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番外編、圭吾と零

圭吾の従兄弟 ③

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その後、お粥なら食べられそうだと言うので、零は卵がゆを作った。
亮の部屋まで持っていくと、先程渡したエコー写真を大事そうに眺めている。
亮はそれを零に返し、作ってもらったお粥をゆっくりと食べ始めた。
「味、大丈夫そう?」
零が聞くと、亮はふわりと微笑み、
「美味しい」
と答える。
いつもよりスムーズに会話ができて、零は嬉しく思った。

「じゃあ、本当に忘れ物ない?
気をつけて行くんだよ、本当に送らなくて平気…?」
受験当日、回復して万全な状態の亮は零に作ってもらったお弁当と零にもらった特別なお守りを持って家を出た。
直前までは緊張した様子だったが、それ以上に緊張してそわそわしている零を見て逆に落ち着いた亮。
2人に見送られ、心做しか嬉しそうにしていた。

そして2日間の受験が終わり、いよいよ明日はこの家を出る。
今日はその最後の夕飯なので、受験お疲れ様の意味も込めて、零が家で焼肉をしようと提案した。
押し入れにしまっていたプレートは、重いので亮が運んでくれる。
「圭吾さんが帰ってきたら、始めようね」
圭吾は定時に仕事を切り上げお肉を買ってくる係。
それまで零と亮で準備をして待つ。
「零さん、お腹触ってもいい?」
すっかり敬語が取れた亮は、こうして度々お腹を触りたがる。
将来は助産師になるという夢を持つ亮は、妊婦のお腹に興味津々なのだ。
受験の日も、エコー写真をコピーしたものを零から貰い、それをお守りに持って行ったほどだ。
「いいよ~、どうぞ」
亮が優しく触れると、赤ちゃんが反応してポコポコとお腹を蹴る。
「蹴られると、痛い?」
「うーん。痛い時もあるけど、今は大丈夫だよ」
よかった、と微笑んで、圭吾が帰ってくるまでお腹を撫でた。

「忘れ物ない?
またいつでもおいでね」
次の日、零は涙目になりながら亮を見送った。
実際は1週間ほどしか仲良くお喋りをできなかったので、もう少し一緒にいたいのだろう。
亮も寂しそうに何度も零のお腹を撫で、迎えに来た母親の車に乗って帰って行った。
亮の母はたくさんの果物とベビー服のお下がりをくれ、そして丁寧にお礼を言った。
むしろお礼を言うのは僕の方ですよ、と零は亮がしてくれた沢山のことを報告する。
一ヶ月、長いようで短かった亮との生活。
その後しばらくは亮のいない生活に寂しさを覚える零だった。

__________________

ひとまず終わりです。
読んでくださりありがとうございました~
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