37 / 51
筧 義松Ⅲ
3
しおりを挟む
土曜日の待合室は混み合っていた。中にはすでに三人座っていて、義松が待合室の入り口を覗くと中の三人はお互い気まずそうに奥につめてくれた。
ひとり、またひとりと案内され、空いたスペースに新たに来店した客が座る。
客層はまちまちだ。多いのは四十代と、五十代前半くらいまでの男性。当然もっと上もいるし、逆に義松よりも若そうな客もいる。
「アオイさんでお待ちのお客さま、どうぞ。ご案内いたします」
八重歯の男がにこやかに待合室に顔を出す。ようやっと義松の番がやってきた。
「よっ」
カーテンの向こうに案内されると、アオイは開口一番こう言った。
今日はモコっとした白のハイネックのニットに……下はやっぱりショートパンツ。このアンバランスさがなんともエロい。
アオイは意味深ににやっと笑ったあと、突然接客用の可愛らしい笑顔を浮かべ「今日はこちらのお部屋でお願いします~」と義松の手を引く。
部屋に案内され、パタンと扉が閉じた瞬間、呆れたような揶揄するような声音で「あんた、とうとうコスプレにまで手を出したか」と言った。
「はは……前回、あの受付の人に薦められて、ちょっと気になっちゃって……」
義松の方から最初に聞いたことは、敢えて黙っておく。熱心に薦められたことは間違いじゃない。
「加藤さん? あ~……」
八重歯の男は、どうやら加藤というらしい。
アオイはなるほど納得といった様子で苦笑する。
「それで? 何って薦められたのさ」
「アオイさんは脚が綺麗だから、スカートが絶対似合うって」
「ふ~ん……で、なんでミニスカポリス? 俺に逮捕されたいの?」
突然、アオイの雰囲気が変わった。義松の首に腕を回し、妖しく微笑んで小首を傾げる。義松はごくりと生唾を飲んだ。
逮捕されたい。
「なんつって」と、アオイはケラケラ笑って離れようとしたが、義松はその腕を捕まえるとぎゅっと力いっぱい抱き締めた。
「逮捕してください……」
耳元で囁くとアオイが義松の腕の中で身じろぐ。
「わかったから……離せって。着替えらんないだろ?」
めずらしく照れているのか、頬がほんのりと染まっているような気がする。だが照明をやや落としたこの個室内では、はっきりとはわからない。
ミニスカポリスの衣装はあらかじめ用意されていたようだ。ハンガーから吊り下げられたそれは、ドアフックに引っ掛けられて揺れている。
アオイはおもむろに白のニットを脱ぎ――ニットの下は半袖のTシャツを着ていた――その様子を凝視する義松に気付くと、にやりと笑う。それから胸元を隠し「見んなよ、えっち」とわざとらしく恥じらうポーズをする。
思わず慌てて目を逸らしたが、そんな必要はまったくないことに気付く。しかし一度目を逸らした手前、ふたたび凝視するのはためらわれた。ちらりと横目に着替えを覗く義松に、アオイがくつくつと喉の奥で笑う。
義松の不埒な視線を感じながら、アオイは堂々と脱ぐような無粋な真似はしなかった。ショートパンツの上から、びっくりするほど短いタイトスカートをはいたあと、よじよじとショートパンツを脱ぎ捨てる。
「見ていいよ」と、アオイの許可が下り(横目ではずっと覗き見ていたけれど)義松はようやくアオイの姿をみとめると、ほうと溜め息をついた。
評判の美脚が、ミニスカートからすらりと伸びている。
似たような露出度でも、いつものショートパンツとミニスカポリスとでは破壊力が違う。
「すごい……」
思わず感嘆の声を漏らせば、アオイはややうんざりしたように「ほんと、キミ、会うたびに変態になってくね」と笑った。
「アオイさんのせいですよ。だから、責任取ってください……」
義松はアオイの手を取り、すでに熱く硬くなった自身へと誘う。ズボンの上からペニスを握らせた。
「何でもう勃ってんの……? どこにそんな要素があったんだよ」
アオイは頬を染め、ふいと目を逸らした。
やはり照れているらしいその様子に、義松はごくりと本日二度目の生唾を飲む。
しかし義松は、いやいや騙されるものかと首を振る。これしきのことでアオイが照れるはずがない。これは今日の演出だ、そうに違いない。
「アオイさんが可愛すぎるせいですよ」
アオイにペニスを握らせたまま、義松は彼の腰をぐいと抱き寄せた。
剥き出しの太腿に手を滑らせ、いやらしい動きで撫でさする。
ぴくん、とアオイが反応した。
その反応に気をよくした義松は、調子に乗ってスカートの中に侵入しようと試みる。しかしやはりと言うべきか、際どい場所に手が伸びる前にアオイにピシャリと手を叩かれた。
「いたた……」
「調子乗りすぎ」
「すみません」
義松は苦笑いで誤魔化して、ベッドのふちに腰掛けるとその上にアオイを跨らせた。
水色の開襟シャツに、胸元にはそれっぽい刺繍のエンブレム。てらてらとした安っぽい光沢のある生地のタイに、濃紺のミニタイトスカート。腰元の飾りベルトには、おもちゃの手錠が引っ掛かっている。
極端に短いスカートは、少し足を開いただけで中が見えた。
ひとり、またひとりと案内され、空いたスペースに新たに来店した客が座る。
客層はまちまちだ。多いのは四十代と、五十代前半くらいまでの男性。当然もっと上もいるし、逆に義松よりも若そうな客もいる。
「アオイさんでお待ちのお客さま、どうぞ。ご案内いたします」
