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番外編、圭吾と零

ぽかぽかホットレモン

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「…さむぅ」
零は白い息を吐き、凍えてふるふると震える手をぎゅっと握る。
今日は旦那の圭吾と久しぶりのデートで、おしゃれな格好をしたのに、こんなに寒いなんて…。
落胆していると、圭吾が待ち合わせ場所に到着した。
「ごめん、遅れちゃった」
家は同じだが、出会ってから一度も別々の場所で暮らしたことがないので、今日のデートは圭吾の仕事帰りに待ち合わせをすることになっていた。
遅れた、と言っても圭吾が着いたのは予定より10分早いので、問題は無い。
「圭吾さん…寒いですね…」
圭吾はすかさず自分のマフラーを零に巻いた。
そして、ちょっとここで待ってて、と風の当たらない場所に移動させ、どこかへ行ってしまう。
「圭吾さん…?」
3分も経たないうちに戻ってきた圭吾の手には、ペットボトルのホットレモン。
「零、寒い中こっちまで来てくれてありがとね」
圭吾はホットレモンを零の頬に当て、微笑む。
「わぁ…!うれしいです」
小さな気遣いに、零の心が躍る。
「唯、泣いてた?」
今日は一ヶ月に一度の夫婦水入らずの時間なので、
一歳の息子、唯は零の両親の元へ預けている。
「いえ、唯はおばあちゃんとおじいちゃんに会えたのが嬉しくて、ママばいばい!って見送ってくれました」
零が笑ってそう言うので、圭吾もつられて笑う。
二人でそんな話をしながら五分ほど歩くと、
水族館が見えてくる。
「たのしみですね、どんなとこなんだろう」
今夜行くのは夜に営業している水族館で、
ナイトアクアリウムとかいうやつだ。
魚たちの水槽が綺麗な光に照らされ、
大人のデートとして人気らしい。
零は昼間にやっているテレビでこれを見て、
次のデートはここに行きたいと圭吾に提案したのだ。
圭吾は、
「それなら金曜の夜、仕事帰りに待ち合わせしようか」
と快くOKしてくれたのだ。
自宅からは離れた場所にあり、夜に行って帰ってくるのは大変なので、今日は圭吾の提案でホテルに泊まることになっている。

チケットを買い、さっそく水族館に入る。
すると、入ってすぐのところにクラゲの水槽がたくさん並んでいる。
「…わぁ」
すごい、綺麗…とクラゲに夢中になっている零が愛おしくて、圭吾はそっと手を握る。
零は一瞬ビクッ、としたが、すぐに状況を理解したのか、ぽっと頬が赤くなる。
それもこれも全部かわいくて、圭吾は零から目が離せない。
「…もう、お魚見てくださいよ」
と照れながら怒られたので、
わかったよ、と水槽に目を移すが、圭吾はその水槽に反射する零を見ることにした。

エスカレーターに乗ると、そのまわりも全て水槽になっていて、ちょうど真上にエイが泳いでいる。
「圭吾さんあれ!エイのかわいいお口ですよ!」
エイの顔に見える部分がかわいいらしく、
零はとてもはしゃいでいる。
「そうだね、かわいいね」
かわいいのは零の方だけどね、と圭吾は思った。

水族館を出ると、近くのレストランで食事をする。
零は大きなハンバーガーを頼み、
ナイフとフォークで器用に食べる。
「圭吾さんもどうぞ」
あーん、とフォークに刺したハンバーガーを圭吾に向け、零ははっとした。
「あ、つい…唯といる時みたいに…」
顔を真っ赤にさせて照れている零と、かわいいな、なんて思いながら
「ん、あーんして」
と乗る圭吾。
夫婦だけど、二人でデートしている時はまるで付き合い始めの恋人のよう。
間違ってはいないけど、普段は二人でパパとママをしているので、どこにスイッチがあるんだろう…と零は思っている。

