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もしものふたり

圭吾、大号泣

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※ もしものふたり の世界線です。
___________

「零くん!今下に車出したから、移動するわよ!」
雅子は慌てて戻ってくるなり、玄関から零の方まで叫んだ。
入院用の荷物を詰めたバックは予め車に乗せていたので、あとは零を連れて行くのみ。
「零くん…無事?」
雅子はリビングに入り、零のところまで小走りで近づく。
ソファーに座らせた零はいつの間にか床まで落ちており、ソファーに突っ伏している。
「ふう…ふぅ…」
絶えず漏れ出す羊水に気が滅入ったようで、零は一生懸命呼吸しながら頑張っていた。
「あらあら…とりあえず、立てる?
このままだと赤ちゃんも危ないから、わたしにしっかり掴まって」
雅子は零の腕を肩に乗せ、腰を支えながら一緒に立ち上がる。
雅子も圭吾の母なだけあってそこそこの年齢だが、大事な息子の嫁がピンチとなればこのくらいお手の物。
零は股にナプキンをあて、ゆっくりとエレベーターに乗り込む。
「びっくりしたね、急に破水するなんて」
雅子は零を車に乗せ、やっと一息つくと、零に水を飲ませながらそう言った。
「僕も、プチンって音が聞こえた瞬間背筋が凍りました」
雅子は病院までのナビをつけ、零の様子を伺いながら安全運転で向かう。
圭吾からも早退したと連絡が入り、そのまま病院で合流することになった。

「はい、赤ちゃんも頑張ってるよー。
お母さん目閉じないで!」
破水から数時間後、漸く陣痛が始まった。
病院についてすぐ、検査をして羊水だということが確定し、圭吾もちょうど到着して合流することができた。
その後は念の為腟内を洗浄したり、陣痛がくるまでの時間は忙しく、またお産中に食事ができないため、零は一生懸命おにぎりを頬張った。
「いっった…」
零は目を閉じると痛みが増すことをわかっていながらも、そうせざるを得ないほどの痛みに必死で耐えた。
既に赤ちゃんの頭が見えており、あとは先生の合図と共にいきむだけだ。
「はぁ…はあ…うっ…く…」
圭吾に見守られ、破水してから約17時間、
「おめでとうございます、元気な男の子ですよ~」
漸く二人の子は誕生した。
「はあ…はあ…はあ」
零は汗と涙でぐしゃぐしゃになりながらも、やっと会えた愛おしい我が子の顔を見る。
「…はじめまして…ままだよ」
零よりも、赤ちゃんよりも、この時に大号泣していたのは圭吾だ。
零は無事に出産を終え、最初こそ涙を流したものの、今は落ち着いて切られた股を縫われている。
「ちょっと痛い…けど陣痛よりは大丈夫かな」
隣で大号泣する旦那を他所に、雅子から受け取った水を喉に流し込んでいる。
「零くん、お疲れ様。お疲れだろうから、ゆっくり休んでね。
無事とはいえ出産後の身体は相当の大怪我だからね」
雅子は優しく声をかけながら、零の汗を拭き取る。
「零…ありがとう…ありがとう…」
涙で目を腫らした圭吾は、何度も何度も零の頭を撫でながらそう言った。
出産後、二時間は分娩室で休むことになっている。
零はこまめに水分補給をしながら、実家の両親へ電話をかけたり、圭吾に破水した時の話をしたりした。
「異常がなければ、明日には母子同室で赤ちゃんと過ごせますかね」
零は昨日から寝ていないのに、逆に気分がハイになって喋り続けている。
「あと、出生届も書きましょうね。
そうだ、赤ちゃんの名前もちゃんとお顔を見てから決めないと」
その後も病室に移動するまで零は楽しそうに話し続け、ベットに寝転ぶと気を失うように眠ってしまった。
「お疲れさま、いい夢見てね」

_______________

もう少しだけ続きます。
本編より遥かに長くなってしまい、実際の2人はどっちなの?となってしまっている方も少なくはないかもしれません…。
もしものふたりは、圭吾と零がもしも交際結婚だったら、というパロディのはずなのに、結局ここまで書いてしまいました。
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