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番外編、〇〇とゆい
さんたとゆい
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「唯~さんたさんにお手紙書こうか~」
零は画用紙と幼児用の描きやすいクレヨンをテーブルに並べ、唯をベビーチェアに座らせた。
「唯はなにがほしいかな?」
おもちゃ屋のチラシを唯の前に並べ、ほしいものを選ばせることした。
男の子用、女の子用、とあるが、唯のほしいものが男の子用とは限らないので、一応どちらも見せる。
「まま~こえにする」
これ、が言えない舌っ足らずの唯がかわいくて、
零は頭をわしゃわしゃと撫でた。
唯が選んだのは大きいサイズのくまのぬいぐるみで、その首には赤色のリボンが飾られている。
「これにする?じゃあ、ここにお絵描きしようね」
チラシを退けて、今度は画用紙を置く。
お手紙なのでレターセットの方が好ましいのだが、
唯は力いっぱい描くので、零は紙が切れてしまうのを懸念したのだ。
3歳になった唯はある程度お絵描きができるようになって、よくママとパパを描いては2人を喜ばせている。
と言ってもまだ難しいので薄橙色のクレヨンをぐるぐると走らせ顔の形を描いたり、
零が丸い形のシールにマジックで黒く塗ったものを目として貼ったり、簡易的な似顔絵だ。
圭吾はそれをファイリングして、夜な夜な眺めてはにこにこしている。
零は唯に茶色のクレヨンを握らせ、
「ここに描いてごらん」
と言った。
唯はママとパパを描く時同様、画用紙いっぱいにぐるぐるとくまの輪郭を描く。
零の指示で耳も二つ描き、仕上げに黒いシールを貼ってくまの完成だ。
最後に零が ゆい と絵の作者である唯の名前を描き、それを窓に貼った。
「これで唯にもさんたさんくるね」
「うん!」
クリスマスの前夜、零は唯を苦労して寝かしつけ、
その間に圭吾は二つのプレゼントを取りに車へ向かった。
圭吾は唯が起きないよう、そっとドアを開け、音を立てないよう静かに部屋を歩いた。
寝かしつけている間に眠ってしまったのか、零もかわいい寝顔ですうすうと寝息をたてている。
その枕元に、そっとプレゼントの包みを置いた。
そして、その横に眠る二人の愛息子にも。
こうしてサンタの役割を果たし、圭吾は眠りについた。
「まあまあ~ぱあぱあ~」
二人は唯にとんとん、とされ、朝の6時に起きた。
相変わらず圭吾は朝に弱く、
「ん…」
と言ったきり目をぎゅっと瞑っている。
「…ゆい?起きたの…?」
「さんたさんきたの~」
唯は自分よりも大きなプレゼントの包みを嬉しそうに抱えていた。
「ん~よかったねぇ。開けてみようか~」
そう言って、零は唯と一緒にリボンを引っ張る。
中身を取り出してやると、唯はぴょんぴょんと飛び跳ね、
「くま~!!」
と喜んでいる。
チラシに載っていたくまのぬいぐるみは、
思ったよりも大きく、ふわふわしている。
短い毛なので、唯がその毛を吸い込む心配も無さそうだ。
圭吾を起こしてはいけない、と思った零は、唯とくまを抱き上げ、リビングに向かおうとする。
すると、カサ、と何かの音がして、思わず振り返った。
「…あれ?これって…」
一度唯とくまをベットに下ろし、その包みを開ける。
「わぁ…かわいい…」
その包みの中には、もこもこのルームソックスが入っていた。
零は冷え性なので、常にルームソックスを履いている。
それは唯を妊娠中に圭吾が買ってくれた物なので、
そろそろ新しいのを買わないと破れそうだな、と思っていたのだ。
「圭吾さん、ちゃんと見ててくれたんだ…」
うれしくて、早速タグを切って履いてみる。
足の裏の部分には滑り止めが付いていて、安全だ。
圭吾へのお礼として、眠っているその額にちゅ、とキスを落とし、唯とくまを連れてリビングへ行く。
そして自分も用意していた圭吾へのプレゼントを、
枕元に置いた。
喜んでくれるといいな…と零は思う。
くまはソファーに置き、唯をベビーチェアに座らせ、朝食を二人で食べた。
それでも圭吾は起きてこないので、まあ休みだしいいか。ということで、唯にテレビを見せながら洗濯物に取り掛かる。
そろそろ干し終わる、というところで眠そうな圭吾が起きてきた。
「…れい」
「あ、圭吾さん、おはようございます」
とてとて、と圭吾の元へ小走りして、ぎゅう、と抱きつく。
「これ、凄く暖かいです。ありがとう、サンタさん」
サンタさん、の部分は唯に聞こえないよう小声で言った。
圭吾は嬉しそうにぎゅ、と抱き返し、そして自分もプレゼントを貰ったことに喜んだ。
「零も、これありがとう。すごく気に入ったよ」
零があげたのは、シンプルで上品なネクタイだ。
独身時代の貯金を使って、奮発していいネクタイを選んだ。
この日の昼食は、零によって特別なランチプレートが出された。
ポテトにブロッコリーを細かく刻んだものを混ぜ、それを絞り袋でツリーの形に絞ったものや、
唯も食べやすいようにしたミニハンバーグ。
オムライスには、ケチャップで「メリークリスマス」と書かれている。
デザートにはプチシューを二つずつ、
チョコレートを接着剤代わりに塗ってくっつけ、
チョコペンで目や口を描いたミニ雪だるま。
唯も食べやすく、見た目もかわいいのでどれも好評だった。
