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出会い〜恋人になるまで
突然
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兄の家に居候し始めてから、もう三週間が経っている。
本当は一週間のつもりだったのに、帰る気になれなくてそのままズルズルと。
携帯も置いてきたし、榊さんには何も言っていない。
俺がいなくても、きっとそれなりに暮らしているはずだ。
戻る気がないと言えば、それは嘘になる。
毎朝隣にいたはずの温もりを感じられないのは寂しい。
会いたい。
また、抱いて欲しい。
兄のいない平日の昼間は、時々そうやって自分を慰めている。
それから家事をして、兄の帰りを待つ。
どんな手抜き料理でも美味しい美味しいと食べてくれて、この前味噌汁を作った時には「母さんそっくりの味付けだな」と唯一母親に教えてもらったレシピをしっかり当てられた。
そんな感じで、榊さんのいない家で普通に暮らしている。
生活費はと言うと、今まで榊さんに貰っていたお給料兼お小遣いを使っている。
兄はいらないと言ったが、それでは困る。
榊さんほどの高収入ではないだろうし、ましてや兄弟だ。
対等にいたい。
そして、自分でもびっくりしたことだけど、俺はあまり兄に甘えない。
今まで、榊さんにはべったりと甘えていたのに。
兄の前では気を使う。
ソファーに寝転がったりはしないし、テレビを見て大爆笑することもない。
兄弟だけど、俺たちは兄弟らしく育てられてこなかった。
兄は俺より10歳も上で、物心ついた時からお兄ちゃん、よりお兄さん、だったような気がする。
母親に厳しく育てられ、期待通りに育った兄は、今でも母親とちょくちょく会っているらしい。
俺はと言うと、ここ数年は全く。
そういうわけで、榊さんといる時のような安心感はあまり得られなかった。
「柚希、お前に会わせたい人がいる」
夕飯を作っていると、突然兄に話しかけられた。
会わせたい人?ああ、彼女でもできたのかな。
そんで、俺は出てけってことか…。
ぐるぐると頭の中で考えていると、突然玄関からリビングに続くドアが開いた。
「…え?」
そこには、会いたかった榊さんがいた。
また抱いて欲しいと、何度も願った榊さんが。
「…なんで……」
呆然としていると、榊さんが入ってきて、目の前で頭を下げられた。
もう、意味がわからない。
「本当に申し訳ないことをした。
もし、しのが嫌じゃなければ、帰ってきてくれないか…」
エプロンを握り、これは榊さんが買ってくれたものだったことを思い出す。
それだけじゃない。
俺の物は全部、榊さんが選んでくれた。
「えっと…まず…なんで榊さんが…」
兄に助けを求めると、兄も申し訳なさそうな顔をしている。
「すまない、ゆず。俺が榊さんに直接話しに行った。
それで、会わせてほしいと言うから…ごめん」
榊さんは頭を下げたままだし、兄は昔みたいな呼び方に戻っているし、もう本当に訳が分からない。
会えて嬉しいのに、また、苦しい。
戻ったら、また榊さんに抱かれるの?
それで、愛されてもないのに、身体だけが汚れていくの…?
「…榊さん、とりあえず顔上げて」
俺が言うと、榊さんはゆっくりと顔を上げた。
やつれている。
最後に見た時より、老けた、のか?
萎れた花みたいだ。
「俺は今のままで帰るつもりは無いよ。
一週間っていうのを破ったのはごめん。
でも、もうあんな思いはしたくない」
榊さんは「そうか」と言うと、部屋を出ていった。
兄はそれを追いかけるように。
もう、何が何だかわからなくて、涙が出てくるし、苦しい。
本当は一週間のつもりだったのに、帰る気になれなくてそのままズルズルと。
携帯も置いてきたし、榊さんには何も言っていない。
俺がいなくても、きっとそれなりに暮らしているはずだ。
戻る気がないと言えば、それは嘘になる。
毎朝隣にいたはずの温もりを感じられないのは寂しい。
会いたい。
また、抱いて欲しい。
兄のいない平日の昼間は、時々そうやって自分を慰めている。
それから家事をして、兄の帰りを待つ。
どんな手抜き料理でも美味しい美味しいと食べてくれて、この前味噌汁を作った時には「母さんそっくりの味付けだな」と唯一母親に教えてもらったレシピをしっかり当てられた。
そんな感じで、榊さんのいない家で普通に暮らしている。
生活費はと言うと、今まで榊さんに貰っていたお給料兼お小遣いを使っている。
兄はいらないと言ったが、それでは困る。
榊さんほどの高収入ではないだろうし、ましてや兄弟だ。
対等にいたい。
そして、自分でもびっくりしたことだけど、俺はあまり兄に甘えない。
今まで、榊さんにはべったりと甘えていたのに。
兄の前では気を使う。
ソファーに寝転がったりはしないし、テレビを見て大爆笑することもない。
兄弟だけど、俺たちは兄弟らしく育てられてこなかった。
兄は俺より10歳も上で、物心ついた時からお兄ちゃん、よりお兄さん、だったような気がする。
母親に厳しく育てられ、期待通りに育った兄は、今でも母親とちょくちょく会っているらしい。
俺はと言うと、ここ数年は全く。
そういうわけで、榊さんといる時のような安心感はあまり得られなかった。
「柚希、お前に会わせたい人がいる」
夕飯を作っていると、突然兄に話しかけられた。
会わせたい人?ああ、彼女でもできたのかな。
そんで、俺は出てけってことか…。
ぐるぐると頭の中で考えていると、突然玄関からリビングに続くドアが開いた。
「…え?」
そこには、会いたかった榊さんがいた。
また抱いて欲しいと、何度も願った榊さんが。
「…なんで……」
呆然としていると、榊さんが入ってきて、目の前で頭を下げられた。
もう、意味がわからない。
「本当に申し訳ないことをした。
もし、しのが嫌じゃなければ、帰ってきてくれないか…」
エプロンを握り、これは榊さんが買ってくれたものだったことを思い出す。
それだけじゃない。
俺の物は全部、榊さんが選んでくれた。
「えっと…まず…なんで榊さんが…」
兄に助けを求めると、兄も申し訳なさそうな顔をしている。
「すまない、ゆず。俺が榊さんに直接話しに行った。
それで、会わせてほしいと言うから…ごめん」
榊さんは頭を下げたままだし、兄は昔みたいな呼び方に戻っているし、もう本当に訳が分からない。
会えて嬉しいのに、また、苦しい。
戻ったら、また榊さんに抱かれるの?
それで、愛されてもないのに、身体だけが汚れていくの…?
「…榊さん、とりあえず顔上げて」
俺が言うと、榊さんはゆっくりと顔を上げた。
やつれている。
最後に見た時より、老けた、のか?
萎れた花みたいだ。
「俺は今のままで帰るつもりは無いよ。
一週間っていうのを破ったのはごめん。
でも、もうあんな思いはしたくない」
榊さんは「そうか」と言うと、部屋を出ていった。
兄はそれを追いかけるように。
もう、何が何だかわからなくて、涙が出てくるし、苦しい。
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