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番外編、〇〇とゆい
ねことゆい
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「唯、絶対ママのこれに掴まっててね」
突然の土砂降りに、買い物帰りの零と唯は大慌て。
しかも今日はお米も買っていて、両手が塞がっている。
唯にショルダーバッグの紐を掴ませ、帰路を急ぐ。
急ぎ足で帰っていると、突然唯がショルダーバッグの紐を放し、走り出した。
「…え?!ちょ、唯!だめ!ママのところに戻ってきて!!!!」
雨で動きが鈍ると同時に、この重い荷物で追いかけることが出来ない。
幸いここは車通りの少ない場所だが、
何かあってからでは遅い。
零は荷物を放り、一目散に駆け寄る。
「ゆい!!」
すると、突然唯が座り込んだ。
普段ならママの言うことを聞いていい子にしている唯が、なぜ走り出してしまったかというと。
「ままぁ~にゃんにゃ~にゃんにゃっ」
え???
唯が座り込んだそこには、小さな箱がある。
中を見ると、たしかにそこには小さな小さな子猫がいた。
「ねこ???なんで?」
猫は雨に濡れて、ぶるぶると震えている。
箱には「拾ってください」と書かれており、
この猫が野良ではないことが分かった。
このままでは死んでしまうと思い、唯にその小さな箱を抱えさせる。
零は唯を抱っこして、先程放った荷物を取りに行く。
何はともあれ、唯が無事でよかった。
家に着くと、雨に濡れた唯を温かいお風呂に入れ、
震える子猫も一緒に洗う。
「みぃみぃ」
子猫は元気に鳴いている。
水が苦手なようで、何度も逃れようと零の手の中で蠢くが、こんなに冷えているので暖めなくてはならない。
お風呂からあがると、零は圭吾に子猫用のごはんとミルクを買ってきてほしいと連絡した。
唯に服を着せ、子猫は唯が赤ちゃんだった時の毛布で包んだ。
終始みぃみぃと鳴いている。
お風呂から上がってぽかぽかになった唯がお気に入りの本を持ってきて、
またいつものように
「まま~こえよむ」
と言うのかと思ったが、そうではなかった。
あ、この本、箱に入れて捨てられた、子猫を拾う本だ。
唯がなぜ急に走り出したかというと、
自分がいつも読んでもらう本と、同じことが起きたからだ。
本の猫はダンボールの箱に捨てられ、
そこに唯と同じような小さい男の子が登場する。
唯はそれを覚えていて、駆け出したのだ。
「唯、えらかったね。でも、ママの傍から離れちゃだめだよ、ママ悲しくなるからね」
うん、と唯は約束してくれた。
でも今度から、買い物は片手で持てる範囲にしよう。
唯はいつもショルダーバッグの紐を掴んでそれを離さなかったが、こういうイレギュラーな事態がまたいつかくるかもしれない。
圭吾は帰ると、急いで子猫用のごはんとミルクを零に手渡した。
「ありがとうございます、あの雨の中、唯がこの子を見つけたんです」
圭吾もまた、唯を褒めちぎる。
あの本は圭吾が買ってきたものだ。
唯はそれを気に入って、毎日毎日零に読ませては楽しそうに聞いていた。
子猫はなかなかミルクを飲んでくれなくて、
赤ちゃんだった時唯用にストックしていたガーゼを引っ張り出し、
それに染み込ませて与える。
少しずつだが飲んでくれてよかった。
今日はもう遅いので、明日動物病院が開く時間に行ってこよう。
子猫に気を取られ、夕飯は予定していたものとは別のものになった。
零は得意のシチューを作る。
ご飯も炊いてる暇がなかったのでこれまた朝用にストックしていた食パンをちぎり、シチューに浸して食べる。
唯と圭吾は美味しそうにもぐもぐと食べていた。
病院に行くと、有難いことに感染症にはなっていなかった。
きっと捨てられて数十分、長くても数時間程度だったのだろうと言われた。
予防注射を打ってもらい、子猫と暮らすための道具を色々と買った。
唯が気に入ったピンク色の子猫用おもちゃも買う。
とりあえず、元気でよかった。
圭吾が子猫の名前をちびたにしようと提案したが、
すぐに大きくなるのにちびっていうのもな、ということで、「ももた」になった。
漢字で書くと、漢数字の百に、太。
長生きしてね、の意味で百を選んだ。
3歳の唯にはまだ少し発音しにくいが、
ももただよ、と言ってもいまいちわからないようなので、唯だけはにゃんにゃと呼んでいる。
あんなに小さかった唯が、今はももたのお世話をしたがり、寝る時には零がいつも唯にしてあげるように、お腹を手で優しくトントン、として寝かせている。
零が唯をトントン、唯がももたをトントン。
みんなだけずるい!と圭吾は零をトントンする。
これじゃ寝られませんね、と微笑む零を、圭吾は心底愛おしく思った。
突然の土砂降りに、買い物帰りの零と唯は大慌て。
しかも今日はお米も買っていて、両手が塞がっている。
唯にショルダーバッグの紐を掴ませ、帰路を急ぐ。
急ぎ足で帰っていると、突然唯がショルダーバッグの紐を放し、走り出した。
「…え?!ちょ、唯!だめ!ママのところに戻ってきて!!!!」
雨で動きが鈍ると同時に、この重い荷物で追いかけることが出来ない。
幸いここは車通りの少ない場所だが、
何かあってからでは遅い。
零は荷物を放り、一目散に駆け寄る。
「ゆい!!」
すると、突然唯が座り込んだ。
普段ならママの言うことを聞いていい子にしている唯が、なぜ走り出してしまったかというと。
「ままぁ~にゃんにゃ~にゃんにゃっ」
え???
