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もしものふたり
ジェンダーリビールケーキ
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※ もしものふたり の世界線です。
____________
「ジェンダーリビールケーキ?」
仕事から帰宅し、圭吾は零に促され謎のケーキの前に立った。
零が言うには、そのケーキはジェンダーリビールケーキというものらしい。
「そうです。今日の検診でやっと性別がわかったので、流行りのケーキを作ってみました」
なるほど…と圭吾は思う。
今まで何回かタイミングはあったものの、毎回股を隠され、性別がわかっていなかったのだ。
そして今日、ついにその性別が判明したらしい。
「それで…このケーキはどういう…?」
圭吾がそう聞くと、零が簡単に説明を始める。
「まず、圭吾さんにはこのケーキを切ってもらいます。
それで、中に挟んであるフルーツが苺だったら女の子。
ブルーベリーだったら男の子です」
ケーキには「Boy or Girl 」と書かれたネームプレートが乗っていて、左にはブルーベリー、右には苺が散りばめられている。
圭吾はさっそくケーキの前に置かれているナイフを持ち、そのケーキに刃を入れた。
「あ、まって」
そこで零に腕を掴まれ、
「圭吾さんは、どっちだと思いますか?」
と質問される。
この手の質問は、何度もされてきた。
どっちがいいですか?とも、何度も聞かれた。
それでも圭吾はやはり、
「どっちでも嬉しい」
それを聞くと零は安心して、
「じゃあ、そのケーキを切ってください」
と圭吾の腕から手を離した。
零が緊張しながらじっと見守る中、圭吾はそのケーキにもう一度刃を入れた。
スポンジは柔らかく、すぐに刃が入る。
ナイフを少し右にズラし、中を見ると…
「ブルーベリー…ってことは、男の子だ」
圭吾が微笑むと、零は飛びきりの笑顔で圭吾に抱きついた。
「男の子ですって。ちゃんとね、ちんちんが写ったんですよ。エコー見ますか?」
零は嬉しそうにカバンからエコー写真を取り出す。
「ここがさくらんぼで…ほら、ここにかわいいのがあるでしょう?」
エコー写真には、くっきりと男の子にしかないそれが写っていた。
「わ、ほんとだ。すごいね、こんなにくっきり写るもんなんだ」
圭吾はそれをまじまじと見つめる。
「僕もびっくりしましたよ。今日はちゃんとお股を開いてくれたんです」
ね~偉かったね~。とお腹を撫でる。
零はるんるん、といった様子でケーキを一旦冷蔵庫にしまい、今日の夕飯を並べる。
圭吾はしばらくそのエコー写真を眺めていた。
「ねえ、零」
そして突然、零の名を呼ぶ。
どうしたんですか?と不思議そうに尋ねる零に、圭吾は笑ってこう言った。
「俺、どっちでも嬉しいって言ったけど、男の子、すっごいたのしみ。
二人でままを取り合うんだろうな」
愛おしくエコー写真を撫でる。
本人はここにいますよ、と零に手を取られ、お腹に手を当てる。
今日は張っていないお腹は少しぷにぷにしていて、ここに大切な我が子がいるのだと思うと、自然と涙が溢れた。
零に慰められながら、気持ちを落ち着かせる。
出産は母子共に命懸けだし、もしものことがあるかもしれない。
生まれてからだって、ずっとみんなが笑顔でいられるとは限らない。
それでも、
「零…今、俺、すっごい幸せ…」
零のお腹で毎日頑張って生きているこの子と、それを毎日大事に守ってくれている零が、圭吾は愛おしくて堪らなかった。
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「ジェンダーリビールケーキ?」
仕事から帰宅し、圭吾は零に促され謎のケーキの前に立った。
零が言うには、そのケーキはジェンダーリビールケーキというものらしい。
「そうです。今日の検診でやっと性別がわかったので、流行りのケーキを作ってみました」
なるほど…と圭吾は思う。
今まで何回かタイミングはあったものの、毎回股を隠され、性別がわかっていなかったのだ。
そして今日、ついにその性別が判明したらしい。
「それで…このケーキはどういう…?」
圭吾がそう聞くと、零が簡単に説明を始める。
「まず、圭吾さんにはこのケーキを切ってもらいます。
それで、中に挟んであるフルーツが苺だったら女の子。
ブルーベリーだったら男の子です」
ケーキには「Boy or Girl 」と書かれたネームプレートが乗っていて、左にはブルーベリー、右には苺が散りばめられている。
圭吾はさっそくケーキの前に置かれているナイフを持ち、そのケーキに刃を入れた。
「あ、まって」
そこで零に腕を掴まれ、
「圭吾さんは、どっちだと思いますか?」
と質問される。
この手の質問は、何度もされてきた。
どっちがいいですか?とも、何度も聞かれた。
それでも圭吾はやはり、
「どっちでも嬉しい」
それを聞くと零は安心して、
「じゃあ、そのケーキを切ってください」
と圭吾の腕から手を離した。
零が緊張しながらじっと見守る中、圭吾はそのケーキにもう一度刃を入れた。
スポンジは柔らかく、すぐに刃が入る。
ナイフを少し右にズラし、中を見ると…
「ブルーベリー…ってことは、男の子だ」
圭吾が微笑むと、零は飛びきりの笑顔で圭吾に抱きついた。
「男の子ですって。ちゃんとね、ちんちんが写ったんですよ。エコー見ますか?」
零は嬉しそうにカバンからエコー写真を取り出す。
「ここがさくらんぼで…ほら、ここにかわいいのがあるでしょう?」
エコー写真には、くっきりと男の子にしかないそれが写っていた。
「わ、ほんとだ。すごいね、こんなにくっきり写るもんなんだ」
圭吾はそれをまじまじと見つめる。
「僕もびっくりしましたよ。今日はちゃんとお股を開いてくれたんです」
ね~偉かったね~。とお腹を撫でる。
零はるんるん、といった様子でケーキを一旦冷蔵庫にしまい、今日の夕飯を並べる。
圭吾はしばらくそのエコー写真を眺めていた。
「ねえ、零」
そして突然、零の名を呼ぶ。
どうしたんですか?と不思議そうに尋ねる零に、圭吾は笑ってこう言った。
「俺、どっちでも嬉しいって言ったけど、男の子、すっごいたのしみ。
二人でままを取り合うんだろうな」
愛おしくエコー写真を撫でる。
本人はここにいますよ、と零に手を取られ、お腹に手を当てる。
今日は張っていないお腹は少しぷにぷにしていて、ここに大切な我が子がいるのだと思うと、自然と涙が溢れた。
零に慰められながら、気持ちを落ち着かせる。
出産は母子共に命懸けだし、もしものことがあるかもしれない。
生まれてからだって、ずっとみんなが笑顔でいられるとは限らない。
それでも、
「零…今、俺、すっごい幸せ…」
零のお腹で毎日頑張って生きているこの子と、それを毎日大事に守ってくれている零が、圭吾は愛おしくて堪らなかった。
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