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シン
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四月、亘と望は無事二年生に進級した。
勃起不全の治療の名のもと、セックスするようになってしばらく経つ。エルミタージュのバイトも、望との関係も、亘の息子の状態も相変わらずだった。
コンビニバイトは辞めたが、アパートから一番近いそのコンビニを利用する頻度は高い。
今日もエルミタージュの帰りにビールを買いに行くと、レジには顔見知りがいた。
「よっ、新田くん! お疲れ~」
ベテランのフリーターで、亘がバイトに入ったばかりの頃も、この人がトレーナーをしてくれた。色白で青髭、陰気な見た目の割に中身は意外と陽気なたしかもうすぐ三十歳。
「そうそう、知ってた?」と、亘の後ろに客がいないことを確かめ、井戸端会議をはじめる主婦のノリで話しはじめた。
「あかねちゃん、卒業と同時に同棲してた彼氏と入籍したらしいよ~」
「……へえ。あかねさん、彼氏いたんですね?」
あかねとは、亘が不埒な関係を続けていた先輩だ。三歳上なので卒業し、もう店にはいない。
「うん、結構長いよ~。僕が知ってるだけでも、もう、三年? ……は付き合ってるよ」
何だそれ、と思ったが特に腹は立たなかった。都合のいい相手にしていたのはお互いさまである。
あの日から彼女には会っていない。連絡もしていない。本当にあれっきりだ。インポだと思われたままなのは癪だが、実際インポなのだから仕方がない。
アパートに帰り、望の部屋を開ける。鍵もかけず電気もつけず、窓枠に腰掛けた望は缶ビールを呷りながらまだ五分咲きの桜を眺めていた。ヨレヨレのTシャツとスエット姿だが、恐ろしく絵になる男だ。
「おかえり亘。遅かったね?」
「ビールとつまみ買いに行ってた」
「マジ? やったー!」
亘は座椅子タイプのリクライニングソファに座った。安物のソファはすっかりくたびれている。この上でも、もう何度も望とセックスをした。ふたり分の精液の染みがいたるところにできている。
「そっち座るの? こっちおいで、亘」
「……何考えてるんだよ」と、文句を言いつつ吸い寄せられるように望のそばに行った。
望は残りのビールをぐいと飲み干し、空の缶を足元に置いた。おいで、と言われ素直に望の膝に乗る。
「俺まだ一口も飲んでないんだけど」
「あとにしたら」
「このままだと温くなる……せめて冷蔵庫に……あっ」
シャツの下に忍び込んだ望の手が、亘の乳首を捏ね回した。すっかり感じやすくなったのは、お客のせいだけじゃない。
「望って、実はかなり性欲旺盛だよな……」
「この年で旺盛じゃない男なんているの?」
「だって、今までそんな素振りなかったじゃんか」
「彼女作るのは面倒だし、亘もそうでしょ? かと言ってセフレってのもね……そんな体力あるならバイトしたかったしな。あとゴム買う金がない」
「俺はゴムなしでセックスできるからちょうどいいってか? サイテーかよ」
望はははっと笑っただけで、否定の言葉はなかった。マジでサイテーだ。
「そろそろ黙って。こっちに集中しようね? 亘、自分で下脱いで」
「ん……」
クリクリと乳首を捏ねられ、身悶えながら亘はもぞもぞと自らズボンを脱いだ。
「昨日したばっかりだから、まだ柔らかいね」
下着の中に侵入した望の手が、後孔の入り口をつんつんする。
「ん、ちょ、望……っ」
乳首をクリクリ、後孔をつんつん。もどかしくなって身じろぐ亘に、望は小首を傾げ可愛らしく要求した。
「亘、自分で全部脱いで。自分で挿れてみて?」
「はっ……!? や、やだよそんなのっ」
「ふぅん?」
望はニコリと笑った。
「いいけど、自分で挿れないとこのままだよ?」
亘とて性欲旺盛な若者のうちのひとりだ。ここまで焦らされては我慢も限界である。
「うぅ……」
亘は真っ赤になって唸りながら下着を脱ぎ捨てた。そしてスエットのズボンから望の半勃ちのペニスを取り出し、後ろ手に扱きながら自身の後孔に宛がう。
「うん、上手だよ亘。そのまま力抜いて、俺に体重預けて」
頭を呑み込んでしまえばあとは簡単だった。
自重でずくずくと結合部は深くなり、みるみるうちに望のすべてを呑み込んだ。
「あっ……ぜんぶ、はい、った……?」
「うん、上手にできたね、亘」
「んっ、もぉ無理……望、動いて」
「いいよ、ご褒美」
後ろから亘をぎゅっと抱き締め、自身の膝に座るような形で繋がった亘の身体をゆるゆると揺すった。
「気持ちいい? 気持ちよさそうな顔してる」
「んっ、あ、うんっ、気持ちイイよ……望っ、あ、あっ」
喘ぐ亘の顎を掴み、無理矢理後ろを向かせる。快楽のあまりぽろぽろと涙を零す亘の頬を、望が満足気にペロリと舐める。甘く優しく突き上げながら、望は同時に亘のペニスを扱いた。
「亘、こっちで上手に気持ちよくなれるようになったね?」
完勃ちには及ばないが、望の協力のお蔭で、亘の勃起不全は回復の兆しあり。
緩く勃ち上がったそこからは、とろとろと蜜が溢れ、望の手を汚した。
完全には治っていない。
きっともう、女を抱くことはないだろう。
なぜなら、望相手にしか勃たないのだから。
――重症なのはどっちだ?