唯が座り込んだそこには、小さな箱がある。
中を見ると、たしかにそこには小さな小さな子猫がいた。
「ねこ???なんで?」
猫は雨に濡れて、ぶるぶると震えている。
箱には「拾ってください」と書かれており、
この猫が野良ではないことが分かった。
このままでは死んでしまうと思い、唯にその小さな箱を抱えさせる。
零は唯を抱っこして、先程放った荷物を取りに行く。
何はともあれ、唯が無事でよかった。
家に着くと、雨に濡れた唯を温かいお風呂に入れ、
震える子猫も一緒に洗う。
「みぃみぃ」
子猫は元気に鳴いている。
水が苦手なようで、何度も逃れようと零の手の中で蠢くが、こんなに冷えているので暖めなくてはならない。
お風呂からあがると、零は圭吾に子猫用のごはんとミルクを買ってきてほしいと連絡した。
唯に服を着せ、子猫は唯が赤ちゃんだった時の毛布で包んだ。
終始みぃみぃと鳴いている。
お風呂から上がってぽかぽかになった唯がお気に入りの本を持ってきて、
またいつものように
「まま~こえよむ」
と言うのかと思ったが、そうではなかった。
あ、この本、箱に入れて捨てられた、子猫を拾う本だ。
唯がなぜ急に走り出したかというと、
自分がいつも読んでもらう本と、同じことが起きたからだ。
本の猫はダンボールの箱に捨てられ、
そこに唯と同じような小さい男の子が登場する。
唯はそれを覚えていて、駆け出したのだ。
「唯、えらかったね。でも、ママの傍から離れちゃだめだよ、ママ悲しくなるからね」
うん、と唯は約束してくれた。
でも今度から、買い物は片手で持てる範囲にしよう。
唯はいつもショルダーバッグの紐を掴んでそれを離さなかったが、こういうイレギュラーな事態がまたいつかくるかもしれない。
圭吾は帰ると、急いで子猫用のごはんとミルクを零に手渡した。
「ありがとうございます、あの雨の中、唯がこの子を見つけたんです」
圭吾もまた、唯を褒めちぎる。
あの本は圭吾が買ってきたものだ。
唯はそれを気に入って、毎日毎日零に読ませては楽しそうに聞いていた。
子猫はなかなかミルクを飲んでくれなくて、
赤ちゃんだった時唯用にストックしていたガーゼを引っ張り出し、
それに染み込ませて与える。
少しずつだが飲んでくれてよかった。
今日はもう遅いので、明日動物病院が開く時間に行ってこよう。
子猫に気を取られ、夕飯は予定していたものとは別のものになった。
零は得意のシチューを作る。
ご飯も炊いてる暇がなかったのでこれまた朝用にストックしていた食パンをちぎり、シチューに浸して食べる。
唯と圭吾は美味しそうにもぐもぐと食べていた。
病院に行くと、有難いことに感染症にはなっていなかった。
きっと捨てられて数十分、長くても数時間程度だったのだろうと言われた。
予防注射を打ってもらい、子猫と暮らすための道具を色々と買った。
唯が気に入ったピンク色の子猫用おもちゃも買う。
とりあえず、元気でよかった。
圭吾が子猫の名前をちびたにしようと提案したが、
すぐに大きくなるのにちびっていうのもな、ということで、「ももた」になった。
漢字で書くと、漢数字の百に、太。
長生きしてね、の意味で百を選んだ。
3歳の唯にはまだ少し発音しにくいが、
ももただよ、と言ってもいまいちわからないようなので、唯だけはにゃんにゃと呼んでいる。
あんなに小さかった唯が、今はももたのお世話をしたがり、寝る時には零がいつも唯にしてあげるように、お腹を手で優しくトントン、として寝かせている。
零が唯をトントン、唯がももたをトントン。
みんなだけずるい!と圭吾は零をトントンする。
これじゃ寝られませんね、と微笑む零を、圭吾は心底愛おしく思った。
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