八重歯の男がにこやかに待合室に顔を出す。ようやっと義松の番がやってきた。
「よっ」
カーテンの向こうに案内されると、アオイは開口一番こう言った。
今日はモコっとした白のハイネックのニットに……下はやっぱりショートパンツ。このアンバランスさがなんともエロい。
アオイは意味深ににやっと笑ったあと、突然接客用の可愛らしい笑顔を浮かべ「今日はこちらのお部屋でお願いします~」と義松の手を引く。
部屋に案内され、パタンと扉が閉じた瞬間、呆れたような揶揄するような声音で「あんた、とうとうコスプレにまで手を出したか」と言った。
「はは……前回、あの受付の人に薦められて、ちょっと気になっちゃって……」
義松の方から最初に聞いたことは、敢えて黙っておく。熱心に薦められたことは間違いじゃない。
「加藤さん? あ~……」
八重歯の男は、どうやら加藤というらしい。
アオイはなるほど納得といった様子で苦笑する。
「それで? 何って薦められたのさ」
「アオイさんは脚が綺麗だから、スカートが絶対似合うって」
「ふ~ん……で、なんでミニスカポリス? 俺に逮捕されたいの?」
突然、アオイの雰囲気が変わった。義松の首に腕を回し、妖しく微笑んで小首を傾げる。義松はごくりと生唾を飲んだ。
逮捕されたい。
「なんつって」と、アオイはケラケラ笑って離れようとしたが、義松はその腕を捕まえるとぎゅっと力いっぱい抱き締めた。
「逮捕してください……」
耳元で囁くとアオイが義松の腕の中で身じろぐ。
「わかったから……離せって。着替えらんないだろ?」
めずらしく照れているのか、頬がほんのりと染まっているような気がする。だが照明をやや落としたこの個室内では、はっきりとはわからない。
ミニスカポリスの衣装はあらかじめ用意されていたようだ。ハンガーから吊り下げられたそれは、ドアフックに引っ掛けられて揺れている。
アオイはおもむろに白のニットを脱ぎ――ニットの下は半袖のTシャツを着ていた――その様子を凝視する義松に気付くと、にやりと笑う。それから胸元を隠し「見んなよ、えっち」とわざとらしく恥じらうポーズをする。
思わず慌てて目を逸らしたが、そんな必要はまったくないことに気付く。しかし一度目を逸らした手前、ふたたび凝視するのはためらわれた。ちらりと横目に着替えを覗く義松に、アオイがくつくつと喉の奥で笑う。
義松の不埒な視線を感じながら、アオイは堂々と脱ぐような無粋な真似はしなかった。ショートパンツの上から、びっくりするほど短いタイトスカートをはいたあと、よじよじとショートパンツを脱ぎ捨てる。
「見ていいよ」と、アオイの許可が下り(横目ではずっと覗き見ていたけれど)義松はようやくアオイの姿をみとめると、ほうと溜め息をついた。
評判の美脚が、ミニスカートからすらりと伸びている。
似たような露出度でも、いつものショートパンツとミニスカポリスとでは破壊力が違う。
「すごい……」
思わず感嘆の声を漏らせば、アオイはややうんざりしたように「ほんと、キミ、会うたびに変態になってくね」と笑った。
「アオイさんのせいですよ。だから、責任取ってください……」
義松はアオイの手を取り、すでに熱く硬くなった自身へと誘う。ズボンの上からペニスを握らせた。
「何でもう勃ってんの……? どこにそんな要素があったんだよ」
アオイは頬を染め、ふいと目を逸らした。
やはり照れているらしいその様子に、義松はごくりと本日二度目の生唾を飲む。
しかし義松は、いやいや騙されるものかと首を振る。これしきのことでアオイが照れるはずがない。これは今日の演出だ、そうに違いない。
「アオイさんが可愛すぎるせいですよ」
アオイにペニスを握らせたまま、義松は彼の腰をぐいと抱き寄せた。
剥き出しの太腿に手を滑らせ、いやらしい動きで撫でさする。
ぴくん、とアオイが反応した。
その反応に気をよくした義松は、調子に乗ってスカートの中に侵入しようと試みる。しかしやはりと言うべきか、際どい場所に手が伸びる前にアオイにピシャリと手を叩かれた。
「いたた……」
「調子乗りすぎ」
「すみません」
義松は苦笑いで誤魔化して、ベッドのふちに腰掛けるとその上にアオイを跨らせた。
水色の開襟シャツに、胸元にはそれっぽい刺繍のエンブレム。てらてらとした安っぽい光沢のある生地のタイに、濃紺のミニタイトスカート。腰元の飾りベルトには、おもちゃの手錠が引っ掛かっている。
極端に短いスカートは、少し足を開いただけで中が見えた。
10
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
市川先生の大人の補習授業
夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。
ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。
「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。
◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC)
※「*」がついている回は性描写が含まれております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる