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筧 義松
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しばらくアオイの笑いは収まらず、胸に自身の精液を散らしたまま、義松が居た堪れなさ過ぎてモジモジしはじめた頃だ。笑い過ぎたアオイが息を切らしながら言った。
「あんた! 面白いな!」
先程までと比べ、随分と砕けた口調だ。
まだ義松の腕の中にいるアオイは、やや上目遣いになって、その切れ長の目に涙を浮かべている。
……笑い過ぎだろ。
その色気に息を呑みそうになったことには気づかないふりをして、ただただ馬鹿にされているらしいことに、義松は憮然とした表情を作ってみせる。
しかしアオイは少しも気にしちゃいないようだ。「あんたさぁ」と、砕けたというよりは最早馴れ馴れしい。無礼だとすら感じる口調で、やはり無礼なことを口にする。
「そんなナリしてんのに粗チンで、早漏って! 目もあてらんないね」
そして義松の腕から抜け出し、体を起こしサイドテーブルに手を伸ばした。
慣れた手つきでティッシュを取ると、義松の精子で汚れてしまった自身の手を拭った。
サイドテーブルにはティッシュの他に、ウエットティッシュ、それから義松には不要だったローションのボトルが置いてある。
「あんた、その見た目だろ? 体格もよくてイケメンで。その体に見合った立派なモノ、期待しちゃうよね~」
それなのに包茎、短小の粗チンな上に、早漏とは……と嘆く口調が腹立たしい……を通り越して悲しくなってくる。
アオイは自身の手を拭ったティッシュを丸めゴミ箱に放った。新しいティッシュを取ると、次は射精後更に慎ましやかなサイズになってしまった精子まみれの義松のペニスを拭き始める。
「自分で拭きます」
と義松はアオイの手からティッシュを奪った。
くたんと小さくなったペニスの鈴口から、とろんとろんと尿道に残っていた精子が零れてくる。居た堪れなさを誤魔化すように、ぐいぐいとやや乱暴にティッシュを押し付けそれを拭った。
――何やってんだか、俺。
先輩の言う通り、たしかにキャストのレベルは高い。
男の手に扱かれたとは思えないほど気持ちよかったし興奮もした。
だが、先輩の言うような癒しなんてどこにもない。むしろ古傷を抉られただけだ。
「ゲイじゃないのにこの店に来たってことは、あんたなんかトラウマでもあんの?」
ギクリとして手が止まった義松に、今度はウエットティッシュを渡し、かわりに使用済みティッシュを無言で奪っていった。当たり前だが、手馴れている。
亀頭に張り付いてしまったティッシュのかけらを、ウエットティッシュでこすり落としながら義松は白状した。
「そうですよ……」
「へー、何があったの?」
「別に……大した話じゃ……」
「でも、あんたはトラウマになるくらい傷付いたんだろ? 大した話じゃないわけないじゃん」
――その傷を更に容赦なくえぐった張本人が何を言う。
そう突っぱねてやりたい気もしたが、基本的に気の優しい義松はいささか腑に落ちないながらもとつとつと話しはじめた。
「社会人になったばかりの頃……先輩に連れられて行ったんです。ここみたいな店舗型の風俗で……」
「うんうん」と、アオイは大袈裟なくらいに相槌を打った。
完全に面白がっているようだった。
このまま素直に話すのは癪だが、ここまできたらむしろ最後までちゃんと聞いてもらいた。そして聞いたからには慰めて、励ましてもらいたいのが正直なところだ。
「あんた! 面白いな!」
先程までと比べ、随分と砕けた口調だ。
まだ義松の腕の中にいるアオイは、やや上目遣いになって、その切れ長の目に涙を浮かべている。
……笑い過ぎだろ。
その色気に息を呑みそうになったことには気づかないふりをして、ただただ馬鹿にされているらしいことに、義松は憮然とした表情を作ってみせる。
しかしアオイは少しも気にしちゃいないようだ。「あんたさぁ」と、砕けたというよりは最早馴れ馴れしい。無礼だとすら感じる口調で、やはり無礼なことを口にする。
「そんなナリしてんのに粗チンで、早漏って! 目もあてらんないね」
そして義松の腕から抜け出し、体を起こしサイドテーブルに手を伸ばした。
慣れた手つきでティッシュを取ると、義松の精子で汚れてしまった自身の手を拭った。
サイドテーブルにはティッシュの他に、ウエットティッシュ、それから義松には不要だったローションのボトルが置いてある。
「あんた、その見た目だろ? 体格もよくてイケメンで。その体に見合った立派なモノ、期待しちゃうよね~」
それなのに包茎、短小の粗チンな上に、早漏とは……と嘆く口調が腹立たしい……を通り越して悲しくなってくる。
アオイは自身の手を拭ったティッシュを丸めゴミ箱に放った。新しいティッシュを取ると、次は射精後更に慎ましやかなサイズになってしまった精子まみれの義松のペニスを拭き始める。
「自分で拭きます」
と義松はアオイの手からティッシュを奪った。
くたんと小さくなったペニスの鈴口から、とろんとろんと尿道に残っていた精子が零れてくる。居た堪れなさを誤魔化すように、ぐいぐいとやや乱暴にティッシュを押し付けそれを拭った。
――何やってんだか、俺。
先輩の言う通り、たしかにキャストのレベルは高い。
男の手に扱かれたとは思えないほど気持ちよかったし興奮もした。
だが、先輩の言うような癒しなんてどこにもない。むしろ古傷を抉られただけだ。
「ゲイじゃないのにこの店に来たってことは、あんたなんかトラウマでもあんの?」
ギクリとして手が止まった義松に、今度はウエットティッシュを渡し、かわりに使用済みティッシュを無言で奪っていった。当たり前だが、手馴れている。
亀頭に張り付いてしまったティッシュのかけらを、ウエットティッシュでこすり落としながら義松は白状した。
「そうですよ……」
「へー、何があったの?」
「別に……大した話じゃ……」
「でも、あんたはトラウマになるくらい傷付いたんだろ? 大した話じゃないわけないじゃん」
――その傷を更に容赦なくえぐった張本人が何を言う。
そう突っぱねてやりたい気もしたが、基本的に気の優しい義松はいささか腑に落ちないながらもとつとつと話しはじめた。
「社会人になったばかりの頃……先輩に連れられて行ったんです。ここみたいな店舗型の風俗で……」
「うんうん」と、アオイは大袈裟なくらいに相槌を打った。
完全に面白がっているようだった。
このまま素直に話すのは癪だが、ここまできたらむしろ最後までちゃんと聞いてもらいた。そして聞いたからには慰めて、励ましてもらいたいのが正直なところだ。
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