食事が終わると、チェックインする時間がもうすぐなので、圭吾と零は手を繋いでホテルへ向かう。
あとはお風呂に入って寝るだけなのに、
自然と心はその気分になっている。
ホテルのバスローブを羽織ると、零は初夜のことを思い出した。
そういえば、あの時はすっごく緊張して、間違えてボディーソープで頭を洗っちゃったんだっけ…。
ボディーソープで洗った髪はギシギシになり、
これじゃ抱いてもらえない…!と急いでシャンプーをし直し、トリートメントを入念に塗りこんだのだ。
零はそんなことを考えていると、突然肩に重いものが乗っかり、思わず
「うわあ!」
と声を上げた。
圭吾が後ろから抱きついていたのだ。
ぽん、と頭を零の華奢な肩に乗せ、
すぅすぅと匂いを嗅いでいる。
「…ちょっと、圭吾さん」
やめてくださいよ、と照れる零を無視して、
圭吾はひょいと零を持ち上げた。
ベットに運び、そっと寝かせると、
バックの中から何か箱を取り出す。
「え、圭吾さん、それずっと持ってたんですか?!」
興奮より驚きが勝った零は、目を丸くしている。
「いや、ホットレモンと一緒に買っておいたんだよ」
まさか、会社にこんなものを持っていくわけがない。
中から一つ取り出し、サイドテーブルに置く。
電気をオレンジ色に変え、零の身体にキスを落とす。
首から始まり、下にいくにつれ、どんどんバスローブを脱がせていく。
ツン、と存在を主張する突起に、舌を這わせる。
すると、先程まで
「…はぁ……」
と息だけで喘いでいたのが、
「んっ、」
と声に変わる。
唯の授乳期がまだ終わっていないので、
その綺麗な桃色をした突起からは、じわじわと白い液体が溢れ出す。
「お腹、ん…壊しますよ…」
母乳は赤ちゃんのためのものなので、大人が飲むと下痢になると聞いたことがある。
「さすがに唯のご飯を奪うことはしないよ」
圭吾はそう言って我慢するが、母乳を絞る手は止まらない。
「…ね、今日は夜の授乳してないから、胸が張らない…?」
コク、と頷く零に、圭吾は興奮を隠せない。
これじゃまるで赤ちゃんプレイじゃないか。
頭ではそう思っていても、妻のこんな姿に興奮しないわけがない。
ママなのに、こんなえっちでいいの?
圭吾の頭の中は、そんな卑猥すぎる言葉が飛び交っている。
さすがにこれ以上出させるのも可哀想なので、
出した母乳は綺麗に拭き取る。
圭吾の手でしっかりと柔らかくした零の性器は、パクパクと口を開いたり閉じたり、はやく入れてくれと懇願しているようだ。
先程出したコンドームの包装をピリ、と破り、
中から取り出した本体を自分の男根に着ける。
はやく、と急いでいる零を宥め、ぐ、とその蕾に押しつける。
スルスルと中に入り込み、しばらく馴染ませる。
零の頭を撫でたり、ちゅ、とキスをする。
ゆっくりと抽挿を始めると、零が気持ちよさそうに喘ぐ。
「んぁ…そこすきです…んっあっ」

行為は結局朝方まで続き、零は疲労でぐったりとしてしまった。
普段家でする時は唯が起きないよう気を使っていて、こんなにゆっくりと行為に集中できることはない。
圭吾は少し激しくしすぎてしまったな、と反省した。





「ままあ~~~!」
預けた時はあんなに喜んでいたのに、
さすがに寂しくなってしまったようで、
零と圭吾が迎えに行くと、たたた、と走って飛びついてきた。
「ちゃんといい子にしてた?」
零がそう聞くと、笑顔でうんと頷く。
零の母親が唯の描いた絵を見せてくれると、
そこにはぐるぐると何やら顔が描かれている。
「え!?これ唯が描いたの?」
どうやらそれは零と圭吾のようで、
思わず感動してしまう。
「…唯は画家になれるよ…ぱぱうれしい…
上手…唯くんは天才だね…やっぱりままが産んでくれたからだね…」
圭吾の親バカにはみんな慣れているので、
もはや誰も気にしない。
「これはパパのスーツだね、唯はちゃんと見てるんだね~」
零が褒めると、唯はうれしそうにきゃっきゃと喜ぶ。
そして唯は零の両親の家でこたつミカンを初めて体験したらしく、その後しばらくはこたつがほしいとせがまれた。
一日会わなかっただけでも唯はびっくりするほど成長するし、ぱぱもままも寂しくなる。
ただこうして離れる時間をつくることで、
改めて家族の大切さに気づくのだった。



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見返していないので誤字脱字は見逃してください…
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