭吾に話すことにした。
「そっか、それが気になってたんだね」
圭吾は先程の零の態度に納得がいったようで、義母のように優しく話を聞いてくれた。
零は本音を伝えると涙が出てしまい、圭吾が拭いてくれる。
「ごめんなさい…圭吾さんを信用してないわけではないんです。ただ、やっぱり恥ずかしくて…」
零が落ち着くと、約束した通り2人で映画を見た。
この人と結婚してよかったと、零は心からそう思えた。
産後、ゆいを両親に預け初めて2人で過ごす日、零は圭吾からの誘いを断ってしまった。
産後はゆいの沐浴をスムーズに行うため、どちらかがゆいとお風呂に入り、どちらかが外から受け取る、という連携プレーだったので、2人で入るのはとても久しぶりだったのに。
「ごめんなさい…僕、家事終わらせておくので上がったら2人で映画でも見ましょう」
普段は圭吾の誘いをほとんど断らない零が、何か気にしているのだろうか。
圭吾はそれ以上誘わず、1人でささっとお風呂に入ることにした。
「…やっぱり、目立つよね」
零は姿見の前で、自分のお腹を見て落ち込む。
元々細身のせいか、ゆいを妊娠していた時に皮が伸びてできた線は、今もくっきりと残っている。
妊娠中は見えなかったのに、お腹が縮んで一気に目立ってしまった。
圭吾が毎日欠かさず塗ってくれたクリームも、ほとんど効果を発揮しなかったのだろうか。
これが恥ずかしくて、セックスをする時も上半身は脱がないか、部屋を真っ暗にしてお腹に毛布をかけるようにしている。
圭吾は薄々気づいているだろうか。
しかし、お風呂となると隠す術がない。
いくら圭吾が気にしなくても、零にとっては恥ずかしいのだ。
そんなことを考えていると、圭吾の母から零のスマホに着信が入った。
ゆいはちょうどご飯を食べ終わった頃だろうか、きっと寂しがっているに違いない。
出ると、テレビ通話が始まる。
落ち込んだ表情を見せるわけにはいかないので、なんとか笑顔をつくった。
「んまっ!」
赤ちゃんせんべいをくわえたゆいが、じいじに抱えられながらままに手を振る。
「ゆい~いい子にしてるかな?」
そんなことを聞いても言葉を喋れないので意味は無いが、今のうちからたくさん喋りかけている。
「ゆいくんはね、さっき離乳食を完食してミルクまで飲んだのよ~」
圭吾の母が代弁してくれた。
その上赤ちゃんせんべいまで食べるなんて、ゆいは食いしん坊だ。
3分ほど通話をすると、もうままの顔に飽きたのかじいじに夢中になってしまったので、普通の通話に切り替えて圭吾の母と話す。
「零くん、何かあった?」
さすが義母、ちょっとした変化にも鋭い。
同じ子を持つ母として、ここは相談に乗ってもらおう。
正直に悩んでいることを話すと、圭吾の母は真剣に最後まで聞いてくれた。
「そうね、零くん細いからできるとは思ってたけど…。
そういうのは自分が一番気になるのよね」
圭吾の母も、昔はこれで悩んだこともある。
まだ若いのに、水着が着れなくなるのかと。
「でもね、思い切って悩んでることを圭吾に話してみるのもいいかもしれない。
もちろん零くんがよければだけど。
そうすれば今後お腹が見えるようなことは避けてくれるだろうし…それに、隠すっていうことが一番ストレスになるだろうから」
確かに、このまま隠し続けて変な態度を取るのと、見せたくないことを話すのとでは違う。
話して見られたくないと本音を伝えれば、優しい圭吾なら無理に強要することはないだろう。
零は義母からの助言を聞き、さっそくお風呂上がりの圭吾に話すことにした。
「そっか、それが気になってたんだね」
圭吾は先程の零の態度に納得がいったようで、義母のように優しく話を聞いてくれた。
零は本音を伝えると涙が出てしまい、圭吾が拭いてくれる。
「ごめんなさい…圭吾さんを信用してないわけではないんです。ただ、やっぱり恥ずかしくて…」
零が落ち着くと、約束した通り2人で映画を見た。
この人と結婚してよかったと、零は心からそう思えた。
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