強制結婚させられた相手がすきすぎる

今日も元気に花嶺家

「いや～晴れてよかったね～」
ね～唯くん、と息子の頬をふにふにする圭吾は、
すっかり父親の顔だ。
零が命懸けで出産したあの日から、もうすぐ二年が経とうとしている。
今日は家族三人でピクニックだ。
零の妊娠が発覚したのがこの場所で、あの時圭吾は、「子どもができたら、またこうしてピクニックしたいね」と話していた。
零は朝から三人分のお弁当を作り、張り切っていた。
食べやすいように、あの時と同じおにぎりとサンドイッチも作った。
もちろん、おにぎりの中身はそれぞれの好物。
「まぁ～ままこえたべう～これ食べる」
唯は最近よく喋るようになり、最初の頃は
「まぁーまぁ～まぁっ」
と零のことをたくさん呼んでは喜ばせていた。
実のところ、ままより先に呼ばれたのは、
紛れもない圭吾であった。
ぱ、の方が発音しやすいらしく、ママ同様
「ぱっぱっぱっぱっ｣
と連呼しては楽しそうにきゃははと笑っていた。
「ん～唯くんおにぎりたべるの～？どーぞ～」
慣れた手つきで唯用の小さなおにぎりを食べさせる。
中には、唯のだいすきなおさかなソーセージを入れた。
ソーセージは小さく切り、それを炒めてほんの少しだけ醤油を加え、おにぎりのご飯と合うようにした。
唯はもぐもぐと物凄い勢いでそれを頬張る。
「唯～ゆっくりだよゆっくり！」
あまりにも食べるスピードがはやいので、
喉につまらないか心配だ。
「零、俺が食べさせるから零も食べて？ほら」
自分のことは二の次になった母親の零。
気がつくと一食しか胃に入れていない日もあるので、なるべく圭吾が零の食事の時間を確保する。
授乳もするので、栄養を摂らなくてはならない。
それも、唯が二歳になるまでだが…。
一般的に授乳期間は子どもが二歳になるまでが良いとされているので、二歳の誕生日が来るまでは母乳を与えようと話している。
「そうですか？じゃあ、お言葉に甘えて僕もおにぎり食べようかな」
零のおにぎりには照り焼きチキンが入っている。
それぞれの好物にしたため調理の手間や時間がかかったが、せっかくのピクニックだ。
そのくらいの手間を惜しんでは、十分に楽しめない。
圭吾にはもちろん唐揚げおにぎりを作った。
初めてのピクニックデートをした日、つまり妊娠が発覚した日にもそのおにぎりを作っていて、
圭吾は美味しそうにぱくぱくと食べていた。
あ、なんだかあの時の圭吾さんと今の唯、ちょっと似てるかも。
親子の似ているところを探すとごまんと出てくるが、日常にその似ている部分を見つけると思わずふふ、と笑いたくなってしまう。

食後少しお腹を落ち着かせてから、圭吾と唯は遊具へ遊びに行った。
零は早起きだったため、少し昼寝をする。
目を瞑っていると、
圭吾と初めて会った日のことや、一緒に暮らし始めた頃のことを思い出す。
唯がお腹に来てくれたのは結婚してから数ヶ月の事だったので、二人きりだったのはほんの数ヶ月。
今でもたまに唯をどちらかの実家に預け、
二人きりでのんびり過ごしたり、夫婦としての時間をきちんと取るようにしている。
それでも、唯と少し離れただけで、
「今頃おばあちゃんとたのしく遊んでるかな？」
とか、
「あ～さみしいな…はやく帰ってこないかな…」
なんて思ったりするので、親とは面白い生き物だ。
そんな感じで家族三人、日々高めあって成長している。

「零～」
「まぁ～」
今日も花嶺家は、とても賑やかだ。

唯もすっかり楽しんだようで、疲れてパパの腕の中で眠っている。
ここへは車で来たのでチャイルドシートに乗せ、零はその横に座る。
唯を乗せる時圭吾の隣はいつも空いていて、たまに二人で出かける時なんかは、
「なんか零が横にいるの、新鮮でいいね」
と圭吾の楽しそうな横顔を眺めている。
「たのしかったですね、また行きたいな」
唯を起こさないように小声で話す零。
圭吾はそんな零の声を聞きながら、
本当に、幸せだなあ…と思った。