勃起不全の治療の名のもと、セックスするようになってしばらく経つ。エルミタージュのバイトも、望との関係も、亘の息子の状態も相変わらずだった。
コンビニバイトは辞めたが、アパートから一番近いそのコンビニを利用する頻度は高い。
今日もエルミタージュの帰りにビールを買いに行くと、レジには顔見知りがいた。
「よっ、新田くん! お疲れ~」
ベテランのフリーターで、亘がバイトに入ったばかりの頃も、この人がトレーナーをしてくれた。色白で青髭、陰気な見た目の割に中身は意外と陽気なたしかもうすぐ三十歳。
「そうそう、知ってた?」と、亘の後ろに客がいないことを確かめ、井戸端会議をはじめる主婦のノリで話しはじめた。
「あかねちゃん、卒業と同時に同棲してた彼氏と入籍したらしいよ~」
「……へえ。あかねさん、彼氏いたんですね?」
あかねとは、亘が不埒な関係を続けていた先輩だ。三歳上なので卒業し、もう店にはいない。
「うん、結構長いよ~。僕が知ってるだけでも、もう、三年? ……は付き合ってるよ」
何だそれ、と思ったが特に腹は立たなかった。都合のいい相手にしていたのはお互いさまである。
あの日から彼女には会っていない。連絡もしていない。本当にあれっきりだ。インポだと思われたままなのは癪だが、実際インポなのだから仕方がない。
アパートに帰り、望の部屋を開ける。鍵もかけず電気もつけず、窓枠に腰掛けた望は缶ビールを呷りながらまだ五分咲きの桜を眺めていた。ヨレヨレのTシャツとスエット姿だが、恐ろしく絵になる男だ。
「おかえり亘。遅かったね?」
「ビールとつまみ買いに行ってた」
「マジ? やったー!」
亘は座椅子タイプのリクライニングソファに座った。安物のソファはすっかりくたびれている。この上でも、もう何度も望とセックスをした。ふたり分の精液の染みがいたるところにできている。
「そっち座るの? こっちおいで、亘」
「……何考えてるんだよ」と、文句を言いつつ吸い寄せられるように望のそばに行った。
望は残りのビールをぐいと飲み干し、空の缶を足元に置いた。おいで、と言われ素直に望の膝に乗る。
「俺まだ一口も飲んでないんだけど」
「あとにしたら」
「このままだと温くなる……せめて冷蔵庫に……あっ」
シャツの下に忍び込んだ望の手が、亘の乳首を捏ね回した。すっかり感じやすくなったのは、お客のせいだけじゃない。
「望って、実はかなり性欲旺盛だよな……」
「この年で旺盛じゃない男なんているの?」
「だって、今までそんな素振りなかったじゃんか」
「彼女作るのは面倒だし、亘もそうでしょ? かと言ってセフレってのもね……そんな体力あるならバイトしたかったしな。あとゴム買う金がない」
「俺はゴムなしでセックスできるからちょうどいいってか? サイテーかよ」
望はははっと笑っただけで、否定の言葉はなかった。マジでサイテーだ。
「そろそろ黙って。こっちに集中しようね? 亘、自分で下脱いで」
「ん……」
クリクリと乳首を捏ねられ、身悶えながら亘はもぞもぞと自らズボンを脱いだ。
「昨日したばっかりだから、まだ柔らかいね」
下着の中に侵入した望の手が、後孔の入り口をつんつんする。
「ん、ちょ、望……っ」
乳首をクリクリ、後孔をつんつん。もどかしくなって身じろぐ亘に、望は小首を傾げ可愛らしく要求した。
「亘、自分で全部脱いで。自分で挿れてみて?」
「はっ……!? や、やだよそんなのっ」
「ふぅん?」
望はニコリと笑った。
「いいけど、自分で挿れないとこのままだよ?」
亘とて性欲旺盛な若者のうちのひとりだ。ここまで焦らされては我慢も限界である。
「うぅ……」
亘は真っ赤になって唸りながら下着を脱ぎ捨てた。そしてスエットのズボンから望の半勃ちのペニスを取り出し、後ろ手に扱きながら自身の後孔に宛がう。
「うん、上手だよ亘。そのまま力抜いて、俺に体重預けて」
頭を呑み込んでしまえばあとは簡単だった。
自重でずくずくと結合部は深くなり、みるみるうちに望のすべてを呑み込んだ。
「あっ……ぜんぶ、はい、った……?」
「うん、上手にできたね、亘」
「んっ、もぉ無理……望、動いて」
「いいよ、ご褒美」
後ろから亘をぎゅっと抱き締め、自身の膝に座るような形で繋がった亘の身体をゆるゆると揺すった。
「気持ちいい? 気持ちよさそうな顔してる」
「んっ、あ、うんっ、気持ちイイよ……望っ、あ、あっ」
喘ぐ亘の顎を掴み、無理矢理後ろを向かせる。快楽のあまりぽろぽろと涙を零す亘の頬を、望が満足気にペロリと舐める。甘く優しく突き上げながら、望は同時に亘のペニスを扱いた。
「亘、こっちで上手に気持ちよくなれるようになったね?」
完勃ちには及ばないが、望の協力のお蔭で、亘の勃起不全は回復の兆しあり。
緩く勃ち上がったそこからは、とろとろと蜜が溢れ、望の手を汚した。
完全には治っていない。
きっともう、女を抱くことはないだろう。
なぜなら、望相手にしか勃たないのだから。
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