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秋葉と宗介

秋葉と宗介

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「そーちゃん」
明け方、夜勤から帰ってきた秋葉は美桜の隣で眠る宗介にぎゅー、と抱きついた。
それから美桜のすべすべなほっぺたを愛おしく撫で、疲れを癒す。
これからシャワーを浴び、宗介作っておいてくれたご飯を食べ、お昼まで眠る。
秋葉の生活はとてもハードだ。一限がない日の前日は明け方まで働き、それからお昼まで寝て大学に行く。
それが終わればまたバイトをして、の繰り返しだ。
週に一度の休みは疲れていても休むことはなく、家族3人の時間に使う。
ただ当の本人はそれを辛いとは思っていない。
大変ではあるが、大好きな宗介と、その間にできた美桜が幸せに暮らせるなら、どんなに大変でも耐えられる。
一方的に別れを告げられたあの日と比べたら、こんなのは屁でもない。
未成年で父親となり、一家を支える秋葉に親しい友人はいない。
ただ、辛いことがあっても宗介がいる。
秋葉を一番近くで支えてくれるのは、紛れもない宗介だ。
「秋葉…おかえり」
宗介が起きて、暗い部屋でご飯を食べていた秋葉にぎゅ、と抱きついた。
「ごめん、起こした?」
ううん、という宗介の返事に安心し、その唇にキスをした。
「昨日は美桜と二人で早く寝たの」
せっかく二人の時間が出来たので、久しぶりに抱き合うことにした。
「ん…」
美桜が起きるといけないので、宗介は声を我慢して秋葉に縋り付く。
しばらくはこの小さなアパートで暮らすので、なるべく静かにしないといけない。
「はあ…んっ…」
対面座位で身体を密着させながら、宗介がゆるゆると腰を上下させる。
前のようにベットの上で激しく愛し合うことは出来ないが、これはこれで幸せだ。
「そーちゃん、痛くない?」
秋葉は宗介の腰を心配し、大丈夫という返事をもらうとまた安心した。
「今日もお昼から?」
「うん、それで明日は休み。
また美桜連れて大きい公園行こうね」
3人の休日は、なるべくお金をかけない遊びをしている。
宗介が週5日フルタイムで働いていることによって両親からの支援はもう受け取っていないが、あと2年半は節約生活が続く。
美桜には寂しい思いをさせてしまっているが、これもあと2年半の辛抱だ。
秋葉がいい会社に入れたら、宗介は零のように専業主婦になる。
そうすれば美桜と過ごせる時間も増やせるし、今よりもっと秋葉と抱き合える。
「あき、もう寝ようね」
美桜にするみたいに秋葉の歯磨きをしてあげ、布団をかけてトントンする。
宗介の聖母みたいな包容力で、秋葉はぐっすりと眠ることが出来た。
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