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シン
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「しつこく触ってこようとする人がいたら、遠慮なくコールして、スタッフ呼んでくれていいから……あ、阿部さーん」
後藤田が呼ぶと、四十格好の人の好さそうな男がカーテンの向こうから顔を出した。
「彼、阿部さん。頼りになるおじさんだから安心してね」
阿部は「よろしくおねがいします」とにこりと微笑んで、カーテンの向こうにすぐに引っ込んだ。
「ふたりとも、お店で名乗る名前はどうする? 本名でもいいけど」
「本名はちょっと……社長が考えてください、ってのはダメですか」
「自分がこれから使う名前なんだから、愛着持てる名前、考えなよ」
にこにことなぜか嬉しそうな社長に突き放され、望はうーんと唸った。
「亘、どうする?」
「……何でもいいよ、もう」
「ん~……あ、じゃあ亘は〝新〟で、俺は〝葵〟とか? どう?」
それぞれの苗字から一文字取ったそれに、望は我ながらいい案だと満足そうに笑顔を見せる。「いい名前だね、それ」と社長も頷く。
「あ、ちょうど今お客さん入ったみたいだよ。早速初仕事、頑張ろうね~」
「えっ! もう!?」
ぎょっとしてうろたえる亘とは対照的に「おお、早速~」と、どこか望は楽しそうだ。
ここで望とは離れ離れだ。それぞれ割り当てられた個室に移動し、貸してもらった服に着替える。特別変わった服ではない。普通のTシャツに、高校のときのジャージみたいなハーフパンツだ。制服はないが、膝上のハーフパンツもしくはスカートが必須らしい。
準備できたら部屋の内線で受付にコールしてね、と言われていた。
亘は着替えを終え、震える手で内線の受話器を取る。すぐにコールは受付の阿部に繋がった。
「あ、えっと……シンです。準備できました」
「は~い、シンくんCコース、オプション③番お願いしま~す」
震えていたのは手だけではない。
客を迎えるために個室を出たが一歩一歩を踏み出すたびに膝がガクガク笑う。
正直言って、コワイ。
そんな感情が露骨に表情に出ていたのだろう、阿部がくすっと笑って「大丈夫だよシンくん。このお客さんは、いつも来てくれる常連さんで、優しくしてくれるはずだから。分かんないことがあったらお客さんに聞いても大丈夫だからね」と励まされた。
そうして体験開始から、わけもわからないうちにどんどんと客を宛がわれ、わけもわからないうちにそれをこなしていく。
はじめは恐々握った他人の勃起ペニスも、だんだんと感覚が麻痺してきたのか、体験が終わる頃には何の躊躇もなく、ローションに濡れたそれを扱きたて、吐き出した精子を手で受け止めていた。
体験を終えたあとは私服に着替え、はじめに面接をした控室に戻ると、先に望もいた。亘と同じく、ぐったりとしている。
「望、大丈夫か?」
「ん~、まあ何とか。未知の世界過ぎてやばい……」
控室のソファに沈むふたりに、ひょっこり顔を出した阿部がにこやかに「お疲れさま!」と声を掛けた。
「はい、これ今日のお給料。中身ちゃんと確認して、金額が合ってたら、ここ、サインと拇印ちょーだい」
「サインって、本名ですか?」
「ううん、お店の名前。一番下に、サインするところがあるから」
それぞれに茶封筒と、明細と思しき半ぺらの紙を渡される。
明細にはこなしたコースの種類と数、オプション、指名数が明記されており、合計金額が記されている。
金額を見て驚いた。
――すごい、こんなにもらえるのか……。
キャストに入ってくる金額は、客が店に払うコース料金の半分。
Aコースなら三千円、Cコースなら五千円。オプションと指名料は丸々キャストに入ってくる。ただし④のコスプレのみ、衣装のクリーニング代などがあるため、バックは五〇〇円。タオルのクリーニングやローション等の消耗品代が雑費として毎回二千円引かれるが、それでも手元に残るお金はこの数時間で得られたとは思えない金額だ。
亘は「シン」と殴り書きのような字でサインをした。
控室のテーブルの上には朱肉が用意されている。「どの指でもいいよ」と言われ、適当に赤いインクを染みこませた人差し指を、サインの横に押しつけた。
「どうだった? ふたりとも。お客さんからも好評だったし、今日だけじゃなくってこのまま続けてくれると嬉しいんだけど」
にこやかな阿部の言葉に、亘は望と顔を見合わせた。
同じくもらった金額に驚いていたらしい望は、目をキラキラさせている。
「続けます」
即答した望に倣って、亘は「俺も」と続けた。
この日エルミタージュのホームページに、新たなキャストの名前が加わった。
++++
【CAST PROFILE】
名前………アオイ
年齢………19歳
身長………170㎝
体重………ヒ・ミ・ツ!
血液型……B型
性感帯……ちくび
得意なプレイ…いろいろ教えてください♪♪
店長からのコメント…大型新人入りました! 切れ長の目がクールビューティ! でも意外に甘えん坊さん? みんな、この子猫ちゃんに振り回されたくなること間違いなし!
++++
名前………シン
年齢………19歳
身長………170㎝
体重………ヒ・ミ・ツ!
血液型……O型
性感帯……ヒ・ミ・ツ!
