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もしものふたり
お見舞い
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※ もしものふたり の世界線です。
____________
「零、体調はどう?」
コンコン、と病室のドアをノックし、圭吾が入ってくる。
「あ、圭吾さんおはようございます。
後陣痛が少し辛いです」
昨日無事出産を終え、零のお腹は少しづつ萎んでいる。
子宮が元の大きさに戻ろうと収縮することで、後陣痛とも呼ばれる痛みを感じるのだ。
「そっか…お腹冷えないように毛布…」
圭吾が毛布を取り、零のお腹にかけようとする。
「あ、ちょっと待ってください。
母子同室の許可が出たので、今から一緒に迎えに行きましょう?」
零は腰を抑えながら、ゆっくりベットを下りる。
「え、歩ける?大丈夫…?」
圭吾に心配されながらも、零はカーディガンを羽織って迎えに行く準備をする。
「さ、行きましょう」
すっかり母親の顔になった零は、以前よりも逞しく思えた。
「ほんと、小さい」
零の病室へ戻り、赤ちゃんも無事連れてくることが出来た。
圭吾は生まれる直前までひたすら練習した成果を発揮すべく、赤ちゃんを抱っこする。
生後間もない二人の赤ちゃんは、ふにゃふにゃで今にも壊れてしまいそうなほどだ。
「圭吾さん、僕も抱っこしたいです」
圭吾から赤ちゃんを受け取ると、零の乳房からは自然と母乳が溢れた。
「わ…ちょっとまってね」
器用にボタンを外し、赤ちゃんに母乳を与える。
圭吾はその様子をじっと眺めていた。
「なんだか、圭吾さんに似てますね」
零が乳を与えながらそう言ったので、圭吾は一瞬変なことを考えたが、よく考えるとそれは顔のことであった。
「そ、そう?」
圭吾が言うと、零は優しく微笑んで頷く。
「そうですよ。ほら、くりくりのお目目なんて、小さい頃の圭吾さんにそっくり」
前に雅子からもらった圭吾の幼少期の写真と、赤ちゃんはとてもよく似ている。
「確かに…でも、このかわいい唇は完全に零だよ」
お互い、相手に似ているところばかりが目に入る。
「そういえば、名前…」
零が言うと、圭吾はカバンから名前の候補を書いた紙を取りだした。
そこには二人で大事に考えた名前がある。
「なんか、ゆいって感じがするね」
圭吾が言うと、零は驚いた顔をして、同じことを思いました、と言った。
「あとは漢字だけど…」
花嶺結と、花嶺唯、あとはひらがなで、
花嶺ゆい。
圭吾がそれぞれ書き出し、二人で眺める。
「うーん…これはなんとなく、この“唯”な気がします」
圭吾は苗字が難しいからひらがなでもかわいいけど…と言ったが、そこは零が譲らなかった。
「僕と同じで、漢字1文字の名前がいいです」
零がそう言った途端、圭吾も納得した。
あとは出生届を書くだけだ。
「唯くん、今日から君は唯くんだよ」
一生懸命零の乳に吸い付く我が子に、二人は自然と笑みが溢れた。
授乳を終えると、ゲップを出すので圭吾にバトンタッチだ。
圭吾が唯を肩に乗せ、優しく背中をトントンする。
ケプ、と耳元でかわいいゲップが聞こえ、授乳は無事終わった。
「こんなにかわいい子が、零のお腹にいたんだね」
圭吾は唯の寝顔を眺めながら、愛おしそうにそう言った。
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「零、体調はどう?」
コンコン、と病室のドアをノックし、圭吾が入ってくる。
「あ、圭吾さんおはようございます。
後陣痛が少し辛いです」
昨日無事出産を終え、零のお腹は少しづつ萎んでいる。
子宮が元の大きさに戻ろうと収縮することで、後陣痛とも呼ばれる痛みを感じるのだ。
「そっか…お腹冷えないように毛布…」
圭吾が毛布を取り、零のお腹にかけようとする。
「あ、ちょっと待ってください。
母子同室の許可が出たので、今から一緒に迎えに行きましょう?」
零は腰を抑えながら、ゆっくりベットを下りる。
「え、歩ける?大丈夫…?」
圭吾に心配されながらも、零はカーディガンを羽織って迎えに行く準備をする。
「さ、行きましょう」
すっかり母親の顔になった零は、以前よりも逞しく思えた。
「ほんと、小さい」
零の病室へ戻り、赤ちゃんも無事連れてくることが出来た。
圭吾は生まれる直前までひたすら練習した成果を発揮すべく、赤ちゃんを抱っこする。
生後間もない二人の赤ちゃんは、ふにゃふにゃで今にも壊れてしまいそうなほどだ。
「圭吾さん、僕も抱っこしたいです」
圭吾から赤ちゃんを受け取ると、零の乳房からは自然と母乳が溢れた。
「わ…ちょっとまってね」
器用にボタンを外し、赤ちゃんに母乳を与える。
圭吾はその様子をじっと眺めていた。
「なんだか、圭吾さんに似てますね」
零が乳を与えながらそう言ったので、圭吾は一瞬変なことを考えたが、よく考えるとそれは顔のことであった。
「そ、そう?」
圭吾が言うと、零は優しく微笑んで頷く。
「そうですよ。ほら、くりくりのお目目なんて、小さい頃の圭吾さんにそっくり」
前に雅子からもらった圭吾の幼少期の写真と、赤ちゃんはとてもよく似ている。
「確かに…でも、このかわいい唇は完全に零だよ」
お互い、相手に似ているところばかりが目に入る。
「そういえば、名前…」
零が言うと、圭吾はカバンから名前の候補を書いた紙を取りだした。
そこには二人で大事に考えた名前がある。
「なんか、ゆいって感じがするね」
圭吾が言うと、零は驚いた顔をして、同じことを思いました、と言った。
「あとは漢字だけど…」
花嶺結と、花嶺唯、あとはひらがなで、
花嶺ゆい。
圭吾がそれぞれ書き出し、二人で眺める。
「うーん…これはなんとなく、この“唯”な気がします」
圭吾は苗字が難しいからひらがなでもかわいいけど…と言ったが、そこは零が譲らなかった。
「僕と同じで、漢字1文字の名前がいいです」
零がそう言った途端、圭吾も納得した。
あとは出生届を書くだけだ。
「唯くん、今日から君は唯くんだよ」
一生懸命零の乳に吸い付く我が子に、二人は自然と笑みが溢れた。
授乳を終えると、ゲップを出すので圭吾にバトンタッチだ。
圭吾が唯を肩に乗せ、優しく背中をトントンする。
ケプ、と耳元でかわいいゲップが聞こえ、授乳は無事終わった。
「こんなにかわいい子が、零のお腹にいたんだね」
圭吾は唯の寝顔を眺めながら、愛おしそうにそう言った。
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