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もしものふたり
零の口癖
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※ もしものふたり の世界線です。
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「よっこらしょ…」
零は買い物を終え、帰宅すると生ものをすぐに冷蔵庫へ入れてソファーに腰を下ろす。
必要最低限の食材だけを買っているが、最近はもう外を歩くのすらしんどくなってきた。
「ふう…」
コップに注いだ麦茶を飲み干し、一息つく。
急な眠気に襲われたが、せめて夕飯だけでも作ろうとソファーから腰を上げた。
「よっこいしょ…」
今日は豚肉の生姜焼きと、豚汁。
あとは適当に野菜を切ってサラダにする。
重いお腹を抱えながら家事をするのはしんどいが、それでもつわりで全ての匂いに敏感だった頃よりはましだ。
何度か休みながら、夕飯を作る。
圭吾が美味しそうに食べてくれるのを想像し、自然と元気が出た。
それに自分もちゃんと食べないと、へその緒を通して赤ちゃんに栄養を送れない。
今日もぽこぽこと少し痛いが元気なことを知らせてくれる我が子が愛おしい。
零は腰を擦りながら、なんとか夕飯を作り終えた。
[今から帰るね。しんどかったら寝てて]
ちょうど定時に圭吾からの連絡が入る。
妊娠前は残業して帰ってくることもあったが、今は家でできる仕事は持ち帰って、できるだけ定時に帰ってきてくれる。
それも、零のできなかった家事を自分がするためらしい。
なのでせめてご飯だけは美味しいものを食べてもらおうと、零は毎日頑張っていた。
[了解しました。気をつけて帰ってきてくださいね]
圭吾が帰ってくるまではテレビを見て過ごす。
零はエプロンを外し、スリッパをパタパタと鳴らしてソファーへ向かった。
「よいしょ」
腰を下ろし、リモコンでテレビの電源を入れる。
今日見逃した昼ドラをつけ、ハーブティーを飲みながらそれを見た。
「零ー?」
突然圭吾の声が聞こえ、零は驚いてリモコンを落とした。
「わっ、びっくりした…」
ついドラマに集中して、帰ってきたことに気がつかなかったらしい。
「もう…いつもみたいに出てこないから体調でも悪いのかと思って焦った…」
圭吾はスーツを脱ぎながら安心したようにそう言う。
「ふふ、ごめんなさい、つい…」
零はほんの少しのことでも心配してくれる夫に、嬉しさと愛おしさが込み上げた。
「あ、そうそう。今日の夕飯は…よっこらしょ…」
テレビを消してソファーからゆっくりと起き上がる。
夕飯をよそるためにキッチンへ歩いた。
「零、最近よっこらしょ、とかよいしょ、って言うのが口癖になったね」
ふふ、と圭吾が笑う。
赤ちゃんが大きくなってきて、零のお腹も次第に重くなった。
その分起き上がるのにも体力がいる。
「そうですか?気づかなかった…」
豚汁を二人分注ぎながら、零は不思議ですね~と答える。
「その口癖好きだな」
こんなにかわいいのに、ちょっとおじさんっぽいギャップがさ。と圭吾。
圭吾の方が年上なのに、零の方が少しだけ古風だ。
「やだなあ、おじさんだなんて。
いずれ僕も圭吾さんもおじさんになりますよ」
ね~ぽこちゃん、とお腹を撫でる。
ぽこちゃん、というのは胎児ネームで、ぽこぽこと蹴ることから圭吾が考えたものだ。
二人はそんな会話をしながら、零の作った夕飯を食べた。
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「よっこらしょ…」
零は買い物を終え、帰宅すると生ものをすぐに冷蔵庫へ入れてソファーに腰を下ろす。
必要最低限の食材だけを買っているが、最近はもう外を歩くのすらしんどくなってきた。
「ふう…」
コップに注いだ麦茶を飲み干し、一息つく。
急な眠気に襲われたが、せめて夕飯だけでも作ろうとソファーから腰を上げた。
「よっこいしょ…」
今日は豚肉の生姜焼きと、豚汁。
あとは適当に野菜を切ってサラダにする。
重いお腹を抱えながら家事をするのはしんどいが、それでもつわりで全ての匂いに敏感だった頃よりはましだ。
何度か休みながら、夕飯を作る。
圭吾が美味しそうに食べてくれるのを想像し、自然と元気が出た。
それに自分もちゃんと食べないと、へその緒を通して赤ちゃんに栄養を送れない。
今日もぽこぽこと少し痛いが元気なことを知らせてくれる我が子が愛おしい。
零は腰を擦りながら、なんとか夕飯を作り終えた。
[今から帰るね。しんどかったら寝てて]
ちょうど定時に圭吾からの連絡が入る。
妊娠前は残業して帰ってくることもあったが、今は家でできる仕事は持ち帰って、できるだけ定時に帰ってきてくれる。
それも、零のできなかった家事を自分がするためらしい。
なのでせめてご飯だけは美味しいものを食べてもらおうと、零は毎日頑張っていた。
[了解しました。気をつけて帰ってきてくださいね]
圭吾が帰ってくるまではテレビを見て過ごす。
零はエプロンを外し、スリッパをパタパタと鳴らしてソファーへ向かった。
「よいしょ」
腰を下ろし、リモコンでテレビの電源を入れる。
今日見逃した昼ドラをつけ、ハーブティーを飲みながらそれを見た。
「零ー?」
突然圭吾の声が聞こえ、零は驚いてリモコンを落とした。
「わっ、びっくりした…」
ついドラマに集中して、帰ってきたことに気がつかなかったらしい。
「もう…いつもみたいに出てこないから体調でも悪いのかと思って焦った…」
圭吾はスーツを脱ぎながら安心したようにそう言う。
「ふふ、ごめんなさい、つい…」
零はほんの少しのことでも心配してくれる夫に、嬉しさと愛おしさが込み上げた。
「あ、そうそう。今日の夕飯は…よっこらしょ…」
テレビを消してソファーからゆっくりと起き上がる。
夕飯をよそるためにキッチンへ歩いた。
「零、最近よっこらしょ、とかよいしょ、って言うのが口癖になったね」
ふふ、と圭吾が笑う。
赤ちゃんが大きくなってきて、零のお腹も次第に重くなった。
その分起き上がるのにも体力がいる。
「そうですか?気づかなかった…」
豚汁を二人分注ぎながら、零は不思議ですね~と答える。
「その口癖好きだな」
こんなにかわいいのに、ちょっとおじさんっぽいギャップがさ。と圭吾。
圭吾の方が年上なのに、零の方が少しだけ古風だ。
「やだなあ、おじさんだなんて。
いずれ僕も圭吾さんもおじさんになりますよ」
ね~ぽこちゃん、とお腹を撫でる。
ぽこちゃん、というのは胎児ネームで、ぽこぽこと蹴ることから圭吾が考えたものだ。
二人はそんな会話をしながら、零の作った夕飯を食べた。
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