得意なプレイ…まだよくわからないので、優しく教えてください。
店長からのコメント…フレッシュなシャイボーイ入りました! くりっとした印象的な目の、アイドル顔負けのキュート☆ボーイ! だけどまだ擦れていない初々しさの残るシンくんをあなた色に染めてください☆
++++
後藤田が呼ぶと、四十格好の人の好さそうな男がカーテンの向こうから顔を出した。
「彼、阿部さん。頼りになるおじさんだから安心してね」
阿部は「よろしくおねがいします」とにこりと微笑んで、カーテンの向こうにすぐに引っ込んだ。
「ふたりとも、お店で名乗る名前はどうする? 本名でもいいけど」
「本名はちょっと……社長が考えてください、ってのはダメですか」
「自分がこれから使う名前なんだから、愛着持てる名前、考えなよ」
にこにことなぜか嬉しそうな社長に突き放され、望はうーんと唸った。
「亘、どうする?」
「……何でもいいよ、もう」
「ん~……あ、じゃあ亘は〝新〟で、俺は〝葵〟とか? どう?」
それぞれの苗字から一文字取ったそれに、望は我ながらいい案だと満足そうに笑顔を見せる。「いい名前だね、それ」と社長も頷く。
「あ、ちょうど今お客さん入ったみたいだよ。早速初仕事、頑張ろうね~」
「えっ! もう!?」
ぎょっとしてうろたえる亘とは対照的に「おお、早速~」と、どこか望は楽しそうだ。
ここで望とは離れ離れだ。それぞれ割り当てられた個室に移動し、貸してもらった服に着替える。特別変わった服ではない。普通のTシャツに、高校のときのジャージみたいなハーフパンツだ。制服はないが、膝上のハーフパンツもしくはスカートが必須らしい。
準備できたら部屋の内線で受付にコールしてね、と言われていた。
亘は着替えを終え、震える手で内線の受話器を取る。すぐにコールは受付の阿部に繋がった。
「あ、えっと……シンです。準備できました」
「は~い、シンくんCコース、オプション③番お願いしま~す」
震えていたのは手だけではない。
客を迎えるために個室を出たが一歩一歩を踏み出すたびに膝がガクガク笑う。
正直言って、コワイ。
そんな感情が露骨に表情に出ていたのだろう、阿部がくすっと笑って「大丈夫だよシンくん。このお客さんは、いつも来てくれる常連さんで、優しくしてくれるはずだから。分かんないことがあったらお客さんに聞いても大丈夫だからね」と励まされた。
そうして体験開始から、わけもわからないうちにどんどんと客を宛がわれ、わけもわからないうちにそれをこなしていく。
はじめは恐々握った他人の勃起ペニスも、だんだんと感覚が麻痺してきたのか、体験が終わる頃には何の躊躇もなく、ローションに濡れたそれを扱きたて、吐き出した精子を手で受け止めていた。
体験を終えたあとは私服に着替え、はじめに面接をした控室に戻ると、先に望もいた。亘と同じく、ぐったりとしている。
「望、大丈夫か?」
「ん~、まあ何とか。未知の世界過ぎてやばい……」
控室のソファに沈むふたりに、ひょっこり顔を出した阿部がにこやかに「お疲れさま!」と声を掛けた。
「はい、これ今日のお給料。中身ちゃんと確認して、金額が合ってたら、ここ、サインと拇印ちょーだい」
「サインって、本名ですか?」
「ううん、お店の名前。一番下に、サインするところがあるから」
それぞれに茶封筒と、明細と思しき半ぺらの紙を渡される。
明細にはこなしたコースの種類と数、オプション、指名数が明記されており、合計金額が記されている。
金額を見て驚いた。
――すごい、こんなにもらえるのか……。
キャストに入ってくる金額は、客が店に払うコース料金の半分。
Aコースなら三千円、Cコースなら五千円。オプションと指名料は丸々キャストに入ってくる。ただし④のコスプレのみ、衣装のクリーニング代などがあるため、バックは五〇〇円。タオルのクリーニングやローション等の消耗品代が雑費として毎回二千円引かれるが、それでも手元に残るお金はこの数時間で得られたとは思えない金額だ。
亘は「シン」と殴り書きのような字でサインをした。
控室のテーブルの上には朱肉が用意されている。「どの指でもいいよ」と言われ、適当に赤いインクを染みこませた人差し指を、サインの横に押しつけた。
「どうだった? ふたりとも。お客さんからも好評だったし、今日だけじゃなくってこのまま続けてくれると嬉しいんだけど」
にこやかな阿部の言葉に、亘は望と顔を見合わせた。
同じくもらった金額に驚いていたらしい望は、目をキラキラさせている。
「続けます」
即答した望に倣って、亘は「俺も」と続けた。
この日エルミタージュのホームページに、新たなキャストの名前が加わった。
++++
【CAST PROFILE】
名前………アオイ
年齢………19歳
身長………170㎝
体重………ヒ・ミ・ツ!
血液型……B型
性感帯……ちくび
得意なプレイ…いろいろ教えてください♪♪
店長からのコメント…大型新人入りました! 切れ長の目がクールビューティ! でも意外に甘えん坊さん? みんな、この子猫ちゃんに振り回されたくなること間違いなし!
++++
名前………シン
年齢………19歳
身長………170㎝
体重………ヒ・ミ・ツ!
血液型……O型
性感帯……ヒ・ミ・ツ!
得意なプレイ…まだよくわからないので、優しく教えてください。
店長からのコメント…フレッシュなシャイボーイ入りました! くりっとした印象的な目の、アイドル顔負けのキュート☆ボーイ! だけどまだ擦れていない初々しさの残るシンくんをあなた色に染めてください☆
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