「零、ほんとに凄いや。ありがとね」
来年も再来年も、こうして家族みんなでクリスマスを過ごせますように。
零は画用紙と幼児用の描きやすいクレヨンをテーブルに並べ、唯をベビーチェアに座らせた。
「唯はなにがほしいかな?」
おもちゃ屋のチラシを唯の前に並べ、ほしいものを選ばせることした。
男の子用、女の子用、とあるが、唯のほしいものが男の子用とは限らないので、一応どちらも見せる。
「まま~こえにする」
これ、が言えない舌っ足らずの唯がかわいくて、
零は頭をわしゃわしゃと撫でた。
唯が選んだのは大きいサイズのくまのぬいぐるみで、その首には赤色のリボンが飾られている。
「これにする?じゃあ、ここにお絵描きしようね」
チラシを退けて、今度は画用紙を置く。
お手紙なのでレターセットの方が好ましいのだが、
唯は力いっぱい描くので、零は紙が切れてしまうのを懸念したのだ。
3歳になった唯はある程度お絵描きができるようになって、よくママとパパを描いては2人を喜ばせている。
と言ってもまだ難しいので薄橙色のクレヨンをぐるぐると走らせ顔の形を描いたり、
零が丸い形のシールにマジックで黒く塗ったものを目として貼ったり、簡易的な似顔絵だ。
圭吾はそれをファイリングして、夜な夜な眺めてはにこにこしている。
零は唯に茶色のクレヨンを握らせ、
「ここに描いてごらん」
と言った。
唯はママとパパを描く時同様、画用紙いっぱいにぐるぐるとくまの輪郭を描く。
零の指示で耳も二つ描き、仕上げに黒いシールを貼ってくまの完成だ。
最後に零が ゆい と絵の作者である唯の名前を描き、それを窓に貼った。
「これで唯にもさんたさんくるね」
「うん!」
クリスマスの前夜、零は唯を苦労して寝かしつけ、
その間に圭吾は二つのプレゼントを取りに車へ向かった。
圭吾は唯が起きないよう、そっとドアを開け、音を立てないよう静かに部屋を歩いた。
寝かしつけている間に眠ってしまったのか、零もかわいい寝顔ですうすうと寝息をたてている。
その枕元に、そっとプレゼントの包みを置いた。
そして、その横に眠る二人の愛息子にも。
こうしてサンタの役割を果たし、圭吾は眠りについた。
「まあまあ~ぱあぱあ~」
二人は唯にとんとん、とされ、朝の6時に起きた。
相変わらず圭吾は朝に弱く、
「ん…」
と言ったきり目をぎゅっと瞑っている。
「…ゆい?起きたの…?」
「さんたさんきたの~」
唯は自分よりも大きなプレゼントの包みを嬉しそうに抱えていた。
「ん~よかったねぇ。開けてみようか~」
そう言って、零は唯と一緒にリボンを引っ張る。
中身を取り出してやると、唯はぴょんぴょんと飛び跳ね、
「くま~!!」
と喜んでいる。
チラシに載っていたくまのぬいぐるみは、
思ったよりも大きく、ふわふわしている。
短い毛なので、唯がその毛を吸い込む心配も無さそうだ。
圭吾を起こしてはいけない、と思った零は、唯とくまを抱き上げ、リビングに向かおうとする。
すると、カサ、と何かの音がして、思わず振り返った。
「…あれ?これって…」
一度唯とくまをベットに下ろし、その包みを開ける。
「わぁ…かわいい…」
その包みの中には、もこもこのルームソックスが入っていた。
零は冷え性なので、常にルームソックスを履いている。
それは唯を妊娠中に圭吾が買ってくれた物なので、
そろそろ新しいのを買わないと破れそうだな、と思っていたのだ。
「圭吾さん、ちゃんと見ててくれたんだ…」
うれしくて、早速タグを切って履いてみる。
足の裏の部分には滑り止めが付いていて、安全だ。
圭吾へのお礼として、眠っているその額にちゅ、とキスを落とし、唯とくまを連れてリビングへ行く。
そして自分も用意していた圭吾へのプレゼントを、
枕元に置いた。
喜んでくれるといいな…と零は思う。
くまはソファーに置き、唯をベビーチェアに座らせ、朝食を二人で食べた。
それでも圭吾は起きてこないので、まあ休みだしいいか。ということで、唯にテレビを見せながら洗濯物に取り掛かる。
そろそろ干し終わる、というところで眠そうな圭吾が起きてきた。
「…れい」
「あ、圭吾さん、おはようございます」
とてとて、と圭吾の元へ小走りして、ぎゅう、と抱きつく。
「これ、凄く暖かいです。ありがとう、サンタさん」
サンタさん、の部分は唯に聞こえないよう小声で言った。
圭吾は嬉しそうにぎゅ、と抱き返し、そして自分もプレゼントを貰ったことに喜んだ。
「零も、これありがとう。すごく気に入ったよ」
零があげたのは、シンプルで上品なネクタイだ。
独身時代の貯金を使って、奮発していいネクタイを選んだ。
この日の昼食は、零によって特別なランチプレートが出された。
ポテトにブロッコリーを細かく刻んだものを混ぜ、それを絞り袋でツリーの形に絞ったものや、
唯も食べやすいようにしたミニハンバーグ。
オムライスには、ケチャップで「メリークリスマス」と書かれている。
デザートにはプチシューを二つずつ、
チョコレートを接着剤代わりに塗ってくっつけ、
チョコペンで目や口を描いたミニ雪だるま。
唯も食べやすく、見た目もかわいいのでどれも好評だった。
「零、ほんとに凄いや。ありがとね」
来年も再来年も、こうして家族みんなでクリスマスを過ごせますように。
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